吉川 香織

切なくて甘酸っぱい作品が多めの「瞬間の永遠を描く」アマチュア現代詩人です。

吉川 香織

切なくて甘酸っぱい作品が多めの「瞬間の永遠を描く」アマチュア現代詩人です。

マガジン

  • 片耳が聞こえない詩人

    片耳が聞こえないからこそ書ける世界を摸索中。

  • Moments

    詩から着想を得て、1着づつデザインを制作する、現代詩人の吉川香織とオーダーメイドドレスブランドとのコラボ作品集

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はじめに 「瞬間と瞬間の間にある長い刹那」

長らく詩を書いていると一瞬の捉え方が変わってくる。 本格的に詩をはじめた頃、書きたい瞬間が訪れると絶対に逃すものかと、その瞬間に非常に集中する必要があった。 常に肩肘を張って、書くべき「瞬間」を探すことに意気込んでいた気がする。 絶対に描きたい瞬間を書くために、何度も繰り返し記憶の引き出しを開けにいく。そうこうしていると描きたい情景の輪郭がはっきりと目の前に見えるようになってくる。 そこから単語を選び、それらしい詩を紡ぎだし、並び替えて、また俯瞰して、消したり足したりし

    • 明日

      これからのことなんだけど 君が降らせた雨はどこにいくの? 水たまりに空は映らない 傘をさして忘れようとする 紫陽花の花が泣いている 雨雲よりも月を見たいから 止まない雨を待っている ---------------------------------------------- この作品から得た着想をもとにオーダーメイドドレスブランドVivat Veritas(ビバ ベリタス)さんがシルク着物リメイクタイダイミディ丈ワンピースを創り出してくださいました。

      • 衣替え

        カーテンを開けたまま眠りたい 差し込む朝日に反射するまぶた ピクチャーレールにかけた歌が色あせてる スポットライトが額に入った絵を照らす 小さなスピーカーからあの絵の歌を流す 額に入った絵の影にある空の花瓶 打ちっぱなしの壁がもの悲しげにたたずむ そういうことはわすれたほうがいい ユーカリの香りで歌詞をかき消す あんまり考えすぎるのはやめたほうがいい クローゼットをひっくり返す 着てる全てを脱ぎ捨てて こんな気分を変えてくれる大胆さ コンクリートの壁

        • 片耳難聴の詩:西に咲く花

          西の方に咲くというその花 なんとなく昔に見たことがあるような 聞こえた言葉をわざと組み立てる 気配に振り向く 聞こえることは見ないこと 少しだけ辛くなる 耳を塞いで覆ってしまう 西の方に流れる雲に見る なんとなく気がそぞろになるような 聞こえない言葉を少しぼやかす 消えた気配を探す 聞こえないことは見ること 少しだけ嬉しくなる 耳を塞いで覆ってしまう 西の方に歩いて行く誰かの姿 なんとなく明日には忘れているような 言葉が見えてきて離れていく 気配を感じて波打つ 音の感触を

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        はじめに 「瞬間と瞬間の間にある長い刹那」

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          片耳難聴の詩:きみの手

          背筋を伸ばし  まっすぐと歩いてゆく きみの手をさがしている 知らないうちに忍びよる影 あぶないよ 君の手が引っ張ってくれる 怖くなるのは気配がないとき いつも影に追われている 左側から迫ってくる それでも前を向かなければ 立ち止まることは選ばない きみの手が導いてくれる 道なき道を2人で歩く この先の景色を描こう

          片耳難聴の詩:きみの手

          片耳難聴の詩:モノラルの世界

          ……… 「.......かな?」 「ごめん、もう一度言ってくれる?」 「ちゃんと聞いてよ!」 ……… 「…」 「ごめん、聞こえなかった。静かな場所でもう一度話してくれたら…」 「もういいよ」 …… 体感したこともない バイノーラルの世界 うらやましくてまぶしい モノラルの世界はモノクロ 味わい深く すこし物寂しい 前方を見ながら 何度も顔の向きを変える キッと結ばれた唇 ホッと息をつく 景色を気をとられ また横を向く なめらかに動いているくちびる

