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日本語教室、オンライン家庭教師の記録(2020〜)

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子どもに日本語を教える仕事をしていて、感じたこと学んだことを記録しています。
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記事一覧

最も避けなければいけない継承語における「最悪の循環」 - 子どもへの押し付けが奪う学習への興味や主体性[430]

 子どもの日本語を海外で維持する場合、多くの保護者の方がその難しさを感じていると思います。私もその一人で、オランダ現地(あるいはインター)の学校に通う子どもの日本語を維持することは本当に難しいと日々実感します。  私の日本語クラスでは、子どもの習得度に合わせて学習を進めます。その子の年齢に合う学年の内容を進めると、どうしても漢字や語彙の関係から学習を進めるのが難しくなってしまいます。 日本語を海外で継承語として学ぶ場合、日本語という言語がアルファベットを使用する言語に比べて文

私が出会った攻撃的な保護者 - 大人にも必要なコミュニケーション能力[422]

 先日、私が提供している子どもの日本語レッスンで、初めてこちらから継続をお断りするというとても残念なことがありました。  私は社会に出てから教育に関係する仕事しかしてきていないのですが、ほとんどの場合は保護者と対等な関係を築き、お互いに考えを共有しながら子どもを見守るという良好な関係を持つことができました。こういったやり取りの中では、むしろ私自身が学ぶことも多く、子どもを介して自分の世界が広がる経験ができるようなとてもありがたい出会いがいくつもありました。  その一方で子ども

海外で日本語が伸びる理由・伸びない理由は「親子の関係性」にある〜継承語教育4年の記録[421]

 日本の公立高校の社会科教諭から、2020年に継承語教育として日本語を学べる学習教室をオランダで開設し、子どもたちに日本語を教えるようになって4年が経過しました。高校教諭時代は社会科を専門科目として教えていましたが、こちらでは広い学習ニーズに応えるために、年齢や科目の幅を広げてサポートをしています。いろんな年齢、いろんな科目をサポートする中で、これまで気づくことができなかった大切なことが見えてきました。今日はそのことについてまとめておきたいと思います。  継承語として学ぶ日

高校生「小論文」講座(教育学系):「問と答の距離(大田尭『学力とは何か』)」より【395】

 私は現在、オンライン家庭教師として学習サポートをしています。高校受験と大学受験の小論文やその他「国語・数学・社会」などのレッスンもさせていただいています。今回は、最もキャリアの長い「小論文講座」で行ったレッスンについて紹介をさせていただきます。オンラインレッスンの場合、基本的には1対1でのサポートになります。 「読む」スキルと「考える」材料をしっかり準備してから 私のこれまでの指導歴や受講してくれた生徒たちからの口コミなどは以下に紹介しています。  私が小論文指導で大切

「漢字」ができなくて泣いてしまった子〜継承語の視点から〜

 今日はオンラインでスポット受講をしてくれている小学生の漢字学習の時に、あまりにも読めない漢字がたくさん出てきて泣いてしまった子について私が考えたことを記事に書きたいと思います。  日本語の外で生活していて、日本語を学ぶということは本当に大変なことではあるのには違いありません。  しかし、子どもが納得できていない状態で心が傷つくようになるまで無理やり進める必要があるのか、仮に日本語を学んでほしいのであればどういう考えを持つべきなのかについて、私が考えたことをまとめておきたいと

2023年までの日本語教室・オンライン家庭教師のクチコミのご紹介[350]

 新規お問い合わせの方は記事の一番下にあるGoogleフォームからお願いいたします(2024.07.30現在)。  2020年に大阪の公立高校を退職してから、オランダのデン・ハーグで日本語教室を開設し、その後オンライン家庭教師の仕事も始めました。  私個人的な話として、日本の学校教育から一度離れ、オランダの学校教育や社会制度について現地での生活を通して学びながら、最終的にオランダでの経験を日本の公教育に貢献できるようにしたいと思っています。  現在のところ、教室での対面レッ

フリーランスで月100レッスンに到達【341】

 2020年に学校教育を離れ約3年半、いつの間にか月100レッスンぐらいを実施させていただけるようになりました。  専門であった世界史と政治経済に加え、表現力に特化した継承語としての日本語学習、論理的思考を身につけることを重視した数学とエッセイ、現実世界の事象を捉えるための理科など、子どもたちが学ぶことを楽しみ、自主性を身につけられるようなサポートを心がけています。  子どもだけではなく、子どもの周囲の生活環境に配慮したり、保護者と情報共有を大切にするなど、2012年から

