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開幕

磐田原台地に燕脂の咆哮が轟いた。

J2開幕戦で見せた新生ファジアーノ岡山のサッカーは、今季の成功を確信するには十分すぎるものだった。

櫻川ソロモンと坂本一彩の新しい2トップが躍動し、前半のうちに2得点を挙げた岡山は、後半にまたしても若い前線のユニットによって佐野航大のゴールを演出した。

岡山サポーターの期待は確信へと変わり、クラブが掲げる過去最も高い目標、「J2優勝」に対する覚悟がピッチとスタンドの間で共有されていた。

名門

ジュビロ磐田においてそのポテンシャルの高さを見せつけたのは、17歳のFW後藤啓介だった。

64分に杉本健勇との交代でピッチに立った現役高校生ルーキーは、89分、92分と立て続けにゴールを挙げ、スタジアムの空気を一変させた。

観客のメディカルトラブルなどにより試合が中断したこともあり、後半アディショナルタイムは7分と発表されていた。さらに92分の得点により、目安の7分よりも延長されることが予想されていた。

興奮の坩堝と化したYAMAHAスタジアム、相手はルーキーの連続得点で勢いを増した名門・ジュビロ磐田。岡山サポーターにとって、この残り数分は途方もなく長く感じられた。楽勝ムードから一転、敗北を予感させるのに十分な時間だった。

大物

ホームのサポーターは、この日デビューしたルーキーのハットトリックを期待していた。その期待を悠然と打ち砕いたのは、サプライズスタメンとして試合前から話題を呼んでいたGKの山田大樹だった。

96分、磐田の攻撃。伊藤槙人からのクロスが後藤啓介の頭を飛び越え、ボールは金子翔太の足元に転がった。岡山サポーターが息を呑んだ瞬間、金子がファーサイドに目掛けて狙ったシュートは、山田大樹の両手に阻まれた。

鹿島から育成型期限付き移籍で加入した21歳のGKは、ビッグプレーの直後にも平然としていた。DAZNで試合を観ていたサポーターならば、その表情ひとつでこの試合の勝利を確信したに違いない。

攻撃も守備も敵も味方も、若い世代による活躍で彩られた開幕戦は、J2優勝を目標に掲げる岡山にとってはいきなりの大一番として位置付けられていた。

6ポイントマッチを早くも制した岡山の、乾坤一擲の挑戦がはじまった。


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