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ヘルシンキでヘアサロンをオープンした話、店舗の場所を決めた経緯。

先日梅沢さんが取材を受けていらして、その校正をサロンオーナーである私にもしてほしいと媒体から依頼がありました。はい喜んで、と読んでいたら・・。

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ポップアップでヘアサロンを開始した時期を「2018年春から・・」と説明している梅沢さんの回答が目に飛び込んできました。1年分短くなっちゃってますよ、梅沢さん!(ポップアップを実施したのは2017年春からなんです。)私は1年分長く間違えて記憶していたので、似たようなものですね。お互いの適当さが見えたようで笑ってしまいました。曖昧な記憶を掘り起こして、サロンオープンのお話(続き)を書きます。

工務店が決まらない

雇用契約書を準備したら、次はサロンの開店準備です。梅沢さんの鶴の一声で場所は私の事務所に決まりました。「次は春に。ポップアップじゃなくて移住ですね。」と原宿へ帰る梅沢さんを見送りつつ、工務店探しから手をつけました。簡単に見つかるかと思っていたら、これが意外に難航しまして・・。家の改装でもない、大きなビルの改修でもない、小さな事務所スペースを美容院に作り変える工事。隙間需要すぎて受け手がない状態でした。「うちはやってないです」というお返事が数件続いたところで作戦を変更してお友達に聞きまくることに。

アニタ!

力になってくれたのはインテリアデザインを専門にしているお友達でした。「この間お願いしたところは親身になってくれたよ」と連絡先をもらってすぐ電話。翌日には担当の方が私の事務所を見にきてくれました。来てくれたのは夫婦で工務店をやっているアニタ。間取りは事前に届けたものの、実際に現場を見た彼女は「ここに洗髪台を置くの?本気?」と驚き顔。オフィススペースをサロンにし、その奥の倉庫を私のオフィスに作り変え、洗濯機&乾燥機を入れて、配管を整えて洗髪台を入れる。私の頭の中では完璧なプランでした。最終的には配管工の方も一緒に何度か場所を見に来てもらって見積もりを出してもらいましたが、配管工の方も「そうねえ・・」と困り顔。素人すぎて「プロならなんでも大丈夫」的に考えていたもので、このあたりでようやく「大変なことをお願いしているのかな?」とちょっと不安になったのを覚えています。

梅沢さんの意見ファースト!でも不安。

見積もりをもらいつつ、事務所物件のオーナーさんと話し合いをしつつ(賃貸なので、改装には当然許可が必要です)、不安な気持ちはなかなか拭えず・・。もしかしたら他の物件も検討した方が良いかな・・と気持ちがぐらつきます。ここで私を支えてくれたのは、アニタでした。お仕事的な意味では早く工事を決めて早く請求書を立てた方がアニタ的には良いはずです。が、私が「この物件で大丈夫かね・・」と正直な気持ちを漏らしたところ、「納得いくまで他の候補も見てからの方がいいよ。ついていくから。」と言ってくれたのです。アニター!涙。梅沢さーん、いい人に出会いましたよー!

内覧マラソンスタート

この時点で翌年の春には全て完成させて梅沢さんを迎えると決めていました。梅沢さんもそのつもりで色々と日本でけじめをつけて準備をしてくれています。そうなると、遅くとも年明けには改装工事を始めなければ間に合わない計算です。この年の冬は、ひたすら物件をチェックして、電話して、アニタと見に行って、のループになりました。

今考えると梅沢さんすごいな、と思いますが、この冬の間に梅沢さんへの報告は内覧に至った物件の写真や動画連絡だけだったんです。それ以前の段階でダメになった物件については報告していません。事務所の改装について大家さんとどう話をしているか、アニタはなんて言っているか、これも報告していませんでした。梅沢さんには日本のお客様との残された時間を目一杯使って欲しいという気持ちと、経営自体は私がするのだから、細かいことは私が引き受けなければという責任感があってそうしたのですが、梅沢さんの視点から振り返ると「来年春からどこで働くかまだ決まってないよ〜、一体どうなるの〜」と不安になって当然ですよね。申し訳なかったなと今は反省しています。同時に「ねえ大丈夫なの?細かく報告してよ!」とおっしゃらなかったのは私を信用してくれていたからなのかなと想像するとありがたい気持ちもします。

