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 私の「国際バカロレア(IB)教育との出会い」についての投稿をさせていただきます。ここでは、私自身の日本の学校教育に対する思いの変化について書かせていただきました。

自分が親になって今の学校教育を疑う視点を持った

 私は日本の公立高等学校で、社会科教諭として8年間働いていました。

 日頃の授業や、入試対策としての面接・小論文対策、中学生の体験授業などをする中で、今の子ども達に足りないものがあると感じていました。
 それは、「日常的に思考する習慣」です。

 授業では教科書に書いてあることが説明され、定期テストでは学んだ内容を正確に理解しているかを確認されるという「知識偏重型の問題」が多くを占めています。最近では「思考力を問う形式の問題」も取り入れる傾向も出てきているようですが、それでもまだ子どもたちは「答えが1つに決まっている問題」に取り組む方が多いと思います。そうすると、いつの間にか自分の視点ではなく、授業をする先生の考えや入試問題の形式に合わせて勉強する癖がついてしまうのです。

 私が教育について本気で見つめ直すようになったのは、娘が生まれ自分が父親になった時でした。それまでは、教員の働き方や評価のあり方など学校教育のあり方について、「学校の先生の仕事というのはそういうものだ」と思い疑問すら抱いていませんでした。

 私は人生で初めて「決められた枠組みの中で最大限頑張る」ことから、「設定された枠組みそのものを疑ってみる」ことの大切さに気づきました。

 しかし、枠組みを疑うということはそれに関する様々な情報をつかんでいないとできません。私は娘が生まれた時に、我が子に対して「将来は自分の力で社会の中で生きていき、みんなと共に幸せに暮らせるようになってほしい」と考えていました。それがきっかけとなり、学校教育を生徒の目線だけで考えるのではなく、親として、自分の子どものこととして考え直すために、子育てや教育に関する本をたくさん読むようになりました。それまでの私は、教科指導に関することや部活動の指導に関する本ぐらいしか読んでいませんでした。

 多くの本を読んでいく中で、「子育て」に関して共通していたことは以下になります。

・子どもを忍耐強く見守る
・子どもに選択させ、結果を受け止めさせる
・子どもが疑問に思っていることや話したいと思っていることを、周囲の大人が一生懸命聞いて一緒に考える
・子どもに愛情をたっぷり伝える

 子どもはやがて大人になり、自分の力で生きていかなければなりません。そのためには、自分で生きていくために必要な準備を家庭や学校で行う必要があります。

 そう思った時に、ふと自分がこれまでに受けてきた教育や今自分が働いている学校の教育がそれを実行できているのかと疑問を持ったのです。

今の日本教育に求められている「探究ベース」の学び

 私が読んできた本の中に、探究や概念の学びをベースとする「国際バカロレア(IB)」について書かれていたのを見て、興味を持ちました。「探究」や「概念」の学びについて、IBの考えやカリキュラムは参考になります。

 それからどんなプログラムか知りたいと思ったので、IBに関することを調べてみたり、3日間のIBワークショップに参加し勉強することにしました。

 私が参加したのは、DP(16〜19歳が教える対象)の言語A(日本で言えば国語)のワークショップでした。高校現場では世界史や政治経済など社会科を教えていた私ですが、IBについて学ぶにつれ、歴史では「文化史」とされて極端にまとめられた文学作品や非文学作品などを通して人間のドラマに触れながら、子どもたちの視野を広げていくことに大きな魅力を感じるようになりました。IBでは、日本の教科書のように作品の一部の抜粋を学ぶのではなく、1冊あるいは作品全体を読みその上で授業での議論をしたり、作品の解釈についてそれぞれがまとめていくというアウトプットを中心とする形式で学んでいきます。

 私が「言語の学習」に興味を持ったのも、読書習慣を持つことができていない高校生が多いことに不安を感じていたからです。自分のことや将来について不安に思う中、読書を通していろんな人と出会い、多くの価値観に触れることが子どもたちの成長につながります。

 全国学校図書館協議会が行った2019年の調査によれば、高校生(3479人が対象)の読書量は月に1.4冊、1冊も読まない高校生が55.3%となっています。以前勤めていた学校でも、多くの生徒が本を読みたいけれど部活動や課題に追われて読書をすることが難しいと感じていました。せめて授業の中で作品を深く味わい、いろんな人の体験を自分の経験に上乗せしてほしいと思いました。

新しい時代に求められる力とは?

国立教育政策研究所が2013年に提言した「21世紀型能力」とは、以下になります。

思考力(中核):問題解決・発見力・想像力、論理的・批判的思考力、メタ認知・適応的学習能力

基礎力:言語スキル・数量スキル・情報スキル

実践力:自律的活動力、人間関係形成力、社会参画力・持続可能な未来への責任

 これらが、日本の学習指導要領の理念である「生きる力」を構成するとしています。これらの能力を育くむためには、IBで行われている探究ベースの教育が大いに参考になると思いました。

 次回は「IB」との出会いによって、私の授業がどのように変化したのかについてまとめたいと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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