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久しぶりの高3進路面談〜あなたは社会でどう生きたいのか?【278】

 日本での3月は、これまで関わらせてきてもらった生徒たちとの別れの時期です。また、これから進路実現に向かって突き進む新しい生徒との出会いでもあります。

 オンライン家庭教師の仕事の一環として、新しく高校3年生になる生徒の進路面談をさせていただきました。最近は人物評価が中心の入試も増え、これまで学力試験を中心に歩んできたために、人物評価の入試でどんな準備をすれば良いのか悩んでいる生徒も多いようです。

 そこで今回は、先日行わせていただいた新高3の生徒と面談をして感じたことを書きます。


書類だけの選考は簡単なのか?

 日本で大学進学を考えた場合、大学の数だけで言えば、選択肢はかなりたくさんあります。そのため、自分が学びたいことや大学に通う条件などを総合してそこから選ぶことになりますが、それでも絞りきれないのが現状だと思います。さらに入試自体も多様化し、学力試験がない方式の入試や大学も増えてきました。

 面談をしていた時に、その生徒は「書類や小論文とかの簡単な審査だけで合否が決まるんでしょうか」と言っていました。私が担当している生徒の中には、同じように学力試験よりも書類選考や面接・小論文の方が簡単だと思っている生徒や保護者もいるようです。

 学力試験とは違い、「ただ自分の思ってることを書けば良いんでしょ」と思っているだけだとそう考えてしまうかもしれません。
 ただ、実際に自分の将来のビジョンを具体的に文章に表現するというのは難しいことです。また、実際にこれからどんなことをやろうと思っているのか、今取り組んでいることなどがないと書くことはできません。日頃考えていること、実践していることがあればそれなりに伝えるべきこともありますが、学校の授業をただ受けてテストで評価されているだけの生活の中では、「これからこんなことがしたい」という思いを具体的に述べるのは難しいと思います。

 そのため、生徒には同じようなことを伝えました。簡単だと思い込んでいた、具体的に自分が社会に出てやりたいと思っていること、実現したいことやそのために自分がこれからどんなことをやろうと思っているのかを言葉にしてもらうと、その難しさを実感することができたようです。
 自分の考えていることを具体的に相手に伝わるように表現するというのは、簡単なようで難しいですよね。まさにこういった試験内容の方が、学習者の熱意や力量を測るのに向いているのではないかと感じます。

 私が実際に見ている生徒を見てみても、学校で議論が盛んな学校に通っている場合、授業そのものがディスカッションになり自分の考えをきちんと話すことができます。そして、その中で少しずつ自分の「将来のビジョン」が見えてくるものです。
 その一方で、学力試験中心で授業も一方向的な講義ばかりを受けている子は、学習自体が受け身になります。そして、自分が何をしたいのかを学校で考える機会を与えられていないため、授業の中でも自分の意見を述べることに躊躇してしまう子がたくさんいます。

どの大学のどの学部が良いのか?

 「いろんな大学や学部があって、どこに決めるべきなのか」という質問もありました。どんなことでもたくさん選択肢があると余計に悩みます。

 私がいつも伝えていることとして、まずは自分の興味のある分野(国際系、金融、ITなど)を明確にさせて、その後は自分が好まない分野を排除して、その中に残っている選択肢の中から現実的に選ぶことができる大学をピックアップします。そのあとは、残った選択肢から大学の施設やプログラム、入試の日程や試験内容に合うものを選ぶのが良いと伝えています。

 「私はこの大学のこの学部でないといけない」と言う判断はとても危険だと思います。それはかなり盲目的になっている状態で、仮に「ここが自分に最も合っているかな」と思うとしても、それ以外の選択肢を残しておいた方が良いと思います。
 なぜなら、いざ自分の思った結果にならなかった時にその結果を受け止めることができなくなるからです。そういった気持ちのまま次の進路に進んでも、そこでの新しい出会いや学ぶことを享受できなくなってしまいます。

