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カナダの大学受験

高3の長女が大学に進学する。目標はただ1つ。大学リーグに入っている水泳部のレギュラーになって泳ぐこと。彼女は高2の時点では、その夢に到達できるようなタイムは持っていなかった。ない時間を無理矢理作って、ジムに通い、筋トレに励んで、高2の終わりからどんどんタイムを伸ばしていった。後は、彼女のタイムでも泳げるチームを探して願書を出すだけ。
 
カナダでは入試がない。ネットで志望校に願書を出すだけだ。高校の成績表もネットで送る。願書には、連絡先や高校名を書くだけだ。
「本当にそれだけなの?」
と聞くと、娘に他に何があるんだ、と言うような目で見られた。
「あとは、志望の動機とか書きなさいって項目がある」
と、言うので、
「どのくらいのエッセイなの?」
と聞くと、500字以内(英単語が500個)だという。難関校は字数がもう少し多いいらしい。たったの500字! つまり、高2と高3の秋までの内申書で合格が決まる。学校の勉強さえしっかりやってさえいれば、カナダでは、どこの大学にも大抵受かる。
 
「日本では各志望校に行って、試験を受けなきゃならないんだよ」
と言うと、
「そんな! 試験のたびに5回も飛行機で1つ1つの大学に行ってたら破産しちゃうよ」
とカナダ人の娘は言った。彼女は他の州にある大学を5つ受験した。それもそうだ。カナダは広い。
 
入学は翌年の9月。出願の受付は早い大学で10月に, 遅いところは1月頃にはじまる。すでに11月頃に合格通知をもらう子もいる。
 
日本の受験と比べると実にあっけない。受験勉強も予備校もない。家庭教師を斡旋してくれる会社はあるが、奨学金をねらって、学校の成績をさらに上げようとしている生徒以外はあまり利用しない。田舎に住むカナダ人には、まとまった数の生徒が集まって、また放課後に一緒に勉強するということの意味が分からないらしい。公文(くもん)も大都市にしかない。
 
大学はほぼ全て公立で、ごくたまにクリスチャン系の私立があるが、そういう大学には神学部しかない。大学のランキングもトロント、ブリティッシュコロンビア、マギルの名門3大学を除けば、どこもどんぐりの背比べで、どこに行っても、あまり変わらない。なので、生徒同士の競争もほとんどない。
 
そういうわけだから、高3の生徒は部活もバイトも習い事も趣味もロマンティックな交際も卒業直前まで続ける。浪人もいない。「浪人中です」とは言わず「ギャップ∙イヤーを楽しんでます」とかなんとか、言っている。つまり、もう勉強はこりごりだということだ。大学に行けない、のではなく、行かないのだ。
 
ヨーロッパ系の親は、子供がどう決めても、「それでいいんじゃない」、という態度の人が多い。もちろん親がアジアからの移民の場合は全く別だが。
 
さて、うちの長女は無事に希望の水泳部、というか、大学に入れることになり、まずは一安心。部活が忙しすぎて、バイトも自炊もできないだろうから、と自分でさっさとキャンパス内の寮も決めた。
 
子供はこうやって成長して、気が付いたらもう親元を離れていく。9月から、彼女をプールに送り迎えしなくても、大量のバスタオルを洗わなくてもいいんだ。私の水泳ママとしての卒業式も近い。

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