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平屋を建てる 12週目

20240708記

7月4日、木曜日。上棟予定日である。会社を午後から半休にして現場を見に行った。見に行く前に、大工さんに差し入れをと考えて、シャトレーゼに寄ってアイスを買い、コンビニにも寄って凍らせたペットボトルの飲み物を買った。多くても10人くらい?と想像して、それぞれ買う量を決めた。今日も暑かった。ここしばらく晴れていて、屋根ができるまでは雨に降られてほしくなかったのでちょうどよかったと思うものの、現場で作業をする人にとっては過酷な労働環境だとつくづく思う。

アイスとジュースをたずさえて、現地を訪れると工務店のYさんがいた。「●●さん、お施主さん(が来ましたよ)!」と大きな声で年長の大工さんに声をかけた。コンクリートの基礎の上には柱が何本も立ち、家の骨組みが見事にできていた。周囲をぐるりと囲むように足場も組まれていた。その中で作業をしている60前後だろうか、頭というのか棟梁というのか分からないが仕切っている最年長の大工さんと、あとは40〜50代、中には20代に見える若手もいて、総勢8名で作業をしていた。みんな、とてもいい色に日焼けをしていた。真っ黒というのではない、自然な焼け方だった。こんにちは、と声をかけると、みなさん挨拶を返してくれた。とりあえず、アイスの入った箱とジュースの入った袋を日陰に置き、邪魔にならないように距離をとって現場を眺めた。写真や動画をたくさん撮った。家の高さや大きさがはっきりと具体的に見えるようになった。真横の道から見るととても長く見えるし、下の方から仰ぎ見れば平屋とは思えない大きさを感じるし、上の道路から見下ろせばこじんまりとした小さな平屋に見える。高台から池に向かってなだらかにくだっていく中腹に上下に並ぶ2区画をつないで建てているので、平屋なのに平屋っぽくない雰囲気を持つ家になった。図面や3Dイメージで見て想像していたけれど、本物をさまざまな角度から見るのとではやはり印象がまったくちがうのだった。

僕らが訪ねたのは15時すぎで、17時前には作業が終わった。作業が終わるまで休憩時間がなかったからアイスが溶けていないか心配だった。棟梁がみんなに声をかけて、一斉に手を出していた。みなさん美味しそうに食べていた。作業をしているあいだの雰囲気というかチームワークというか、みなさんとても仲がよさそうに見えた。工務店のYさんは棟梁から「りゅうちゃん」と下の名前をちゃんづけで呼ばれていた。雰囲気のいい現場で安心した。ギスギスした環境でいいものが作れるわけがないからだ。

それにしても、柱だけである。骨組みだけである。屋根には板が敷かれているわけでもない。上棟は明日に持ち越したのだろうかと疑問に思ってYさんに「上棟は明日(に延期)ですか?」と質問してしまった。いえ、これで上棟です、とのことだった。そうか、これが上棟なのか。予定どおりに進んでよかったと思いながら、人のいなくなった現場を眺める。

途中、建築家のNさんも現場にやってきた。午前中に一度、顔を出していたそうで、僕らが来るのに合わせて再び来てくれたようだ。Nさんも同じ市内で、僕らが引っ越したらご近所さんになる。先生、ここはどうします?と大工さんに呼びかけられていて、そうか、建築家は現場では先生と呼ばれるのか。新鮮だった。

Nさんと妻と3人で大工さんの帰ったあとの建物の中に入る。屋根はまだないから、柱だけだ。パルテノン神殿と妻が言った。これから屋根や壁が作り込まれていくわけだから、この神殿も神殿の中からの眺めも今日しか見ることができないのだと思った。

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