思い出の勝ち
「今日で夏休みも終わりかぁ。宿題も全部終わったし、最後の夜は、みんなで好きなデザートを食べようか。何がいい?」
父が言った。
翔太が選んだのは、梨。弟の悠斗は、チョコケーキ。
「よし分かった、帰りに買ってくるから。」
翔太は、梨が大好き。「僕の果物ランキング1位は梨です」と、夏休み最大の宿題である作文にも書いた。8月のはじめに行った梨狩りの思い出を題材にして、梨畑の様子、おいしい実を選ぶコツ、重量を測って料金計算したときの驚きが綴られている。
仕事帰りにスーパーに立ち寄った父は、売り場で一番高い梨を選んだ。お買い得品と比べると3倍の値段で、チョコケーキよりも高い。さぞかしおいしかろうと想像する顔は、レジに並ぶ大人たちの中で一番輝いていたに違いない。
夕食を終え、母が梨をむいてくれた。白く輝く実が、口の中にじゅわっと広がるものを誘う。
「いただきまーす!」
勢いよく、翔太がかぶりつく。
「どうだ、うまいか?」
待ちきれない父が声をかける。
「う、うん。おいしいけど・・・。」
いまいちパッとしない答えに、父は首をかしげた。そしてひとくち。
「あ、確かに。おいしいけど、だな。」
梨狩りで食べた梨の方が、もっと甘くておいしかった。
◇
田丸雅智さんの、「物語の発想法を学ぶ」講座。今日が3日目です。
先週の講座で出た宿題を、講座が始まるタイミングで投稿しました。
テーマが「夏休み」で、500字程度のショートショート。
我が家の一コマをベースに書いています。男の子たちの名前は、別の名をつけました。
間に合ったと言えるのか?アウトなのか?
考えるよりも、出そう!
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