見出し画像

徳島県勝浦町でワーケーションしてみました

2022年3月末、4泊5日のスケジュールで、徳島県勝浦町でワーケーション(ワーク:働く と バケーション:休暇の造語)をした記録です。


【徳島県勝浦町というところ】

勝浦町は徳島市から車で1時間弱の山間地にある人口約5000人の町です。

私自身は、過去5年以上にわたって徳島県とは様々な仕事上のつながりがあります。例えば、かつては徳島県西阿波にある美馬市の古民家で執筆活動や横国のリモート授業をしたりしました。また、この3年間はずっと阿南市にある徳島県立富岡西高校の1~2年生のSSH(スーパーハイスクール)で、データを活用した地域課題研究の授業を行っています。

実は昨年、徳島県で進めているデュアルスクールという制度を使って、娘を一時的に転校させると同時に自分もワーケーションを行うプランを進めていました。ところが、コロナ禍になりその話は頓挫してしまったのです。その時に色々候補地を調べている中で、勝浦町が移住や二拠点生活推進のための施策として、体験移住やワーケーションに対する金銭補助を行っていることを知り、その制度を今回活用させて頂きました。

その金銭サポートの制度があったことが最大の決め手ではありますが、ワーケーションをするにあたって次の要素を満たしていたのも大きいです:

・ゆったりと宿泊・滞在でき(狭いビジネスホテルの一室ではなく)、やろうと思えばその部屋に籠って仕事ができる(広さと長時間籠れる環境とネット設備など)施設があり、利用できること

・何か自分の仕事と絡めた活動がその地域で併せてできること(今回、富岡西高校に訪問して先生方と来年度の活用の打ち合わせをじっくりできました)

勝浦町はこれらを満たしていたので、コロナ状況で2度ほど延期したものの、年度末ギリギリで実現できました。

山間部なので、外食できる選択肢はかなり限られていましたが、今回宿泊した「ふれあいの里さかもと(https://fureainosato.net/)」は、22年前に廃校となった小学校の校舎をリノベーションして、宿泊施設として運営しており、地元のおばあちゃんたちが朝夕と食事を作って提供してくれるという有難い環境がありました。昼は道の駅で適当に地元のものを買って事足りました。

写真2

画像2

Wifiも完璧で、全く問題になりませんでした。他の宿泊客は全てお遍路さんのお年寄りばかりで、私以外には常に3~4組いた感じでしょうか(皆さん一泊で去っていかれましたが)。


【ワーケーションとしての環境】

ワーケーションの一部である「バケーション」部分について、恐らく人によってイメージや期待される内容が違うのではないでしょうか。特に、多くの日本人にとっては”パッケージツアー”のように、「せっかくいつもと違うところに来たのだから、そこでしか体験できない(見られない)ものをやりたい(見たい)」となるのかもしれません。

その思いに応えるために、全国の自治体などでは「体験ツアーや観光ツアー」などをオプションに豊富に備え、都市部からワーケーションに来た人々をここぞとばかりにもてなすケースを多く耳にします。

ただ、私の場合はそれは当てはまりません。

私にとってのバケーションは「誰にも邪魔されず、しずかにゆっくりと内省できる環境に身を置くこと」なのです。そのため「XX時からXX時まではXX体験ツアーが待っています」というところには敢えて行きません。

その意味で、今回「完全放置」されていたワーケーションは完璧でした。いい大人なので、自分で興味がある場所があれば勝手に行きますし、さらに行動の時間帯を指定されるのも、かえって制約が生まれてしまい私が求めるバケーションにはなりません。

その意味で「ワーケーション」を行う場所として、決して”観光名所”がある場所である必要はない、というのが私の結論です(これ重要です)。

今回、勝浦町の担当者の方にアテンド頂いた唯一の場所は、勝浦町が運営するシェアオフィスである「かんきつテラス徳島」という施設(https://kfriends.info/kankitsu-terrace)です。

写真5

かつての研究所施設を引き継ぎ、研修やオフィスとして使える立派な施設です。前面に山の景色が広がる高台にあります。ある意味「ちょっと通りかかって気軽に使う」というよりも「目的をもってわざわざそこへ行って」使う場所にはなります。(実際、私が使った半日も他には誰もいませんでした)

