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雨穴「変な絵」一言感想文

「変な家」で知られる雨穴(うけつ)さんの2022年の作品。さまざまな「変な絵」を手掛かりに、物語が進んでいく。ホラー要素もあるので、ゾッとする表現もあるが、全体的には謎解き要素が強い。ストーリー展開にややホラー要素があるものの、それほどおどろおどろしいわけでもなく、むしろ謎解き部分を抜き出して楽しむこともできる。確かに映像化したら怖そうではあるけれども、全体的には明るい展開もあり、読後感もわるくない叙述トリック的な要素もあるので、マンガや映像よりも、まずは小説で楽しんだ方がいいと思う。トリックが現実的かどうかはともかく、そのトリックの背景に人の心の動きを重ねることで、説得力を出している。ある程度章立てがされているので、少しずつ読み進めるのにも調度いい。(僕は一気に読んだ。)心理学者の講義シーンから始まる、明らかに皮肉めいた描写がよく効いていて、その後のさまざまな「変な絵」とともに、絵のもつさまざまな背景に想いを馳せることができる。もちろん、中井久夫の風景構成法のような、絵画をもとにした心理療法とは異なるものの、一般に誤解されるような絵画分析として表現されているのはおもしろい。絵を理解するということは、そう簡単なものではないという、風刺がよく効いている。



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