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こわれた腕輪 ゲド戦記2

前回に続き、ゲド戦記の2作目。今回は、巫女の役割を与えられた少女を中心に物語が進みます。少女の心の成長に焦点を当てると、人が大人になるにつれて乗り越えていく壁やそこで生まれる葛藤、周りからの影響力の強さがどんなものかを学び取ることができそうです。

ある島のしきたりで、幼い頃に巫女として生きることを背負わされた少女。与えられた名は、”喰らわれし者”。そのしきたりが正解であるという世界で生きることになります。自分は何者かと考えることも必要なく、その世界の支配者になる。でも、外の世界の価値観に触れることで、疑問が生まれます。そして、外からの力を借りて、自由に生きることを選択する。ただ、一歩踏み出したからと言って、すぐに望み通りにはならず、不安や誘惑に負けそうにもなりながら、少しずつ前に進んでいく。

これは、僕たちが、周りから与えられ守られていた子ども時代から、少しずつ自立して歩き出そうとする思春期・青年期に向かう心の動きに似ています。自分が世界の中心でいられる子ども時代。その世界はまだ小さくて、外には大きな広がりがある。可能性があり、自分で歩かなければいけないという責任もある。そのタイミングには、きっかけをくれる人の存在があって、助けてもらいながら歩くことができる。でも、その人に何でもやってもらうのではなく、歩くのは自分。

このプロセスは、子ども時代からの成長だけでなく、大人になってからも該当するように思います。職場での経験や、仲間との体験を積み重ねると、そこに自分が生きる世界ができます。居心地がよければ、それが正解だという気持ちも生まれるでしょう。でも、その外には、また違う価値観の世界もたくさん存在している。周りの人とつながりながら世界を広げていく、そんな繰り返しなのかもしれません。

この物語だけでも十分楽しめるけど、1作目も読んでいた方が細かい設定まで理解できて、より深く物語の世界を味わうことができます。1作目で自分の内なる「影」と戦ったゲドが登場し、重要な役割を演じているから。葛藤を乗り越えた経験があるからこそ、少女の心に大きな影響を与える人になり得たという見方もできて、心の世界のおもしろさを感じました。

読書のきろく 2020年26冊目
「こわれた腕輪 - ゲド戦記2」
#ル・グウィン
#清水真砂子
#岩波少年文庫


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