一人静かに仕事するには最高の環境で、実際に仕事に没頭することができます。

その際ふと気が付きました・・・・

集中して仕事がはかどっているとき、実は目の前の景色など見ることはなく、”仕事のパフォーマンス”に本当に重要なのは壮大な景色ではなく、快適なオフィス環境(疲れない机や椅子、ネット接続や温度など)なのだと。

これは以前の記事にも書きましたが、ワーケーションに「仕事のパフォーマンス最大化」を求めることは違うのかもしれません。パフォーマンスを一部犠牲にしても、楽しむ要素を組み込みたいという前提でやるものと考えるとしっくりきます。

私は今回、いつもと違った環境で一人静かに、でも仕事のパフォーマンスはできるだけ落とさずに滞在を楽しみたい、という目的で勝浦町を選びました。その意味で、今回の勝浦町での滞在はかなり満点に近く目的は達成できたと思っています。

敢えて課題を挙げれば、宿泊した部屋は、和室の宿泊施設としては申し分ないものの、そこで「仕事をする」ことは前提とされておらず(ふつうの和室の客室なので当たり前ですが)、宿泊施設に籠って仕事をするとなると限界があります。実際やりましたが、正座して客室テーブルで仕事できるのは2~3時間が限界です。それ以上は肉体的な限界と集中力の持続の問題が出てきます。そんな中で無理して仕事をすると「何のためにここで仕事しているのか」という疑問に苛まれると思います。

となると、やはり野外で岩やベンチなどに座り、膝の上にノートPC置きながら仕事するなどというのは10分程度(簡単なメール返信する程度)が限界だろうと思います(そういうシチュエーションのワーケーション推進写真などを目にすることがありますが、注意しながら見ないといけないと思います)。


最も重要なのは、「ワーケーション」や「他拠点でのリモートワーク」に自分が何を求めるのか、何を達成したいのか、を最初に明確することではないでしょうか。その上で、その目的に対してその場所や環境でどこまで実現できるのか、どこまで許容できるのかを吟味すると良いでしょう。

現在はまだ、ユーザーの多様な需要や期待を詳しく調査、吟味した上でのワーケーション環境が構築されているというよりも、受け入れ側(自治体など)が思う「こういうのが恐らく使う人にとって良いよね」という環境整備が先行しているような気もします(あくまで私の主観です)。これら両者の落しどころがより明確になると、より良い結果がもっと生まれてくるのではないでしょうか。


【地域創生の視点から】

ワーケーションの利用者として、また地方創生について自治体をサポートしている身として、こういったワーケーションなどの取り組みの先のゴールは何か考えることが多いです。

もちろん最終的には「移住してほしい」というゴールがあると思いますが、「ワーケーションをする=移住する」という直接的な図式は成立しにくいと思います。

ワーケーションなどにより、その地を知る人が増え、交流人口(関係人口)と呼ばれるものが一時的に増えることはあるでしょう。そして、その次は?

二拠点生活という選択肢も入ってくるかもしれません。少し中長期的に人の出入りが活発になるでしょうか。また企業レベルではリモートオフィスを構築する判断が下されるかもしれません。そうすれば確かに一部移住者は出てきますね。

自治体の視点からは最終的に住民票を移す完全移住でないと、人口のカウントも住民税も増えません。ワーケーションからそこまでのステップは何段階もあります。どこをゴールとするべきなのか、私にもよくわかりません。

となると「ワーケーションを行った結果は何をどう評価することで可能?」

という根本的な問いの答えを出すのが難しいのです。成果を直接評価できないことにどこまで投資すべきか。その投資と現在既に住んでいる住民サービスへの更なる投資とどちらを優先すべきか、など悩ましい点は多いだろうなと思います。

これらの地方自治の問題とは別に、一個人としては住む場所や働く場所の選択肢が増えること、つまりこれまでのように必ずしも長期的な転居を伴わずに、短中期的にも様々な場所で生活、業務ができることは歓迎すべき素晴らしいことだと思います。

また、新潟県湯沢町に1ヶ月間滞在した際にも強く思いましたが、長く滞在するほどその地に対する「愛着」が深まります。これは実際に滞在し、体験しないと得難いものだと思います。私はここに大きなヒントがあるように感じています。

その個人の多様性と地方自治体の課題解決の接点をうまく見出せると良いですね。

写真6


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?