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【新・資本主義をチートする・番外編】テレアポ営業必勝法を読んで驚いた件


 「資本主義をチートする」「新・資本主義をチートする」という連載を、ここのところ連続して書いている途中ですが、なかなかビックリ驚きの記事を見つけてしまったので、ちょうどよい機会ですから、その話を題材に一緒に考えてみたいと思います。


 THE21さんに載っていたこの記事。電話営業に関するものですが、ここからどんなことが読み取れるでしょうか。


電話営業で売れる人、売れない人の決定的な違いとは? | THE21オンライン https://shuchi.php.co.jp/the21/detail/7668


 話の中身は、テレワークならぬ「テレホンワーク」で営業して契約を取ってくるというものですが、みなさんのご自宅や会社でも

「電話回線切り替えませんか?」

などの営業電話がやたらかかってくるので困っている方がおられると思います。まさに、それをかけてくる人たちのお話ですね。

 記事では、営業電話をかけるときに、契約の確率が上がるための工夫について書かれており、それはそれで役に立つとは思いますが、驚くのはその営業技法でした。

「資料の送付や、訪問を求められても、うちではそういうことをしていない」

わあお!見込み客なのに、電話口だけで契約クロージングまでもっていこうとするのか!というガクブルなお話をバラしてくださってありがとう。

 資料や訪問の必要はない、というところまで口だけで説明してくれるそうですから、小心者の私なんぞは、口車に乗せられそうで恐怖します。こわくて話を聞く前に電話を切ってしまいたくなります。


 そして、「他社と比べたいと言われても、うちのほうがオトクだから早く決めて!という意味のことを言います」ということらしいので、サンドウィッチマンの万歳ではないですが、ちょっと何言ってるかわかんない気もします。


 この記事、このインタビューそもそも本当に載せてよかったのか?という気がしてきてTHE21さんを心配しますが、これらの電話営業のキモは

「顧客の都合・気持ちをほとんど考えていない」

というところではないでしょうか。

 資料が読みたくても、無理。訪問を求めても、ダメ。他社と比較はさせたくない。検討する時間を見計らって再度電話。

・・・考えただけでも、電話営業が嫌われる理由のオンパレードで、これが記事になることが驚きでした。


 肝心な、電話件数に対しての成約率の話では、ベテランでも30件に1件とのこと。だったら、入社したての初心者なら100件かけても大丈夫!一件も取れないということなのでしょうか。

 いえいえ、『優秀な人でも、こんな確率なんだ』というのが正しい成約率だそうですから、ということは

「ベテランじゃなくても、確率が同じなら誰でもいいんじゃねえか」

ということを自ら明かしているようなもので、ほんまにこの記事、大丈夫か?と感じます。

 だからテレアポ営業は、人材の入れ替わりが激しいんですね・・・。 


 この一連の話を読んで、「なぜ電話営業が嫌われるか」の理由がすべておのずと判明すると思います。それは、本来の面談営業では教科書どおりの鉄則であるはずの「顧客の課題を拾い出す」のとは正反対のことが行われているからなのです。

 我々面談営業を行うビジネスマンは、顧客の課題を掴むことで、「あえて売らない」という選択肢や、「あえて他社製品をすすめる」ということもできます。そうした中で顧客の信頼を勝ち得ることができるのに対して、電話営業は、

「確率論を上げるには」

ということに終始していることが見え隠れしているのですね。


 私がふだん仕事をしている取引先には、「元訪問販売の営業マン」をしていた猛者がいて、彼からどのようにとある地域に落下傘爆撃のようにワゴン車から落とされて、日がなピンポンさせられるかについてレクチャーを受けたことがあります。

 彼も言っていますが、こうした販売手法は、最終的には確率です。ということは、100件に1件か、30件に1件か知りませんが、その確率で成約した顧客には、商材が

「のこりの99件分の不成約コストが乗せられた価格で販売される」

ということしかありえません。そうしないと、電話でも訪問でも、その営業マンの給与が出ないからです。

 こうしたセンミツ営業については「資本主義をチートする」でもさんざんお話しましたが、

ここから大事なことを言います。

 どうせ確率論なのだったら疲弊し、心理的に参ってしまう人間の労働者が行わなくても、AIにやらせておいても同じ確率だ

ということです。

 だから実際、ネット広告では、なにか検索するたびに、似たような商品が見込み客として自動で表示されるわけで、どう考えても電話でアプローチするより、自動で表示させて「買いたい」と思わせるほうが手っ取り早いし、払う給料も少ないし、確率も高いし、第一「営業電話は、いらん!」と思われなくて済みます。

( いや、もうグーグルさんのことですから、人間よりもはるかに高い成約率をたたき出すべく、アルゴリズムは日々進化しているはずです。)

 誰も、テレビCMはいらんのじゃ!とは思わないし、ネットバナーはいらんのじゃ!とは思いません。思っていても、営業電話ほど嫌いにはならないのは、理由があります。

 それは、CMもバナー広告も、「こちらの領域に必要以上に侵入しない」からです。

 テレビCMが映っていても無視できます。バナーがあってもクリックしないものは山ほどあります。それは相手が人間ではないし、ただの機械表示だと知っているからです。

 では、電話営業にはなぜ「嫌悪」の感情が生じるのでしょうか。

 それは、「人間が自分の領域に侵入してきて、時間を奪う」からに他なりません。そして、電話営業が効果を発揮する原因もまさにそこで、

「人間同士だから、断りづらい」

という心のスキマをついて、取引が成立するからです。

 ネット時代になり、どんどんこうした手法・技法は嫌われるようになるでしょう。ただでさえ、人間同士のコミュニケーションが難しい時代になり、「できればコミュニケーションなしで取引したい」という気持ちが増えてこそ、ネット通販が爆発的人気になっているわけで、電話営業はそれに逆行していると感じます。


 さあ、未来に電話営業が残っているのか、それとも過去の「昭和あるある」になってしまうのか、楽しみに動向を見てゆきたいと思います。




 









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