技術と習慣の違い


今回は前の記事で書いたことをもう少し深掘りしてみようと思います。

前回の記事では、反復練習に潜むリスクについて書きました

ざっくり言えば、人の体は使い続ければいずれ壊れる、というものです(笑)

人の体にリミットがある以上は、その中で効果の高い練習をしていかないと極みに至らないですよね?

今日はそんなお話をしていきます。

技術と習慣は違うものである

たとえば、格闘技なんかだととてもわかりやすいです。

良いパンチを打つために、ひたすら数多くパンチを打とう。

これは技術ではなく、習慣、つまりは「慣れ」を得るための作業です。

何がどうなると良いパンチなのか、その指標も無いし、どうすればそれが可能なのかも全く見えていません。

だから、怪我で習慣が維持できなくなった時や、体が衰えた時にすぐ使えなくなり「以前は○○だった」という事を語るようになります。

部活でやってたレベルのおじさんによくある現象ですね(笑)

しかし「こうすれば良いパンチが打てるよ」という技術は、たとえ今日始めたばかりの人であっても、教えれば確実に効果があるものなんです。

引退後の格闘家がいきなりパンチの仕方を忘れたりはしません。力は衰えても、ノウハウは残ったままです。

だからトレーナーとして後進を育てられるんですね。

おじいちゃんでも、子供でも、女性でも、教わればその場で同じように作用します。これが本当の「技術」です。

技術のある人は、必ず答えを知っています。


多少形は異なるとしても、それぞれが答えを持ってます。

そしてそれは一生ものです。


楽器の演奏でも同じことです。

速いピッキングをやるために、とにかくピッキングしまくろう。というのはあくまでそういう習慣がつく、慣れるだけの行いです。

しかし、大抵の人はその習慣を維持できず、慣れが無くなると、パフォーマンスも気持ちも落ち込んでいきます。

しばらく弾いてなくて下手になった、的な。でもそれはもう、技術とは呼ばないんです。

しっかり技術を持っている人は、たかが数日でヘタにはなりません。

僕が実際そうでした。およそ1年半ほど楽器をほぼ触らない生活もしましたが、ノウハウは消えていません。

どう弾けば良い音が鳴るのか、その答えを知っている以上、あとはそれをやるだけですから。


自転車に乗ることを思い浮かべてみて下さい。

自転車に乗るために「よし!俺は自転車に乗るために筋トレするんだぁ!!」とはならなかったですよね?(笑)

