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弥勒の月【読書のきろく】

背後から緊張感が迫ってくる、大人の時代劇

あさのあつこさんの時代小説。はじめて読んだのは、今年の3月。公民館に新たに仲間入りした本として紹介されていたのを見て、借りてきました。

この記事へのコメントで教えてもらった作品が、『弥勒の月』。それから、いつか読みたい本としてずっと心にあったところで、またタイトルに出会うことになります。児玉清さんの、『ひたすら面白い小説が読みたくて』。

42個の解説の中で、先頭に取り上げられている作品が『弥勒の月』なのです。

世に面白き時代小説は数々あるが、滅茶面白く、なお且つ読む者の肺腑を鋭い刃物で抉るかのごとく、人間とは、男とは、女とは、人生とは、そして生きるとはなんたるかをズシンと胸に響く言葉で教えてくれる本は、そうざらにない。

>『ひたすら面白い小説が読みたくて』|児玉清
p.10 あさのあつこ『弥勒の月』より

こうやって、いかに面白いかが語られている。

『天を灼く』の記事へのコメントでは、

何か情景に無駄がなくて、清涼感のある読み終わり

と教えてもらいました。
2人から勧められたら、読まずにはいられませんよね。

作品の魅力は、もうおふたりに紹介してもらった気がします。あえて僕の感想も書き足すとしたら、大人の時代劇を観せてもらった感じ、です。

まだ幼い頃は、時代劇は怖いものだと思っていました。土曜日に祖父母の家に泊まりに行くと、だいたい夜の9時から、じいちゃんが時代劇を見る時間が始まります。子どもたちが寝る時間もその頃。さて、寝ようかとするときに、オープニング曲が流れ、暗い路地裏で誰かが殺されるようなシーンから番組が始まる。その暗くて背後から何者かが迫ってくる感じが怖かった。

『弥勒の月』は、その雰囲気を思い出させてくれました。
さすがに僕ももう大人なので、怖くなってパタリと本を閉じるなんてことはしません。思わず息をひそめてしまう緊張感を味わいながら、物語の行く末を見守ります。
登場人物それぞれが、人に語りたくない過去を背負い、「今」を生きようとする。平穏を願うのに、周りがそれを許してくれない。
その背景と事件を丁寧に重ねて、読み手を抜け出せない世界に誘い込んでくれました。

男と男が対峙する緊迫のシーンも、見どころです。

調べてみると、シリーズものになっています。今回の『弥勒の月』が出発地点。その後の展開も気になるので、読まないといけませんね。

読書のきろく 2021年64冊目
『弥勒の月』
#あさのあつこ
#光文社時代小説文庫

#読書のきろく2021

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