初めての字をきちんと書く

初めての字をきちんと書く

合氣道の稽古で力を抜けとはよくいわれるけれど、初めての技は、まず手順をおぼえるのが先決。知らない字を、初めて書く感じ。

まずは、大雑把に憶える。どちらの手を持つのか持たせるのか、足はどう動かすのか、相手の胴体に手が届く間合いに入ったらどこに手をかけ、相手が崩れたら自分はどのように動いて投げたり抑えたりという動作に持っていくか。

この時点では、ある程度力づくでも仕方ないし、リズムがずれたり体軸がぶれたりしても、あえて目をつぶってひたすら手順を体に憶えさせる。
パートナーもそのつもりで、
 「あまり効果的に崩せてないな」
と感じても、まずは最後まで手順通り動いてもらう。

稽古を初めて半年以内のメンバーには、どうしてもこのような段階があって、パートナーは新たな技術の習得、という点では物足りない稽古になってしまう。ただ、合氣道慣れしてない相手でも効くかどうかを確認する貴重な機会でもあるし、受けを取りながら相手を誘導する技術というものもあって(←別の稿で触れることもあると思う)、とらえ方一つで充実した稽古になる。

さて、大体手順をおぼえたとする。習字で言えば、だれが読んでもなんとなくその字に見える、というあたり。そこで、何を学ぶか。看取りが易しい順に、

  足捌き、手の返し方、腰を使うタイミング

であろうと思う。いずれも、これをきちんと習得しないと技の有効性が損なわれ、ただ「手順をなぞる」だけのものになってしまう。
 相手の死角に飛び込みつつ、相手の重心をコントロールできる足の位置、向きに合わせるとか、

 相手が手首を持った瞬間に自分の掌がどちらを向いているか、とか、

 崩し・投げ・抑えの時点で骨盤をどのような角度に向けているか、

といったポイント。習字で言えばいわゆる「とめはね」。書き損じの紙を使って何度も何度も繰り返し筆遣いを練習するように、一人稽古で何度も何度も繰り返し練習し、実際にパートナーに対したときに有効かどうかを試す、といった稽古が有効なのが、この段階。
なお、この3つのポイントは、手順の説明では言葉では説明されないことが多い。説明されなくても、自発的に「看取る」のが大事で、この「看取り」の技術を磨くのも、この段階。

この時点でも、まだ力は抜けない。手順を記憶したように、体がコツを憶えこむまで、多少堅い動きであっても繰り返し稽古が大事になる。時には「とめはね」が立派すぎて、相手が崩れ切ってしまって、技が最後まで続けられないこともあるのがこの段階。

そのあと、調整。崩そうと思えばもっと崩せるけど、あえてそこまでやらず、崩れ切らない相手に対して最後に投げ・抑えでとどめを刺す、という一連の動作が完結する。この段階で初めて「ちょうどいい」力加減になっていく。

一つの技の中には、実はいろんなコツを載せることができる。コツを知ってると、ついつい人に教えたくなるものなのだけど、相手の段階を考えて、あまりごちゃごちゃ詰め込まないほうがいい事もある。

いっぺんに全部、は、ムリ。なので、初めてやるときに話すポイントは厳選する。厳選したポイントも、大抵全部は覚えられないので、なるべく日をおかずに反復稽古するのが肝要。

そのうえで、力加減までできるところまで稽古できてきたなぁ、という相手に対して、新たなコツを紹介する、というのが理想なのだけども。うーむ。

コツって結構面白いので、一つの技の完成を待たずに(道場経営的には、稽古の飽きがこないように)スパイスとして紹介するのも大事なんだよなぁ。
ま、スパイスはスパイス。主食ではないので、たまーに加えることにして、基本は上記のような習得過程になるのかな、と考える次第。

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