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「現状維持という衰退」と「成長への強迫」について

現在読んでいる書籍に成長について記述があって感じるところもあり、最近同僚に軽く話したことも一つのきっかけとして、私の考えをまとめておこうと思う。端的に表したため語感が強めのタイトルとなったが、もう少し正確めに表現すると、次のような主張だ。

  • 現状維持は、相対的な衰退である

  • 成長することへの強迫観念はすり込まれたものである

  • その上で、成長は楽しい (例え自己満足であろうと)


現状維持という相対的な衰退

市場や大多数の顧客から求められる「期待価値」は日々上昇している。

より正確には、(マクロ経済に明るくない私が述べるのは億劫だが) 、市場に提供される価値が価値提供者 (企業など) の競争構造により日々上昇している。市場は期待価値以上の提供価値を享受しようと動き、次第にそれに馴れていく (期待価値が上昇する)。価値提供者は市場の期待以上のそれを提供しようとする・・・という流れだ。

(ただ、特定の市場——例えばスマートフォンなど——に限定すれば、この提供価値は様々な要因でプラトーのような停滞時期が存在するはずだ。もしくは、市場規模が小さいところに対してはこの限りではないと考えられる。本筋とは逸れるので、今回は考慮しない)


この構図により、企業などの生産活動における提供価値は、日々改善しなければならない。現状維持のままでは市場の期待価値から乖離が生まれ、サービスやモノが売れなくなるからだ。Apple が初代 iPhone を改善無しで作り続けていたとして、今の市場には相手にもされないだろう。


ここからは、価値提供者 = 企業で考える。

企業は、「提供価値の向上」を市場から強制的 (生存原理的) に求められている。この要求は、当然、企業に属する社員にも適用される。そのため、企業や社会は、サラリーマンにあの手この手で成長を促す。成長への強迫もその一つだ。


成長への強迫

成長への強迫は、生活の至る所に張り巡らされている。メディア、SNS、広告、書籍など。しかし、このような現時点の強迫だけでなく、過去ともいうべきか、現在に至るまでにもこの刷り込みは存在している。例えば義務教育と試験制度、宗教を始めとする文化教育だ。これらの中には、成長を賛辞し、たゆまぬ努力を奨励する言説は数多く存在する。


「強迫」とは、Google 検索 (Oxford Languages) によると無理強いのことである。「成長への強迫」というと、賛否両論あり反感の念を持つ場合もあるとは思うが、やはり私は「強迫」という言葉が当てはまるように考える。


そもそも論、教育とは洗脳である。洗脳とは、Wikipedia によると「強制力を用いて人の思想や主義を根本的に変えさせる事」である。本能のまま行動し、「音」を発する乳幼児の頃から、家族が属する社会・文化や家族そのものへと適応するように「根本的に変化させること」こそ、まさに教育であろう。

洗脳(せんのう)またはブレインウォッシング(英: brainwashing)は、強制力を用いて人の思想や主義を根本的に変えさせる事。自分が洗脳されていることに気づけば洗脳でないと言うのは把握がなされていれば脱洗脳をする事が可能という事である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%97%E8%84%B3

(個人的には、企業による人材教育は、そもそものそれではないと思いたい。企業教育と洗脳とで共通する部分を有しているだろうが、そのものではないと思いたい気持ちが残っている。企業 (社会の公器) の善意を信じたいのかも知れない。まあ、ところによって「洗脳」を実践されていることは明らかだが)


いずれにしろ、過去から現在に至るまでの教育を含む環境により、我々は、暗黙的にしろ明示的にしろ成長への強迫をすり込まれている。

さて、一見、成長に対する否定的な論調を述べてきたが、それは主旨と異なる。ただし、この前提を無視して成長を賛美・奨励するだけでは足りないと思っており、生存原理として成長は必要だということを言語化しておきたかった。


成長は幸福のための手段

成長とはポジティブな変化である。さらにいうなら、「成長」と評価する立場からみた肯定的な変化だ。評価者には自分自身もなり得る。


成長の強迫を我々は受けている。この強制力は洗脳のそれであり、生半可に脱することはできない。それに、脱する必要がないものだとも思える。

成長は、人間の幸せ——欲求を満たすこと——に大きく寄与するからだ。少なくとも、現代社会において再現性高く幸せになりたいと願うのであれば、成長なくして実現は困難であろう。

マズローの自己実現理論を元に筆者が作図
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E7%90%86%E8%AB%96


そのため、自分自身もしくは周囲の望むままに成長することは、幸福のための一つの手段である。成長することで、欲求を満たすことができ、幸せになれる。


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