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【詩的散文】11・ユースティティアの天秤

正義の女神はテミス
またの名をユースティティア

ローマ時代にはすでに
天秤と剣を裁きの象徴とする
寓意画が描かれていたようだ
正義の女神像は
法の平等の理念が広まった16世紀ごろから
多く制作されるようになったという

天秤は古来
〈裁き〉と〈正義〉を表していた
ジブリールは最後の審判の日に
天秤で人間の善行と悪行の重さを
測るのだと言われている

古代エジプトでは死者の心臓と
真実の羽とを天秤にかけ
生前の行いを裁くところが
パピルスに描き残されている

また剣は光であり
神の言葉も意味していた

「天秤が正義で剣は力」だ
17世紀にパスカルは書いている
「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」
つまり
正義と力が法の両輪であると
説かれたのだった

天秤と剣がそれぞれ
「正義」と「力」であるならば
ウェイト版で入れ替えられた8番と11番に
ぴったりと符合している
元々の8番が
正義の天秤を表すのにふさわしいように
元々の11番は
欲望を制する意志力にふさわしい

なぜならば11は5+5+1
聖なる五芒星 と邪なる五芒星が拮抗する中で
意志力の1が加わることで
本能の力を制しているからだ

いずれにせよ
正義とは
本能剥き出しの無秩序状態から脱し
この世に秩序と安定をもたらすために
必要とされた概念だった

時代のコードや社会のコードによって
正義は変わっていくものだ
しかし
プラトンが考えたように
善なるイデアが存在するのだとしたら
それこそが本質的な正義に近いものであり
普遍的な人間の善性を意味している

人間が語る正義には不備が多いが
正義そのものを神格化した女神には
損なわれることのない善性が
輝いているのかもしれない

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