どこに進むかではなく、進んだ先で「誰と出会い、何をするのか」が重要

 私がかつて高校教員の時に教えていた生徒が大学受験で第一志望に合格することができず、最終的に志望していなかった大学に通うことになり、志望校の再受験を考えた時期がありました。
 その当時は、自分の目標を叶えられずその呪縛から自分を解放できないまま大学生活をスタートしたのですが、話を聞いているうちに、その生徒が行っている大学でも希望する留学制度もあり、そこでも自分が求める学びは実現できることが確認できたのです。
 すると、今自分が通っている大学でできることを精一杯やるという気持ちになれたらしく、それからはその大学の部活動に入り、学業や将来の準備も前向きに取り組めるようになったそうです。
 現在、その生徒は、ドイツに留学しオランダの私の所までわざわざ会いに来てくれました。その時に、「あの時に上手くいかなかった経験があったから、むしろ今頑張ろうという気持ちが強く持てています。だから、自分ができることを精一杯やろうと思っています!」と話してくれました。
 今考えてみると、受験で志望校に行けなかったことが結果的に「失敗」だったかどうかは、その後の行動次第で変わるというのを示しているのではないでしょうか。

完璧主義や固執から解放する

 その時その時に掲げる目標は、自分の行動をコントロールするためにとても大切なものです。しかし、その目標を叶えること自体が目標になってしまい、本来自分がやりたかったことを見失ってしまっては本末転倒です。
 たとえそれが叶わなかったとしても、その途中で学んだこと、出会いは決して無駄なものではなく、次の自分の新しい行動につながるのです。そして、「あの時はダメだと思ったけど、結局その後に出会った人たちがいたから自分がいる」と思えるよう行動することも大切だと私は思います。

路線変更やマイナーチェンジは真剣に取り組んでいるからこそ起こるもの

 「一度決めた専攻が変わったり、学科やコースを変更するというのは、あっても良いんでしょうか?」保護者の方からこのような質問をいただきました。

 自分がこれだと思った方向に進んでいても違う分野に興味が出てきたり、チャレンジしたいことが新しく見えてくることもあります。それは、一生懸命に取り組んできたからこそ見えるものでもあります。ある大学では、いろんな国籍の学生が集まる大学で、そこの学生は専攻を複数持っていたり、学部を変えたりすることもあると書いてありました。

 変化が激しい時代の中では、学ぶ内容や取り組みたいことがポジティブな意味で変化するのは悪いことではありません。常に自分の中にある探究心に従って行動していく中でいろんな試行錯誤を繰り返すことは大切だと思います。転職などもポジティブな選択肢として増えつつあるこの社会の中で、一度行った選択に縛られてしまう必要はなく、その都度考えて選択していけば良いのではないでしょうか。

大学生活でどんなことを大切にしたら良いのか?

 これは経験者として語ることしかできませんでしたが、大学生活では自分の見えている世界をとにかく広げるための出会いや経験をしてほしいと思います。
 大学で出会った人が最終的にビジネスで一緒になることもあれば、他の文化の価値観に触れて新しい発見をすることもあります。とは言っても、最終的に何かの役に立てようとして行動するのではなく、ただ自分の世界を広げることを楽しんでほしいと思います。その後の人生がどうなるのかは、誰にもわからない訳ですから。

進路選択で大切なこと

 現在、私が日本の公立高校の現場から離れ、いろんな年齢・カリキュラムの子どもたちの学習をサポートしていて感じることがあります。それは常に自分と社会のつながりを感じながら、自分は社会に出てどんな自己実現をしたいかというテーマについて考え続けてほしいということです。

 それは具体的にどんな職業でどんな会社で働くかではありません。社会の中での自分の生き方というイメージが近いでしょうか。
 例えば、私の中の根本な望みは「世界中全ての人が幸せに生きる世界になってほしい」です。そのために私ができることは何かを考えます。そして、今私が持ち合わせているスキルを駆使してできることを具現化すると、今の仕事につながってきます。これからオランダでの生活が続き、その後自分がどんな判断をするのかは出会う人やその時感じることによって異なります。しかし、初めに述べた「世界中の人たちの幸せを願う」ことは変わりません。そのビジョンを叶えるために今自分ができることは何かを考え行動しています。これが私の中にある変わらない社会の中での自己実現の目標です。それを叶えるためのスモールステップの目標は、変更することはもちろんあります。そこにあるのは効率的なものでも物質的な豊かさでもありません。自分らしく生きることによる精神的な幸福を手に入れることと、他者への思いやりを忘れないための余裕を持つことです。

 面談では、自分についてあえて語ることもあります。先生だから何でも知っているとか、答えを知っているというのは大きな間違いです。たまたま、生徒よりも早く生まれて、人に何かを教える仕事に就いているけれども、私自身もチャレンジャーであり、常に学び続ける人間であることを伝えています。
 言葉は大切なコミュニケーションツールですが、自分の姿勢を見せることも大切だと思います。生徒たち自身の幸せも含め、世界が少しでも平和な方向に向かうように、一緒に学び続ける仲間を大切にしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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