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[想像に眠るあなたへのメッセージ]信じたい

短編小説:信じたい

あらすじ

 信子のぶこは、友人関係、恋愛、仕事、何もかもが上手くいかず、偽りばかりの信じられない人々に囲まれた生活に限界を感じていた。そんな時、偶然に立ち寄ったお弁当屋で美子よしこと出会い、彼女が信子のありのままを引き出すきっかけをくれる。


プロローグ

 「そんな事するような人には見えませんでしたよ。幸せそうなご家族で、お子さんもたくさんいるようでしたし、週末には大きな車に乗ってお出かけしたり、近くの公園でバスケットボールを一緒にしているのを見かけた事もあります。地域の行事にも精力的にお手伝いして下さって、とても頼もしい方でした。本当に穏やかで人当たりがいい人だったので、ちょっと信じ難いですね。」
 ある高級住宅街に住む会社経営の40代男性が、15歳の養女に性的虐待をしたとして逮捕された。

 「ほうらね、みんな仮面かぶって生きていんだから、裏の顔なんて誰も知りやしないのよ。ありのままに生きるってなんなの?仮面外して生きたら、この世は終わるじゃない。」
信子はテレビで流れるニュースに向かってつぶやいた。

 12月25日
 『信じる者は救われる。』と、言わんばかりの今日という日は、逆に信じても変わらない苦しい現実をマジマジと見せつけられる残酷な日。
 もう良い加減、『信じる』とか、純粋な子供みたいな事を考えるのを辞めたらいいだけ。世の中には、猫被った腹黒い人間しかどうせいないんだから。私もその内の一人なんだし。
 私の願いを叶えてくれないサンタクロースは、ただの幻で、こんな日に生まれた私は、嘘と偽りの塊でしかない。
そんな私が『ありのままの自分』なんて持ち合わせているわけがないの。

 「仮面をつけて生きていく方が、この世の中、生きやすい」と教育されていた私は、正直言うと『ありのまま』って事がわからない。

 良い人の仮面、良い生徒の仮面、良い娘の仮面、良い彼女の仮面。

 他人からどう見られたいかを気にして、数え切れない程の仮面を付け分けて生きてきた私には、ありのままの私が存在する隙なんてなかったんだ。

 「信じる子」と書いて信子という名をもらった私なのに、ありのままの自分がない私は、どの自分を信じていいのかすらわからない。

信じるものは救われない。ただ、傷つくだけ。

続く。。。

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