マガジンのカバー画像

原子・元素・原子核

20
原子・元素・原子核に関わるテーマについて考えたり、学んだことを書いた記事をまとめています。
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

現代の「錬金術」:宇宙元素合成

人類は金(Au)という物質に魅了されてしまう。「金(Au)を生み出したい」という欲望に搔き立てたれた中世の錬金術師たちは、様々な試みにより化学を発展させた。しかし、化学反応しか扱えなかった彼らの野望は儚くも散ってしまう。 結局、僕たち人類は、地球のどこかに埋まっている金(Au)の鉱石を掘り当て、精錬することを続けるしかなかった。 金(Au)は地球のどこかに埋まっている。しかし、そもそも、その金(Au)はどのように生まれたのだろうか。錬金術師ではない何かが、過去に、金(Au

現代の「錬金術」:放射性廃棄物の核変換

日本は(現在のところ)高レベル放射性廃棄物(HLW: High-Level Radioactive Waste)を地層処分する方針だ。しかし、処分地選定は足踏み状態にある。 処分場の建設が技術的には可能であるにも関わらず、前進できていない理由は、地層処分への信頼不足や選定プロセスの問題からきている。この現状は、地層処分を含むHLWの処分問題が科学技術のみでは解決できないことを物語っている。 さて、これまでの原子力発電の利用によりHLWはすでに存在している。よって、この問題

現代の「錬金術」:言葉に付け加わる新たな意味

時の流れと共に、言葉に新たな意味が付け加わることは稀ではない。今回取り上げる「錬金術」もその一つだ。 「錬金術」は元々、中世ヨーロッパなどで行われていた試みのことを指していた。この試みは研究というよりは、儀式の要素が強かったとも聞く。ちなみに、あのアイザック・ニュートンも熱狂していたことが伝えられている。 結局、彼らの「卑金属から貴金属を生み出す」という野望は叶わなかった。それはひとえに彼らが化学反応しか扱えなかったことによる。 原子核反応でしか元素は変化しない化学反応