見出し画像

まさおくん物語~最終話~

(前回までのあらすじ)
引っ込み思案のまさおは、ある日の下校途中に傷ついたすずめを見つけた。まさおはそのすずめを家に持ち帰り、傷の手当てをしてやった。
まさおの世話のかいあって、すずめはすっかり元気になり、まさおも明るく元気になった。
しかし、10日目に野良猫の被害に遭い、すずめの儚い命が散った。

まさおの家の裏山には、小さな神社がある。苔むした石段を登り、鳥居をくぐった先に小さなお堂が立っているだけの小さな神社だ。境内と呼べるほどの広さはなく、鳥居からお堂までは大人の足で5歩もない。近所の人たちの持ち回りで当番を決めているから、掃除は行き届いている。
特別におもしろいものがあったわけではないが、まさおは暇さえあれば暗くなるまでその神社にいた。どんぐりを集めたり、虫を探したり、木の上からこぼれてくる鳥の声を聞いたりするのが好きだった。

まさおがよく神社で遊んでいることは知っていたから、父は家の門をでるとまっすぐにそこを目指した。裏の畑のあぜ道を通り、石段を上ったところで、まさおを見つけた。
まさおは、もうすでに泣き止んでいたものの、一番大きな木の根元にうずくまっている。声をかけようとした父は、まさおの行動に気づいて立ち止まった。まさおは、素手で穴を掘っていた。土をかき出す手は、もう真っ黒になっている。
まさおは、父が背後に来たことにも気づかず、すずめのお墓を作っていたのだ。穴の隣には、冷たく動かなくなったすずめが横たわっている。途中で摘んできた小さな黄色い花もあった。父は、足を止めたまましばらくまさおの後ろ姿を見つめ、そして、気づかれないようにそっとその場を離れた。

父が家に着いてしばらくしてから、まさおは帰ってきた。まっすぐに洗面台に向かい、勢いよく水をながしながら手を洗った。頬には少し土の跡がついているが、もう涙の影はない。家族の目には、少し大人になったように映った。
神社の木の下には、すずめが静かに眠っている。お墓の上で、黄色い花が風に吹かれて静かに揺れた。

ー おわり ー

6月後半に突然投稿した『まさおくん物語』。高校時代に書いた作品です。
全5話で最終話となる今回は、神社の様子など少し表現を膨らませながら書きました。

「まさおくん物語、読んでるよ。あれって、吉村くんの少年時代のこと書いてるの?」
なんて声かけもいただいています。
僕の直接の体験談ではないですが、あの頃に何かを投影させて書いたのかもしれません。

ちなみに、最終話の舞台となっている神社は、実際に実家の近くにあったお宮さんを思い出しながら書いてみましたよ。

1話から5話まで、全体で約4,000字。
短い物語ですが、とりあえず自分が思う「おわり」まで書き上げることが大事だと思いながら、noteに掲載した作品です。
続けて読む場合は、こちらからどうぞ。

#青春の思い出

この記事が参加している募集

最後まで読んでいただきありがとうございます!少しでもお役に立てたら嬉しいです(^-^) いただいたサポートは、他の誰かのお役に立てるよう使わせていただきます。 P.S. 「♡」←スキは、noteユーザーじゃなくても押せますよ(^-^)