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秘境駅に思う

仕事で作った本の話などが多かったですが
プライベートでは、紀行文やノンフィクションが好きなジャンルです。
というわけで、紀行ライターのカベルナリア吉田さんの『秘境駅で途方に暮れた』を入手。

著者さんはもともと鉄道マニアというわけではなく、沖縄や離島の本が有名なライターさんということもあり、鉄道マニアの文体とは少し違った、やや鉄道と距離のある雰囲気のタッチで書かれています。

それで秘境駅を訪れるのですが、ちゃんと鉄道を使って訪れているあたり、著者の真面目さを表しています。
車で秘境駅にやってくる観光客のマナーの悪さを苦々しく思う一方、そもそも日常利用を想定していないようなダイヤではそれも難しいということもよくわかっていて、その難しさにモヤモヤいている部分をしっかり描いているのが新鮮です。

で、この本で取り上げた一つ目の駅は、室蘭本線の小幌駅。
知る人ぞ知る、秘境駅の代名詞とも言うべき駅です。
私自身もそこまで鉄道には詳しくないのですが、この駅の名前を知っていたのは、以前『北の無人駅から』を読んでいたからです。

映画にもなった『こんな夜更けにバナナかよ』で有名な渡辺一史さんの著書で、超名著!駅を基点に、そこに関わる人たちを描き出す、骨太なノンフィクションなのですが、奇しくも一つ目の駅が、同じく小幌駅なのです。
(ただ、扱っている分量は圧倒的に渡辺さんの本の方が多いですが)

『北の無人駅から』が刊行されたのは2011年。今から12年前です。
この12年の間に、取り上げられていた5駅(+1信号場)のうち、2駅が廃止されています。
そして、両方の本で紹介された小幌駅も、この間状況に変化があった様子。JR北海道の経営が年々苦しくなる中で、保守コスト削減のために駅の廃止を地元の豊浦町に打診したところ、町は観光資源として存続を求め、必要経費を負担することで廃止は免れました。しかし、それも1年更新とのこと。今後はわかりません。

私は北海道の小樽市生まれです。
流石に小樽駅が廃止されるような事態は当面考えにくいとは思います。
しかし、小樽駅から札幌の逆方面、いわゆる「山線」は廃止が決まりました。コミュニティが縮小していく中で、鉄道路線の維持もまた、難しくなってきているのでしょう。

残念ながら、今回の『秘境駅で途方に暮れた』で取り上げられた駅のいくつかも、近いうちにその役割を終える日が来るのかもしれません。
今あるものが失われていくのは寂しくもありますが、寂しいだけでは済まされない現実もある。そうしたことを考えさせられました。


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