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【詩】ダイアローグ

魂の深いところにそっと糸を垂らす。


耳を澄ませて深部の音を聴き分けようとする。
日々の忙しさで粗くなっていた、
心の感度を研ぎ澄ませて。

不思議な静けさが辺りを包みこんで、
私は溶液の中にひとり。
とぷん、と潜り込んだのだろうか。

ひとりだが孤独ではない。
親密な温かい気配に包まれていて、
ここではすべてが自分と繋がっていることがわかる。

細胞一つひとつの微細な振動を感じてみる。
小さな宇宙の一つひとつに、
生命の歴史のすべてが刻み込まれている。
それはすでに刻まれて在るのだから、
知ろうと力まなくてもいい。

必要ならば、ただ思い出すだけでいいのだ。

出逢いと別れを繰り返して刻み込まれていく
個人の小さな歴史の中で、
ほんとうのことは目に見えにくい。
「ほんとう」は秘められており、
口に出すことは憚られてきた。

けれども、今、私は「ほんとう」だけを語りたい。

それなのに、
この「ほんとうを口にする懼れ」は何だろう。
正体を見極めたい。

見えざる宇宙に秘められた歴史の中で、
かつて私は神秘を探究する隠者であった。
あるときは邪なものとして糾弾されもした。
幾重にもこだまする
かなしみと無念の残響。

私という存在は断罪されているのか。
「ほんとう」を語ろうとする時、
心に感じる重みのある引っかかり。


それでもなお、その道を進もうとするか。
―‐進みたい。
私の中で誰かが言った。

それしか道はないように思えた。

人に迎合するための偽物の言葉は語りたくない。
「ほんとう」でない波動が体を満たすと、
心と体に不調和が生じて
まともに息をつくこともできない。

道を拓く時というのは、かくなるものか。
ほかの選択肢はないように見えるものだろうか。

目の前に照らされた一本の道がある。
この光はどこからやってきたのだろう。
白くて、まばゆい。
とても明晰な光、どこまでも清浄。

「ほんとう」の言葉は澄み渡る空気とともにあって、
光と同じ成分でできている。
自分を越えた何か、
もっとずっと確かな存在が
その言葉を語らせているような気がする。

私たちは振動し、明滅している。
私たちはここに在りながら、明滅を繰り返すエネルギーだ。
一瞬一瞬が変化であり、創造し続けるエネルギーなのだ。

だから、創造を生きたいと心から望む。
この渇望はどこから生まれてくるのだろう。

穏やかな静けさを愛する一方で、
創造のダイナミクスの中に身を投じたいと渇望している。
渇きに正直に生きることを望んでいる。

心の奥底から喜びが花開く時には、
たくさんの花々が祝福してくれる。
祝福に包まれて、心が開かれてゆく。

世界のどこかで人知れず咲く花々のことを思いながら、
内に秘めた情熱を解き放とう。

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