AI音楽生成サービス普及に必要な事

何故AI音楽生成サービスは盛り上がらないのか?

私は音楽領域のAIの研究をしていますが、いわゆる自動作曲的な事、BGMを作ったり、ましてやヒット曲を作ろうなんて試みはしていません。
興味がない、全く異なる領域と言う事もありますが、これまでできている事を代わりにやってあげる機能=自動作曲=音楽生成サービスとしてはAI音楽は一部を除きそれほどは普及しないとそもそも思っています。

何故なら

・現状音楽は余りにも供給過多
・そもそも音楽は自分で作りたいもの


つまりどちらも実は期待されていないからです。
ではAI音楽ではユーザーは何に期待しているのか?もしくはするのか?
通常ユーザーは自分の期待や不満を言語化できていません。
むしろ言語化してあげる事こそがサービス提供側の最も重要な役目です。
と言う事でユーザーのAI音楽に対する期待について、雑感を軽くまとめたのがこの記事です。
あちこち拙いままですので軽い気持ちでお読みください。

音楽は楽しいもの、苦しみや痛みではない

AIにやって欲しいと人が期待するのは、自分がやりたくない事です。
自分の代わりに誰かにやって欲しい事。
誰かに代わりにやって欲しい事とは、つまりそれを行う際に痛みや苦しみがある事です。
例えば機械的な事務仕事の繰り返しとかは、飽きます。面白くないですね。
毎日やっていると辛いわけです。
これは痛みや苦しみなので、誰かに代わりにやって欲しいと願うでしょう。
クレーム処理なんかもそうですね。
これら苦しい、痛みを伴う、やりたくない事を代わりにやってくれるなら、それは嬉しいです。
AIにやって欲しいですね。
しかし、楽しい事、自分が望んでやりたい事はどうでしょうか?
音楽を創る=自分がやりたい事です。
そして創ると言う喜びを得られるのは楽しいものです。
さて、楽しい事を誰かにやってもらいたいでしょうか?
代わりにやってもらっても、自分は喜びを得る事はできません。
楽しくないわけです。
音楽をやる理由は、楽しい以外にないはずです。(人に評価して欲しいなどは、また別の欲求です。これを混同して考えると色々矛盾します)
物凄く極端に例えれば、AIが代わりに旅行に行ってくれるサービスがあっても、それを使う人は(多分あまり)いないとでも言えば良いでしょうか。


ではどんなAI音楽は可能性があるか?

一方、

これまで実現できていない事ができる様になる=音楽体験の拡張機能



楽器演奏や作曲ができるまでに遭遇する痛みや苦しみを取る=自己実現過程の苦痛の除去機能

などのAI活用はすごく可能性があると思います。
体験を拡張させるか痛みや苦しみを取り除いてあげるか、AI音楽で伸びるのはそのどちらかでしょう。
これは音楽に限らずどんな事でもそうなのですが、、、、

例えば人の脳波の動きに従って最適な癒しの波形をインタラクティブに生成するAI音楽体験とか、作曲の勉強や楽器練習の際に苦手な部分を数値化して個人個人にパーソナライズ化された改善策を提案する音楽教育AIとか。
こう言った事が実現できたら面白いと思いませんか?
そういえば、子供の頃ギターの練習をしていて、上手い人のタッチ、力の入れ具合や指の速度と自分のはどう違うのか?感覚ではなく具体的に数値や視覚化された情報で知れたらいいのに、、、と思っていたものです。
今ならAIの力でそれを知る事ができる様になるかもしれません。
指板へのタッチを全てセンサーで取得し、問題点、改善点を数値で具体的に示せる楽器演奏教育。
さらに脳波の動きなんかも関連して何かできたら演奏教育は格段に進歩すると思います。
もちろんこれはピアノやその他の楽器でもできそうです。

手前味噌ですが、私はAI音楽生成でプログラミングを学べる音楽TECHアカデミーを運営しています。

これは直接音楽生成を目的にはしていないのでこの記事の趣旨とは少しずれてしまうと言えばそうではありますが、、、、
AIであっという間に音楽が出来上がるというこれまでにない面白さでプログラミング学習の退屈さを和らげる、体験拡張機能と、苦痛除去機能の応用です。
AI音楽生成は最初は非常に楽しいです。
1、2回はみんな驚き感動します。
ですのでこの感動が残る間に何かの機能に使えないかと考え、プログラミング学習に使うというアイディアに至りました。

なお、ここで書いた、体験拡張機能と苦痛除去機能は、どちらもこれまで実現できなかった事をAIで実現する事なので同じ説明をしているのではないかと思うかもしれませんが、ちょっと違います。
体験拡張機能は既存の音楽体験に何を加えた、または全く新しい"これまでにない"もの、一方苦痛除去機能は、既存の体験に伴っていた”これまであった”問題の解決です。
なお、拡張機能とか苦痛の除去機能とかは正式な表現ではありません。
説明のために適当につけた名称です。




AI音楽生成サービスで普及するサービスは?

