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6歳が、コロナになった。

6歳が、コロナになった。

でもそんなことより、コロナという言葉の恐ろしさとわたしの無頓着さが6歳を傷つけたことのほうが、ずっと怖いことだった。

コロナだとわかったあと、家に帰ってきてしばらくしてから、布団にいた6歳が急にぽろぽろと涙を流して泣いた。

「…もっとこれから悪くなるかもちれない」

きっと陽性だと知った瞬間から絶望していたのだと思う。毎日何人の感染者、毎日何人の死亡者、毎日何人の入院。テレビはそんなにつけていないけれど、耳に入らないわけじゃないそういう言葉が急に自分ごとになったとしたら、泣いても泣いても怖いだろうと思う。

わたしはといえば、ちいさい子のコロナを超楽観視していて、すぐ治るだろうとしか思っていなかった。大丈夫大丈夫すぐ治るよと言いながら自分はマスクをつけ、消毒をした。

どんな気持ちだったろう、そんなわたしを見て。

今までにない高い熱が出て、はじめて解熱剤を飲ませたけれど熱は翌朝になっても下がらず、ようやくわたしは少し慌てた。

インフルエンザとおなじ、風邪とおなじ、熱はすぐ下がる、後遺症もいつかは治る…それはぜんぶ誰かのことで、うちの6歳のことじゃない。

不安だよね、コロナだもんね、ママもお姉ちゃんもなったことないんだもんね、と、やっとわたしは6歳のほうをちゃんと向いて話した。

ママやお姉ちゃんがマスクをするのも、みんなで一緒にごはん食べないのも、みんながいちばん早く外に出られるようにするためなんだよ。なんにも君のせいではないんだよ。

…そうは説明したものの家庭内での対策は思った以上に大変で、中途半端で。無闇にやった消毒と拭き掃除で、手はガサガサ部屋はピカピカ。

途中からは、もうわたしたちの免疫力に賭けるしかないね!と、からだにいいと思われるもの、デトックスになること、をひたすらやりました。

黙食、というものも職場以外ではじめてやり…、わかるけど、わかるけど正直に言うと、これ毎食やっていたら心が壊れるなという予感がして、狭い部屋の中ながらも場所を分け、ちょっと遠くで話しながら食べることにした。

でも、子どもたちは3回のうちの1回は、こうして黙って食べているんだよね…。なんか今さら胸が張り裂けそう。

実は6歳が泣いたとき、立ち尽くしていたわたしを押して、14歳が6歳をぎゅっと抱きしめたんだよね。

わたしは「あっ」て言っちゃったの。そこからは呑み込めたけど、「あっ」のあとは「うつっちゃうよ」だったのだと思う。言わなかったけど14歳には伝わって、14歳は振り向いて、「別にいい」と怒って言った。

わたしは人として最低だ…と思ったよ。感染しないよう気にするあまり、もしかしたらわたしは外でもこれまでにも失礼なことをいっぱいしてきたかもしれないと思い至った。

だからってうつってもいいってことじゃないけど、でも、なんかそこにばかり頭がいくことで、失ってはならないものを失いそうだった。

いや、だからってホントうつっていいわけじゃないんだけどさ…(しつこい)。

そして、家を出られなくなってからというもの、毎日毎日誰かが玄関に贈り物をしてくれました。

実は、我が家にコロナがきたら周りにはできたら言おう、とわたしは決めていて(子どもたちは、えー!なんで!と言ったけど、最終的には理解してくれた)。

だって。

なんにも悪くないもん。

謝ることじゃないし、誰が悪いわけじゃないし、なっちゃったものはしょうがない。

(でも、言えない立場や状況の人がいることも知っているから、みんなも言おうぜってことではないし、言うことが正義だとも思っていません)

だから周りにコロナだーって言った結果、もうほんとにあらゆるものが届きまして…。6歳のもの、14歳のもの、わたしのもの、みんなで楽しめるもの、おいしいもの、美しいもの、笑えるもの、遠くの香りを感じるもの、遊べるもの…、箱や袋を開ける楽しみを毎日味わわせてもらいました。

ギフトカード送ってくれたり、遠くから小包を送ってくれたり、言葉の贈り物もあった。

こんなふうにわざわざ人にものを贈るなんて、なかなかできないよ。わたしはいつも「あ、これあげたいな」と思っても、その半分は勇気がなくてやめてしまう。こんなのほしいかな…いらないよね…って思っちゃうんだよね(自己肯定感低)。

なのにわたしの友だちはなんでみんなこんなことをさらりとできる人ばかりなのか。しかもわたしは元気なのに。ひとつひとつがとっても嬉しくて、早くみんなの顔が見たい。

そしてご迷惑をおかけしたお仕事がいくつかあったのだけれど、すべて調整していただき、ひとつも失うことがなかった。どの方も嫌な顔ひとつせず変更してくれて…。もうホント、これからもっとがんばりますって思ったよ。

そんなわけで、ひとまず隔離生活を終えた我が家でした。長かった!

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