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5月2日、編集者日誌:企画持ち込み

むかしわたしは役者の仕事をしていた。小さいころはただ言われた通りオーディションに行く毎日だったけど、大きくなってプロダクションに入ってからは、いわゆる「営業」というのをさせられた。

自分のプロフィール用紙を持ってマネージャーとテレビ局やらに行き、「お願いします!」みたいなことを言う。そのほかにマネージャーや事務所のつきあいで「わたしを見てくれる人」がつかまると、その人に自分をアピールする時間がもらえた。

自分を売るって相当つらい。

その場で演技を見せたり歌をうたったりするわけでもなく、ただ自分を見てもらう。別に絶世の美女でもなくハキハキと売り込めるタイプでもないのでたいした質問もされない。本来こっちからもっとアピールして話さなきゃいけないんだろうけど、わたしにそんなことができる勇気もなく、どんな役者になりたいのとかいう簡単なことさえ答えに詰まっていた。

かわいげがあった方じゃなく、ただ突っ立っていたわたしに、だいたいは「フーン」という興味なさそうな顔を向け、終わり。もう少し押さないと!とマネージャーに呆れられた。

その点!
企画の持ち込みってなんて楽なのだろうと思う。

まず、見てもらえるものがある。企画がダメでも自分が否定されているわけではないし、ダメな部分を考え直してふたたび持っていくことができる。持ち込み企画がいまいちでも、「今これやってるんだけど手伝ってもらえる?」みたいにお仕事をいただくこともあるし、何よりひとりで悶々と企画を練っているより、人の意見が聞けて楽しい!

もちろんまだ若いころは、「ふーん、この企画は無理だけど」とかあしらわれることもあったし、「で?何が作りたいの?」みたいなこと聞かれてしどろもどろになることもあったけど、それもどれも自分が否定されているわけじゃない。

自分が商品だったころは、自分がダメだということを直視しなくてはならなかったし、傷つけられることばかりで、でもダメだったからって簡単に変えられるものでもなく、メンタル的にはぎりぎりだったように思う。

だからわたしは持ち込みがわりと好き。自分が考えたことを話すのも好きだし、それに意見してもらえる機会はとても貴重。

この間もTwitterでご連絡いただいた版元さんにお時間をもらってお話ししてきたんだけど、楽しかったなあ…。

持ち込みって、書面に落としたものを見てもらうこともある…というかそれが一般的かもしれないけど、習ったことがないので正解は知らない(書面なくしてアポ取るなんて失礼!ということもあるかもしれない)。

わたしの場合は、頭の中に20くらいは企画があり、版元さんと話すなかで「この人にこれを話したいな」と思う企画をお話しする。

興味を持っていただけたら、後日書面にしてお送りし、担当編集のOKがもらえると社内の編集企画会議にかけてもらえる。

担当さんがおもしろいといくら思っても、会議で落ちることはザラだし、問題点を持ち帰ってきていただいて改めた企画を再提出することもあるし、別の版元さんに落ちた企画を出すこともある(と思う。これはやったことないけど)。

というわけで、今日は先日興味を持っていただけた企画を書面にまとめている。書面にするとき、どこまで具体的にするかは人によるけれど、わたしはできる限り具体的にする。別に変わってもいい。ただ、自分が考えていることを100%紙に落とさないと、ここからは紙だけが勝負に出かけていくので後悔したくない。

とはいえ、どんなに書いてもA4に3枚ほど。著者のプロフィールや企画内容、構成案、中身のサンプルなどなどである。

今日は先日の本も校了してすっきりした気分。新しいところに向かわなければ!

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