脱「メダルきちがい」宣言
もうすぐ平昌オリンピックが開幕するということで、地元の先輩や後輩に冬季オリンピックの出場者がいる環境に育った私としては、夏のオリンピック以上にワクワクしている。それは日本人選手を応援したいこともあるけれど、テレビではめったに放映されない冬の競技が注目されることや、世界のトップ選手のプレイを見られることが本当にうれしいからだ。
なので、日本人選手がメダルを取れるかどうかは、どちらかと言うと二の次。どんな選手だってメダルが欲しいに決まっていて、みんなメダルを狙っている。でも、それはあくまで選手の問題であって、部外者の私たちはただ応援するしかないし、メダルの有無や色で選手の価値を決めるようなことは嫌よねぇ……というのが正直な気持ちだ。
どの選手も、人生賭けてオリンピックに出ている。みんなが遊んだりボーッと過ごすような時間さえも、競技に捧げてきた人たちだ。だから、その人生を賭けた選手の覚悟と勇気とプレイだけをひたすら応援したい。
そんなこともあって、スポーツ新聞やテレビ番組の、「あの競技では何メダルが何個」みたいな予想が嫌だったりする。それって昔、水泳選手だった千葉すず(現姓・山本)さんが言った「日本人はメダルきちがい」っぽい感じがするからだ。
それでもね、日本全国が「メダルきちがい」を脱した瞬間があると思うんですよ、ソチオリンピックでね。そう、女子フィギュアスケートのフリーで滑る浅田真央さんを見たときに。
前日のショートプログラムで、16位になってしまった真央さん。あのとき、私は息子にこう言った記憶がある。
「人生賭けて金メダルを目指してきた選手が、それが絶望的になったんだ。そんなときに、その人がどんな演技をするかちゃんと見ておけ! それがその選手の生き様だ!」
オリンピック選手ほどではないけれど、がむしゃらに剣道に打ち込む息子には、絶望の断崖絶壁に追い込まれた真央さんが、どんな演技をするかを見てほしかった。真央さんならば、おそらくあきらめずに素晴らしい演技をするだろうと思ったからこそ、息子にはこう言ったのだけれど、結果はそんな私の予想を上回る、とんでもなくすごい演技だった。
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あの演技は本当にすごかった。どうすごいかなんて、そんな理由は後付けでしかない。ただただ、すごい。あのとき、私は本当に心から「メダルなんて要らねーや」と思ったし、当時のTwitterのタイムラインにも「メダルなんてどうでもいい」「金メダル以上の演技」といったつぶやきがたくさん並んでいた。そして、つぶやいている人は、みんな真央さんの演技に心揺さぶられて、明らかに泣いていた。真夜中だというのに。
オリンピックという誰もがメダルを目指す場所で、みんなが感動したのが、メダルなんて関係のない、その競技をひたすら愛して打ち込んできた選手の最高の演技だったなんて、すごすぎるし、現実感がないし、漫画っぽい。だけど、それがオリンピックの競技を心から味わうことのような気もしているのです。
前回のソチオリンピックでは、真央さん同様に金メダルが期待されていた女子ジャンプの高梨沙羅選手が4位となった。全国的には「メダル獲得ならず」みたいながっかり感たっぷりの報道がされていたけれど、地元の北海道のテレビでは、「高梨選手・伊藤選手、入賞おめでとう!」というお祝いのコメントが流れていたらしい。
メダルを取れなかったことよりも、入賞したことをよろこんでいるのが素晴らしいし、同じ競技に出場し、同じく北海道出身の伊藤有希選手にもちゃんと注目しているのもGood jobだ。こういった地元の選手を愛する気持ちが、「メダルきちがい」を減らしてくれているんだと思う。
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