「好きじゃない科目、苦手科目を勉強するのは意味があるの?」と聞かれて【279】

 国際バカロレア(IB)のMYPで学んでいる生徒の日本語サポートで、中学理科の「電気と抵抗」の単元の説明をしていた時です。  その生徒はいつも学ぶことに意欲的で、どんな科目も手を抜かずに取り組んでいます。それでも、日頃勉強していて感じることがあったそうです。それは、 「私、これまで化学変化とか今やってる電気の勉強して思ったんですけど、こういうのに全く興味が持てないんです。自分はきっと将来この分野の仕事はしないだろうなと思うんですけど、それでもこれを勉強しても意味があるんで

久しぶりの高3進路面談〜あなたは社会でどう生きたいのか?【278】

 日本での3月は、これまで関わらせてきてもらった生徒たちとの別れの時期です。また、これから進路実現に向かって突き進む新しい生徒との出会いでもあります。  オンライン家庭教師の仕事の一環として、新しく高校3年生になる生徒の進路面談をさせていただきました。最近は人物評価が中心の入試も増え、これまで学力試験を中心に歩んできたために、人物評価の入試でどんな準備をすれば良いのか悩んでいる生徒も多いようです。  そこで今回は、先日行わせていただいた新高3の生徒と面談をして感じたことを

歴史から何を学ぶのか?〜社会人向けレッスン「世界史講座」で気づいたこと【179】

 私はオンライン家庭教師として、日本を含むいろんな国の子どもたちや社会人の学習サポートをしております。その中でも、講座開設のご要望をいただき、社会人が学ぶ用に設定した「世界史」の授業も行っております。今日は、試験を目的としない世界史の講座の準備や実際の授業の中で感じた「歴史を学ぶ大切さ」についてまとめておきたいと思います。  現在受講していただいている方は、社会に出てから海外などに行ったりすることがある中で、世の中の仕組みに無知であることに気づかれたそうです。そして、世界の

受験生が試験直前にやるべきこととは?【178】

 オンライン家庭教師の仕事を始めてから約半年が経ちました。これまでに、小学生から高校生までの幅広い年齢の子どもたちのあらゆる科目のサポートをさせていただいております。  私は社会や国語といった科目を教える他にも、学習計画の相談などもお受けしております。  最近は、大学入学共通テストが迫っていることもあり、高校生から試験の直前期をどのように過ごせば良いのかを尋ねられることが何度かありました。その時に私が生徒に伝えていたことをこちらに記録しておきたいと思います。  試験の直前

オンライン家庭教師としての自己紹介【177】

 昨年(2021年)の夏からスタートしたオンライン家庭教師としての自己紹介をさせていただきます。私は、オランダのデン・ハーグにあるEduble日本語教室での日本語学習サポートに加えて、オンラインでの家庭教師もさせていただいております。サポートの対象学年や科目については、以下をご覧ください。 現在担当している学年・科目◯小学生  4年生:国語(日本語学習としての補助)  5年生:算数、社会(中学受験対策)  6年生:国語、社会(中学受験対策) ◯中学生  2年生:社会(

大学受験 人物重視の入試に備えた「自己分析」の方法をご紹介【167】

 大学受験に10年以上関わってきた経験を活かした情報発信をしております。これまで複数の記事に分けて、大学入試「総合型選抜」に関する情報をまとめてきました。この記事では、最後に最も重要な「自己分析」に関する内容をまとめておきたいと思います。今回のポイントは「時間軸に沿った自己分析」です。 簡単なようで意外と難しかった「自己分析」試行錯誤だった私の自己分析  私が志望理由や面接・小論文を経験したのは、大学受験の時と教員採用試験の時でした。高校生の時は受験では使いませんでしたが

大学受験「総合型選抜」とは?〜人物重視の入試を受けるポイントとは〜(準備と対策)【166】

 10年以上の学習塾や公立高校教諭の経験を元に、大学受験に関する情報を保護者、その他教育関係の方向けに情報発信させていただいています。そして、大学入試「総合型選抜」に関する基本情報を、これまでの記事でお伝えしてきました。この記事からは、高校生の各学年でどのような準備を進めれば良いのかについてまとめさせていただきます。 高校3年生で準備すること【STEP1「専攻」の決定】  大学での学びを明確にするためには、まず初めに専攻をどれにするのかを決定しなければなりません。専攻が決