もしくは補助輪も何もなしに「とにかく乗れるまで何度こけてもやるんだぁ!!」とか

僕は脳筋なので、そういう思考も嫌いじゃ無いですが👍

そうではなく、多分乗る度に「ここをこうしてみよう」という試行錯誤があったはずです。

いわゆる「コツ」探しですね。

だからこそ、一度コツを掴めば一生忘れ難いものになる。

このように、技術というのはどちらかと言うと単なる力ではなく、知識による所が大きいですね。
「自己流」は技術にとって邪魔になる

よくやってしまいがちなんですが、自己流というのは技術を習得する上で邪魔になります。


あらゆる事に関してそうですが、同じ界隈の達人の言う事はだいたい同じです。

流派というのは、その武術の「思想」で決まってきてると思います。

流派が同じ格闘家なら、みんな同じような形になっていきます。

それは、求める結果、答えが同じだからです。

一見すると抜きん出てるような人も、あくまで基礎的な、誰がやっても通ずるような技術が身についた上で、ほんの少しの自己流が混じっているだけのことです。

逆に言えば、基本的な技術というあまりにも当たり前で目立たない部分があって、自己流が初めて派手に光って見えるわけですね。

技術を習得するためには、まずは徹底的に良い見本をコピーをする事からです。自己流は全くいりません。

その上で、どこをどうすれば寄せられて、どうすれば違う事ができるのか

また、自分がやろうとした事に対して、現実はどのくらいの誤差があるのか。

その試行錯誤こそが、本当の意味での「練習」なんですよね。

考えてみればわかることで、自己流で何とかなるなら練習必要ないし、もうできてるはずなんですよ。

自己流以外の物を、わざわざ取り入れるから意味があるんです。

技術のない人がいくら自己流をやったところで、本人にしか当てはまらない、ぼんやりした「癖」が身につくだけです。

独学で楽器をやってる人の大半が、良くも悪くも癖に悩まされているのはそういう事なんです。


これは音楽理論に対しても同じで、例えば音楽理論とかを一向に学ばない人とかがよく言う「型にハマってしまう」という説

これは中途半端に学んだ結果です。まずは型にはまって良いんです。そのために学んでますから(笑)

その後の型破りのやり方まで追求しない人を見て「型にはまりたくない」と感じたのかも知れませんね。

ちゃんと型を知っていれば、あえてそれを破る事は普通にできるようになります。

わざとやっちゃダメな事をやるだけなので。超簡単です。

都合の良い時に型を破れば良いし、あとで戻ってくれば問題ない。それが「型破り」というものです。

最初から型も知らないで場当たり的にやる事は型破りとは呼ばないんですよね。


個性がなくなる、という人もいますが、単に周りと違う事で目立っているだけの物は個性とは違います。

まぁ普通に音楽を作ってもみんなと同じになってしまうから、何か変なものを入れてみよう

そんな感じで、人と違う事をやろうとしてとにかく不協和音を入れてみたとしましょう。

誰がそんな曲を聴くでしょうか?(笑)

こういったものはただの悪目立ちです…

一見するとみんなと変わらない、同じことをしてるはずなのに、なぜかその人のやる事だけが光って見える。

その土台が技術であり、磨かれた先で光るのが個性という物です。

型にはまってもいいし、最初はみんなと同じ、埋もれてもいいんです。

全ての学びは、真似するところから。


赤ちゃんが言葉を覚えるときは、周りの大人の真似をして覚えます。

そこから、住んでる場所や世代によって、さまざまな方向に変化して、自分らしさを持ちます。

何についても同じことです。ほんの少しばかり先を行ってる人を真似て、そこから学べば良いんです。

もちろん、真似できた所で満足して探求をやめてしまったら、単なる真似事になってしまいますから

本当に技術を自分の物にするならば、自分の意思で、まずは基本をコピーしてみる。その後にあえてそれを壊す。

という事が必要です。

注意しなければならないのは、完コピと言ったからにはマジで完コピすることです。


単に何弦の何フレットを押さえる、という浅い話ではありません。雰囲気だけの半端なコピーではなく

ヴィブラートの幅、そのリズムまで見えるようになって下さい。

音色もどちらが本物かわからないレベルまで追い込んで作って下さい。「完コピ」ですから。

僕はスペクトルアナライザーを使って音の波形を分析、比較までして、同じ音を作ったりしています(笑)

何khzが何db出てるな、というのを目で見てるという事です。

そこまでやるからこそ、音という目に見えないものを具体的にイメージし、理想を形にしていく技術が身に付きます。

まずは完コピ。そして完コピしたら、ぶち壊して見てください。

また、他人のプレイを注意深く見て下さい。

どれが技術で、どれが慣れなのか?

その違いを探してみて下さい。

これがわかるようになると、他人から技を盗んでいくことが可能になります。

成長効率が爆上がりしますよ👍

自分の持ってるものが、技術なのかを確かめる方法

技術のある所には必ず答えがあります。

達人に出会ったら「それ、どうやるんですか?」と聞いてみてください。

おそらく、明確な答えが返ってきます。意地悪でない限りは(笑)