          片耳難聴の詩:モノラルの世界

          片耳難聴の詩人:はじめに 「音と唇と仕草」

          一人ひとり聞こえている音や見えている世界は、全く違うという見逃してしまいがちな現実を紡いでいきたい。 わたしは生まれてこのかた、左耳からの音を聞いたことがありません。 片側が聞こえないと気配に気づけず、背後からくる車や自転車の気配に気づけず危ない思いをしたり、大人数での会話になると聞き取れないなど、挙げたらキリがないほど、不便なことがあります。 ですが、この「片耳難聴の詩人」シリーズでは、片耳難聴だからこそ聞こえ、見える世界の表現に焦点をあてていきたいと思います。 聞

          片耳難聴の詩人:はじめに 「音と唇と仕草」

          片耳難聴の詩:音のかたまり

          押し寄せてくるかたまり 両足で立って身構える スルスルと動く唇 ただひたすらに研ぎ澄ます 音の強弱にはあなただけのリズム 気づいていないでしょ? 心の中でクスリと微笑む 誰しもが見逃す一瞬の表情 この脳裏に刻んでいく 聴こえていること 見えていること 見逃していること その全てがあわさると 交響曲の楽譜のように 弾けば ひとつの音になっている 音のかたまりを紐解けば あなたの優しい笑顔が見えてくる わたしだけが見えている

          片耳難聴の詩:音のかたまり

          Fuzzy Cloud

          3年前の今日の写真 丁寧に教えてくれるスマホの通知 ビールを片手に笑うわたし 目の中にはあの日のあなたがいる わたしはもうビールを飲まない あの日のまま わたしを止めて ううん もういいの 手を離した あの雲を眺める 今すぐそこにある雲 もくもくした雲 ふわふわしてる 雲をつかみたいとは思わない 雲を眺めて 空を見つめて スマホを置いて キーボードに指を置きなおして カタカタと叩いていく そよそよと雲の中を泳いでいく あの日と同じように笑いながら この作

          秋川

          きみが幸せになったらいいな もっと もっと その手の中にある 小さなきらめき 息吹を大切にして 新緑の季節 瞬く間に過ぎていく ソファに腰掛けて 部屋の窓から眺めるときのように だだちゃ豆を食べながら 机の下で足を絡ませて微笑みあった あの夜更けをふと思い出す わたしも幸せになったらいいな もっと もっと この手の中にある粒 すぐに飛んでいってしまう 手ですくった砂つぶ 指の間をあっという間にすり抜けていく 透明な川辺に腰掛けながら 水をかけあって大笑いしたこと

          片耳難聴の詩:片側の向こう側

          ひとつひとつの角 指先で触りながら 口に出して話す 君の声が聞こえない こちら側の耳の近くに来て 君は壁の向こういるの? 聞こえない 聞きたい 手を重ねて置いて 安心させて 動く口元 よく見せて 鼓膜を打ってるはずなのに 君の声が聞こえない 反対側から流れ込んでくる 気配も分からないよ 首をひねって声を聞く 耳にばかり気を取られて おざなりになってしまう 心から打ちたいよ 相槌を 困ったように笑ってる いつも 首をひねって 聞きかえす あ

          片耳難聴の詩:片側の向こう側

          夜風

          夜風は音もなく吹いている あの日路駐した道は街灯だけが頼り お気に入りのスニーカーで散歩する 手の中が光る あの人のことを守ると言ったきみ 夜風に抱かれてあのベンチにおさまりたい 丘を登ったら街を見渡せる 夜風になってどこかに消えてしまいたい 手の中がまた光る きみからの返事はとても淡白 夢見心地にしてくれる夜風 それでも少しだけ朝日が恋しいな 昼に空高くのぼっている月をみたいな こんな気分にぴったりな曲を選ぶ スカートの裾をもって軽く踊る スニ

          ラベンダー

          濃いピンク色の木の下 髪が顔にかかってしまう その下にある表情を見たいな 突然に訪れた春の嵐 スプリングコートの裾が揺れる 袖からのぞく細い腕 小さな子供が小枝を持っている 自ら振る小枝と一緒になって 前に後ろに右に左に 階段を降りるときすこし足がすくむ いま、目の前に春がきているのに 一歩を踏み出せなくなってしまったね 大丈夫、せーので歩いていくよ この作品から得た着想をもとにオーダーメイドドレスブランドVivat Veritas(ビバ ベリタス)さんがブラウ

          ラベンダー