【帰ってきた・資本主義をチートする01】 大事なのは原価率ではなく、販売価格だ。
とあるカレー料理店が「破産」申請をした、というニュースが挙がっていて、その会社の名称がかなり興味深かったのでネットではちょっとしたツッコミが沸き起こっていた。
カレー料理店を経営する株式会社原価率研究所(新潟市中央区)が破産手続開始
その名も「原価率研究所」という。
当然、原価率を研究していたのに破産したのだから
「原価率が研究できていない!」
というツッコミが溢れることになるのだが、もともとは、創業者が
「格安で国民食を食べてほしい」
という願いから事業をスタートさせたという。
ところが、途中で「人件費の未払い」が起きたり、「事業の身売り」が起こったり、散々なことになっていて、結局倒産したということらしい。
長年の研究の結果、正解がわかったのは
「200円カレーでは、事業は持ちこたえない」
という真実であった。
ツイッターに面白い言説が挙がっていて、これも興味深かった。それは
「原価率研究所を『原価率が研究できていない』と揶揄する意見もあるが、創業者の理念を考えれば、そんなことは言えない」
というようなものだ。創業者の理念が善であれば、従業員に未払いを生じさせてはいけないのだが、
「仕事や商売というのは、理念だけでつき進めるものではない」
ということもまた真実なのであろう。
(創業者は福島生まれで、東北の震災後に創業したという)
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さて、資本主義をチートする、というテーマで言えば、企業を運営するためには
「原価率も大切だが、価格×販売量=総額のほうが重要だ」
ということになる。
200円の商品は、100人来客があって売上2万円である。総額2万円のうち、原価率がいくらなら適正なのかは知らないが、一日の売上が2万円しかないのだったら先は見えている。
一般的な飲食店の原価率は30%というが、仮に15%しか原価率がなかったとしても、「材料費3000円」はかかってしまう。
2万円から3000円引けば、残りは1.7万円である。
店舗の借り賃が月7万円としよう(激安物件だ)、一日あたり2400円かかる。
残りは1.46万円だ。光熱費が月2万円かかるとしよう(安いな)、一日あたり700円くらいだ。
これで残りは1.39万円である。
バイトを雇わず、店長一人で切り盛りすれば、1.39×30日(年中無休)であり、
月41万円!!!
が残る。
いける!平均的サラリーマンくらいは、いける!
と思ってしまう人がいるなら、それは研究でもなんでもなく、ただの修行である。
毎日100人を休みなく相手にして、40万円手残りがあっても、たぶん2ヶ月くらいで体調を崩すか過労死するだろう。
そこで、アルバイトを雇う。
時給950円×8時間=7600円/日だ。
仮に店長の半分の仕事量を手伝ってもらうとすれば、月15日くらいの出勤としよう。7600×15=11.4万円である。
残りは、30.3万円だ。
・・・いける!
とまあ、こんな感じで運営されていたのだろうなと思う。
これが原価率の「研究」だというのなら、研究しないほうがマシである。
ちなみに、うちの会社は、とある建築系資材を販売、配送しているのだが、一回トラックを出動させれば、30万円の売上がある。
単純計算で30万×30日=900万円だ。
(実際にはトラックが複数台あったり、ボウズの日があったり、単価の異なるものも運ぶのでこの通りにはならないが)
そして、利益率が20%としても、180万円/月の手残りがあるから、半分を会社経費としても月収30万円の社員を3人雇えることになる。(あくまでも概算だ)
100人に200円のカレーを毎日売ることが、いかに修行以外の何ものでもないかがわかるだろう。
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販売総額がなぜ大切かというと、手に入れられた金額以下でしか、従業員や企業に(店長そのものに対しても)還元できないからである。
うちのように一回の配送で30万とりあえず入ってくれば、突然ミサイルが飛んできて事業が続けられなくなっても、1人分・一ヶ月分の給料は支払える。
ところが、一日の売上が2万円しかなければ、トラックが店に突っ込んできたら、「ごめん、1万7千円しか残ってないわ」ということになる。給料未払いの発生である。
つまり、安定した事業の運営や、従業員のためにも「適正額で稼ぐ」ということは、必須なのである。
ぶっちゃけ、建築業界は全般に不況であり、うちの会社ですら、事業継続はギリギリで、ヨシイエさんは「いかに売上げ、利益を残すか」を考えている。
(一円でも安くなんてこれっぽっちも考えていない。良いものを一円でも高く売りたいものだ)
先程から「配送する」と書いているが、ガソリン代がこれだけ高騰したら、当然燃料コストが上昇していることに気づくだろう。その分をどこかで価格に転嫁しなければ、やっていけないのである。
だから、正解を言えば、ガソリンが1円上がれば、商品価格も1円上げてしかるべきなのだ!!
そうでないと、そのつけは従業員へ向いてしまうからだ。従業員を守るためには、1円でも高く売るのが正解なのである。
あなたの会社の商品が安いのであれば、あなたは『実は大事にされていない』可能性がある。本当はあなたの給料になるはずだった一円が、顧客の得になっているだけなのかもしれない。
(おしまい)
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