ただしAI音楽生成サービスもいくつかは普及すると思います。
普及というよりは、残ると言った方が適切かもしれません。
ここでいう音楽生成サービスとは新しい音楽ジャンルを創造する様なものではなく、既存のポップミュージックを生成しようとする様なサービスです。
今の生成サービスは大体それなので特に追記説明の必要もないかと思います。

さて、AI音楽生成サービスで残るサービスは?

その生き残りのポイントは当たり前すぎますが、前述した痛みや苦しみの除去です。
人々の何の問題を解決するのか?何の痛みや苦しみをなくすのか?が明確なサービスであるかどうか、これが重要だと思います。
単に音楽を生成して提供するサービスでは存在するのは難しいでしょう。
最初に述べた通り、人の痛みや苦しみではない上、音楽を創るのは自分の楽しみだからです。
ですので、音楽関連で痛みや苦しみを伴う、、、例えば音楽を創るのではなく探す際に発生する痛みや苦しみを取り除くサービスなどとして意義を見出せれば、、、、人々に必要とされる、存在できると考えます。

動画投稿でのBGM生成サービスなどは誰でも思いつく例になりそうです。
その際投稿者が望むのは、著作権フリーの音源である事は当然として、安価である事、とクオリティとのバランスが取れているBGMを早く見つけられる事です。
おそらく現状この価格と質のバランスは人間作のBGMの方が優れています。
人の音楽は十分安価です、、、、何しろ供給過多なのですから市場原理です。
質は?、、、今の音楽の質は、アマチュアレベルでも十分高いです。
均質化はデジタル(今がデジタル時代である事に異論はないですよね)の大きな特徴です。
AI生成サービスがこのバランスを超える価値提供をするのは現状難しいと思います。

一方早さはAIがその能力を大いに発揮できる領域です。
もちろん今の動画BGM AI音楽生成サービスも、生成の早さを売りにしていますが、実は生成が早いだけでは、今の人が創る音楽BGMサービスに対し、トータルではあまりアドバンテージがありません。
何故なら、どんなに早く生成できても、動画にあった音楽を選択するために必要な時間、視聴、確認、当てはめ?、編集、色々過程はあると思いますが、、、この人力作業時間はあまり変わらないからです。
ここを縮めてあげる事がAIサービスでの提供価値になります。
AIが、そのAIたる機能を生かせば、この人力作業時間、人が痛みや苦しみと感じる望まない時間を減らす事ができます。
例えば”動画に合わせて”適切な音楽を自動で生成してくれる機能などはどうでしょうか。
もしくは既存のBGMを動画の雰囲気に合わせて自動アレンジしてくれる機能とかでも良さそうです。
海の動画は海ぽいBGM、パーティーの動画にはパーティーぽいBGM、ペット動画にはペットぽい可愛いBGM、など。効果音が自動でつけられる機能も便利そうです。
動画を投稿すると、あっという間にその動画にふさわしいBGMが早く作られ、見つかり、あっという間にBGMつき動画投稿ができる。
これが実現できたら投稿者の音楽を探す(創るではない)という苦しみや痛みは相当削減されます。
そして動画は膨大なデータ量がすでにありますし、過去の投稿動画とそのBGMとの相関を学習すれば良いのですから、特徴量をしっかり取れれば、機械学習の得意領域です。


人は痛みや苦しみがないもの、楽ができるものを特に考えず、意識せず、つい使ってしまいます。
ものの普及にはこの"意識せず"や”つい”が非常に重要なのです。


最後に

人は音楽に限らず、その目の前の商品を買っているわけではありません。
それによってもたらされる、自分の心理的なメリット、目に見えないそれを買っているわけです。

AI音楽でもそのメリットを提供できます。
可能性はとてもあります。
ただしここで述べた通り、単なる音楽生成サービスが答えではなさそうです。


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