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2020年に読んで心に残っている本5冊【読書のきろく】

2020年も大晦日を迎えました。1年前のこの日には、誰も予想していなかった出来事もあり、日常生活は大きく変わりましたね。不安も拭いきれないのが正直な気持ちです。そんな時に、心を落ち着けたり、奥に眠っていた感情を思い出させてくれるのが、本でした。

今年は、このnoteにも読んだ本の記録を書き綴ってみました。投稿を見たことを伝えてくれる人もいて、本を通じたやり取りも楽しかったです。

手に取る本は、その時その時の、心の状態を教えてくれる気がしています。今年は、半分以上が小説でした。歴史モノ、ミステリー、ファンタジー、青春で胸が熱くなるもの、日常の何気ない風景を描いた作品、などなど。

「小説を書きたい」という気持ちを表に出したこと、そして、ほんの少しだけ動き出したことは、僕にとっては大きな節目となりそうです。

新しい年を迎える前に、今年の振り返り。今回は小説に特化して、心に残っている本をピックアップしてみます。
選んだ観点は、読みながら湧き上がってきた感情。「どんな気持ちになったか」を思い出しながら選んだ、2020年のトップ5はこちらです。

【1】なずな|日常の繊細さに感動

中年男性と生まれて間もない赤ちゃんの物語。だけど、イクメン日記みたいなものではありません。まず、この二人は、親子ではないのです。弟夫婦が事故と病気で二人とも入院してしまい、主人公が姪っ子を預かることになりました。独身で、子育て経験なし。
それでも、赤ちゃんは日々生きています。
地方の新聞記者の仕事を在宅勤務にしてもらい、職場のスタッフ、バーのママ、小児科医院の先生家族、取材先で出会う地域の人たちに助けられながら、一日一日を大切に繰り返す。

赤ちゃんのしぐさ、人の表情や心の動き、訪れる場所の雰囲気など、ひとつひとつがとても丁寧に描かれていて、自分がその場の空気のひとつぶになったような感覚を味わえます。
人のあたたかさと、繊細な描写に感動した作品。今年の1冊目です。

【2】復活の日|あふれる緊張感にドキドキ

作品が出版されたのは50年以上前の1964年。だけど、今年の何かを予言していたのでは?と感じる作品です。
確実に人を死に至らしめる細菌兵器によって、世界中の人類が滅亡してしまう物語。生き残ったのは、たまたま南極にいたごくわずかな人だけ。症状が出始めた時は、「ただのかぜ」とか「たかがインフルエンザ」という扱いで、これは普通じゃないと気づいたときにはもう手遅れ。あっという間に全世界に広がり、人間も動物も次々に死んでいきます。一般人も、政治家も、軍人も、死の前にみな平等。それぞれの最期の瞬間に、胸が締め付けられていきました。

読んだタイミングは、今年の7月。コロナ関係の速報ニュースが飛び込んでくるのとリンクして、異様な緊張感を感じました。
SFだから、起きてほしくない、でも、起きる可能性がある悲惨な出来事を疑似体験できます。息が詰まりそうな緊張感を味わった作品が、今年の2冊目。

【3】風が強く吹いている|熱い気持ちを思い出す

古いアパートで出会った個性豊かな10人の大学生が、箱根駅伝を目指す物語。個人的に、中学時代から高校1年まで陸上部で長距離を走っていたので、駅伝は思い入れのあるスポーツのひとつです。
登場するみんなが、走るのが得意なわけではありません。まともに運動したことのない、マンガおたくなメンバーもいます。最初は付き合い程度だったのが、一緒に練習を重ねるうちに記録が伸び、走りの魅力に取りつかれてきます。走ることは、多くの人に可能性のあるスポーツと言えそうです。
そして、実力がつく喜びと同時に、完全に一人の世界に没頭できるのも、走りの魅力のひとつ。一人ひとりが、心の内側に向き合って走る姿に、胸が熱くなりました。バスで移動しながらも読んで、涙がこぼれそうになって本を閉じることが何度かありました。

2021年は無観客開催が決まった箱根駅伝を応援する意味も込めて、今年の3冊目に選んでみました。

【4】いっしん虎徹|一途な姿勢がカッコイイ

江戸時代が舞台の歴史モノ。
主人公は、鎧や兜を作る甲冑師から、刀を作る刀鍛冶に転身した長曽祢興里(ながそね おきさと)。のちの虎徹(こてつ)。数百年後の現代でも、名刀「虎徹」として名を遺す刀を作り上げた人物です。
著者は、山本兼一さん。去年読んでおもしろかった本に選んだ『火天の城』もそうでしたが、職人の技の繊細さと豪快さを描くのは本当に見事です。圧倒されて、目を離せなくなります。五感をフル稼働させて、火と鉄を操りながら刀を生み出す刀鍛冶。鉄を溶かす火の動きから、刀を鍛える工程のひとつひとつが、丁寧に力強く描かれていて、現場の空気感を味わえました。
決して妥協せず、納得いくまで一途に仕事に向き合う主人公が、とてもカッコ良かった作品。今年の4冊目です。

【5】阪急電車|背伸びせずに楽しめる

舞台は、阪急電車の『阪急今津線』。その電車に乗り合わせた人たちのドラマが描かれた作品です。
どこか遠い世界のおとぎ話ではなく、実際にある、ごくごく日常の電車の中。一人ひとりに物語があって、出会いときっかけでつながっています。
思わず笑ってしまったり、胸の奥にじーんと響いたり、日々の振る舞いをちょっと見直してみたり。背伸びをせずに楽しめました。
この本に出会えたのは、noteでつながった人の記事がきっかけ。電車で乗り合わせるのと同じように、同じタイミングでSNSの世界を歩いている。
そのきっかけをどう捕まえて、何を感じ、どう表現するのか。そんなおもしろさも感じさせてくれた作品。今年の5冊目に選びました。

■さいごに

今日も最後まで読んでくださり、そして、今年もお付き合いくださって、ありがとうございました。
小説の楽しみのひとつは、その世界に入り込んで、心の揺れ動きを感じられることにあると思います。心が動くから、現実のことも改めて小説の世界から見つめてみて、何かを感じることができます。

たくさん読むと、また新たな情報が飛び込んできて、読みたい本が増えていく。また来年も、いろんな作品に出会っていきたいです。

そしていつか、僕も小説を世に出して、誰かに選んでもらえたら・・・

そんな夢を持って、2021年を迎えようとしています。


新しい一年も、どうぞよろしくお願いします。コロナに負けず、充実した一年にしましょう!
それでは、よいお年をお迎えください。

※photo by:nanairo125さん / 写真AC

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