里山資本主義 -日本経済は「安心の原理」で動く
お世話になっている人から、「今ごろ読んだの?」と言われそうな本。
今がタイミングだったんだなと思いながら読みました。
未来に希望を抱かずにはいられない。そして、やっぱり地域に問題解決のカギがあると確信せずにはいられない。そう感じさせてくれる本です。
出版されたのは2013年。その当時より、重要度が高まっている気がします。
現代社会で生きていくためには、お金は必要です。
でも、本来、人が生きていくために必要なのは、水と食料と燃料。そこに「人のつながり」と「自然とのつながり」をクロスさせて、心も豊かに生きる人たちがいて、その事例から生き方や知恵を教えてくれます。都会か自然のどちらか、ではなく、どちらもバランスよく取り入れた生き方が、可能だったのです。
捨てていたものが燃料になったり、耕作放棄地が菜園になって、生活を支える。これは、単なる「モノの再利用」ではなく、外に支払っていた経費を削減し、自活し続ける力を養う。そんな事例が、里山から生まれています。
個人的に、「里山」という言葉からは、秋田に研修に行ったときの、藤里町社会福祉協議会の話を思い出します。ひきこもり支援を地域活性化につなげた事例紹介は、観客の拍手喝さいを集めました。
地域の困りごとをマイナスとせず、活かす道を探す。多くの人が求めていたんだと、今振り返って改めて思います。
町全体を巻き込んで・・というスケールで考えようとすると、自分には無理かなと思ってしまいます。実際にやっている人を、うらやましく思ってしまう自分もいます。
でも、今あるものに目を向けると、宝物の世界に足をつっこんでいました。縁あって、数年前から校区の社会福祉協議会で活動するようになり、そのつながりで関われるようになった居場所づくりのプロジェクト。ここには、空間と土地があり、人がいます。特別養護老人ホームと、地域の高齢者と、子どもをつなぐ。この本にも、まさにこれだよ!という事例が紹介されています。参考にして、足元の地域版として新たに何かを生み出せそうです。
本の中では、「懐かしい未来」「手間返し」という言葉が紹介されています。僕が生まれ育った田舎では、物々交換は別に珍しいものではありませんでした。困った時には、助け合うのが当たり前。子どもの頃の気持ちとしては、助けを求めるのが当たり前みたいな感覚もありました。そして、「ありがとう」がつながる関係。
都会では、ちょっと遠慮してしまう部分があるし、子どもたちには知らない人は危険だよと教えている。白か、黒か、どちらを選ぶ?みたいな究極論ではなく、身近な地域でできることを考えることが大事なんだと思います。
この本を読んで、未来がまたちょっとおもしろくなりました。
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読書のきろく 2020年15冊目
「里山資本主義 - 日本経済は「安心の原理」で動く」
#藻谷浩介
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