実際、良いなと思った物件はエスプラナーディ公園の近く(!)、カタヤノッカ地区のトーヴェ・ヤンソンが以前住んでいた建物(!!)、おしゃれ地区プナブオリの隠れ家的空間(元劇場!)、トーロ地区にあるレトロ美容院でおばあちゃん引退の跡を継ぐ、アクセス最高のカンッピ地区にあるヘアサロン激戦区・・などなど。選択肢はたくさんありました。それぞれにアニタと私と梅沢さんとで確認、確認、また確認。空気感や光の入り方などを重視しながら選んでいきました。

失敗もあれこれ

途中には血迷いすぎて「賃貸を改装するのでは理想に近づけない!」という結論(極端!)に行き着く時期があり、店舗物件を購入する検討までしていました。銀行の方も若干苦笑いでしたが、ちゃんとローンの相談にものってくれて・・・。売り出しの店舗物件にも候補はいくつかあったのですが、最終的に「少なくとも日本では物件を買ってからお店をオープンするヘアサロンってほとんどないですよ。賃貸が普通です。」という梅沢さんのアドバイスで目が覚めました。止めてくれてありがとう、あの日の梅沢さん。

これも今となっては笑い話なのですが、ある物件で管理会社(というかその中の担当の方)の担当替えに伴って賃貸の口約束が二枚舌状態になってしまう事件が発生しました。私はそこに決まったと思い込んで準備を進め、もう一社別の会社も同じくそこに移転する気で改装計画を組み・・という状況だったわけです。判明した時は流石に半泣き。慌てて移動中に管理会社へ電話。「責任者の電話番号を言うからそっちにかけて」と言われたのは冬の路上。怒りで震えつつ、自分の詰めの甘さに情けなさも込み上げて。いますぐに担当者と話したいのに、メモもペンも持っておらず、どうしようもなくて路面の雪に電話番号をメモした思い出があります。笑。雪に指で描いた電話番号にすぐかけ直しながら、指がかじかんで、番号を押し間違って・・焦る、焦る。「どうなってるんですか!もうあの物件で髪切る気満々なんですよ、こっちは。あっちとこっち、どっちを取るの?テナントは美容院の方がいいに決まってるでしょ!」と雪の路上で叫んだ私。どうかしてます。(そもそも詰め寄り方も意味不明ですね・・)その後やりとりが続き、結局その物件とはご縁がありませんでした。(今でもそこの前を通るとテナントを凝視してしまいます。笑。)

ようやくゴールが!

そんなこんなで当初あった「事務所をそのままヘアサロンに改装」からは遠く及ばない物件選びマラソンに突入した我々アニタ組。実際「年内に!」と思っていた物件選びは年明け2月になってもまだ決まっていませんでした。汗。長距離をヘロヘロになって走ったこのマラソン、ゴールはある日突然やってきました。「ネット回覧板」的なローカルなページに「空き物件あります」の一言。翌日行ってみると窓に張り紙があるだけで中は暗闇。中をのぞいてもどうなっているのかよくわからず・・。とりあえず大家さんらしき連絡先を控えて、梅沢さんに外観の写真と動画を送信。

これに対する梅沢さんからのお返事が決め手となりました。今までよりもテンション高く「入り口かわいい!」と返信が。(ハートマークが付いてたんですよ、ハート!)すぐに大家さんに電話して、翌日内覧し、その場でアニタと一緒に改装計画を大家さんに相談。「ヘアサロンいいねえ」と言ってくれた大家さんに感激して「ここ貸してください!」と宣言。正味2日で、決着が着いたのでした。その物件がTunturikatu 6にある今のJEFFです。

巡り合わせ、ですよ。

アニタの言った通り、納得いくまで色々とみてまわって良かったなあと心底思います。二枚舌事件も、物件買おう騒動も、それぞれ経験したから今の物件に最良のタイミングで出会えたということですからね。梅沢さんも「きっと巡り合わせだったんだねえ」と。私が梅沢さんと出会ったのも、この物件と出会ったのも、すべては巡り合わせ。不思議なものですね。その後急ピッチで進めた改装の途中に、梅沢さんの言葉を噛みしめる出来事がありました。

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