片耳難聴の詩:モノラルの世界

………

「.......かな？」

「ごめん、もう一度言ってくれる？」

「ちゃんと聞いてよ！」

………

「…」

「ごめん、聞こえなかった。静かな場所でもう一度話してくれたら…」

「もういいよ」

……

体感したこともない　バイノーラルの世界

うらやましくてまぶしい　モノラルの世界はモノクロ

味わい深く　すこし物寂しい

前方を見ながら　何度も顔の向きを変える

キッと結ばれた唇　ホッと息をつく

景色を気をとられ　また横を向く

なめらかに動いているくちびる

そこに意思を読み取る　言葉が聞こえなければ

目の奥にある想いを読みとる

伝統工芸品を作る職人のように　自分の感覚を信じるだけ

それでも少しあいまいに縦に振る
　
モノラルの世界で「フリ」をしている

言葉が見えたら　救われる