つまるところ

自分に技術があるかどうかは、それを人に伝えられる、その結果人が成長するのか?で確かめる。


これが最もわかりやすいと思います。

もし、相手への説明に困るとしたら、それは技術ではなく「習慣」「慣れ」からくる事をしてるんだと思います。

突き詰めていくと、わざと失敗できるかどうか

が技術を手に入れるために、かなり効果的です。

僕は人にギターを教える仕事もしていますから、自分が成功のお手本をやれるのは最低条件ですが

それ以上に、失敗してる時の状態も再現して見せてあげるようにしています。こっちの方が難しいですが(笑)

あえて生徒の失敗を再現してあげる事で、相手の理解度が跳ね上がります。

上手い例だけ見せても「自分と何が違うの?」という所をわかってもらえません。


例えば、右手と左手が合ってないなんてのはよく言われるテーマですが

講師に「右手と左手が合ってないので、それを合わせるように意識してみてください」と言われた生徒さんは、心の中ではこう思っています。

「それがわかってできたら、誰も苦労なんかしない」もしくは「ほんまか?」

って多分少なからず思ってます(笑)

生徒さんの失敗を再現するために、あえて左右のタイミングをズラせたりしますか?

これめちゃくちゃ難しいんですよ。何なら合わせるよりも難しく感じます。

慣れているからこそ、無意識で何となく合わせられる人は多いと思いますが

あえてそれをズラして、自分の思い通りにコントロールできる人はなかなか居ません。つまり

思った事が体でできてない、というギャップがあるのは、講師も生徒も同じになってますよね?

だから生徒に伝わらないんです。

違う所があるとすれば、講師には慣れがあり、生徒には慣れが無いこと。

お互いに技術がないのは同じなんです。

失敗や成功に囚われず、あらゆる事を思い通りに実現できる自由な領域

それが本当の技術です。

技術の探し方

逐一、自分の思った通りに動けているか?


あらゆる技術はこの一点に尽きます。

技術を身につけるためには、今やった事、前やったこと、これからやろうとしてる事、それぞれが違った物でなければいけません。

質の高い練習とは、こういう事を言います。

そしてそれぞれ何がどう違うのか説明できるくらいに意識を高めておくこと

自分の動作の全てを分析して、前と違う事をどんどんやっていくんです。

すごくシンプルな話ですが、上手くいかなかった方法を延々と繰り返しても、そりゃあ上手くいかないですよね?

むしろ上手くいかない方法に慣れが出てきて、変な癖が身についてしまうかも知れません。

(失敗に慣れてしまう。意外とこの危険性に気づかず、やみくもに長い時間やり続けて失敗を繰り返し、変な癖がつく人多いです)

もしも、力の問題であれば「あともう少し力があれば」という風に、自分でもそれがわかると思います。

ぼんやりと「なんだか上手くいかない」というのは、力だけではない何かが足りません。

数学の方程式のようなもので、求める答えに対して、ひたすら違う数字を当てはめていく。

こんな感じの練習が効果的です。

どうやったら練習の質が高まりますか?という質問は、中級者以上の方からよく受けますが

このように意識すれば、絶対に練習のクオリティーが上がりますよ👍

また、ちゃんとした技術が身につけば、日によって生じるムラが少なくなります。

何度やっても同じことが再現できる


これが結構大切です。

特にお仕事としてやってるような場合は信用に関わります。

今日はなんか調子良かったとか、なんか調子出なかったとか…

そんなよくわからない理由で仕事の質が左右されては、たまったものではありませんよね?(笑)


まとめ

いかがだったでしょうか?

「慣れ」と「技術」

それぞれ別の物なんだ、という風に認識するだけで、きっと練習の質がグッと変わります。

僕がギターを教える事を生業としている理由の1つに、自分の技術を常に確かめるという目的があります。

そして、他の人のプレイからどれが技術で、どれが慣れなのかを知る事

成功や失敗ではなく、両方を思い通りに体現できてこそ技術だと認識して練習する事

まとめるとこんな感じでしょうか。

概念的なお話で難しいかも知れませんが

お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

またふと思い立った時に色々書いていきたいと思います。

それでは!

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