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運転をやめさせる

高齢の親にどうやって運転をやめさせるか、本当に悩ましい。
父は半身麻痺になってしまったので当然運転はできないし、どうやら2年ほど前の更新では本当はやめたかったらしい。
それを母が根拠もなく「大丈夫よ!」と言い、結局更新した。かわいそうだった。

秋に帰省したときに、3月生まれの母にも案内のハガキが届いていた。
ちなみに75歳以上の運転免許更新の手順はこちら。

警視庁ホームページより

実家は県庁所在地ではあるけれど、車がないと実質暮らしていけない。私が小さかったころはそれでもまだ農協が一通り揃うお店やってたし路線バスもそこそこあった。なんでも診てくれるおばあちゃん先生の診療所もあったし、それなりに暮らしていけた。
実際、曽祖母も祖母も運転免許を持っていなかったけど、特に曽祖母のほうは80過ぎまで一人でバスに乗って市内の娘の家まで出かけてたっけ。

だけど平成に入ってからはどんどん若い人がいなくなり、働き盛りだった面々は歳を取り、あるいはこの世を去って限界集落化が進んでいる。さまざまな店はもちろん路線バスもなくなり、予約制の乗合タクシーになってしまった。
正直、車を取り上げてしまったら暮らしていけなくなる。

でも。
明らかに認知機能が落ちている後期高齢者に運転を続けさせるわけにはいかない。
どう説得するのか。

ここで先に結論を言ってしまうと、母は自損事故を起こして車は廃車にした。事故と言っても本人にケガはなく警察にもお世話にならず、実家近くで私たちきょうだいの幼なじみが営む修理工場に電話して、車ごと迎えに来てもらったのだ。
3日後には弟が仕事を休んで廃車手続きに行く予定だったんだけどね。

最初の作戦は「認知機能検査」の予約を取らせないこと。
母は、1人では自信がないので、私の帰省に合わせて予約して連れていけという。
甘えるのもいいかげんのしろと目の前の机を蹴りそうにらなるのをグッとこらえ、自分で予約もできない、会場にも行けない人に運転免許なんか出さないよ、と説明する。忘れるから何度も。
最初は「車がなくなるなんてありえない」という反応だったけど、ちょうど池袋の事故の裁判がまたニュースになっていた時期も重なり、本人も納得したのだ。
が。
次に帰省したらバッチリ予約がとられている。
おそらくまともな&やる気が出た瞬間が訪れたんだろう。
しかも「もう運転しないんだから更新しなくていいよ」と言ってあった自動車共済(任意保険)もわざわざ農協へ出向いて更新手続きをしてあったよ…。

全部こうなんだよ。
言ったことを忘れるのはわかっているので、書いて目につくところに貼ったり本人に書かせても全部無駄。

その時点で認知機能検査の予約1週間前。
ケアマネさんにも同席してもらい、本人が一番心配している買い物はヘルパーさんに頼んだり一緒に行ったりしてもらえるし、病院はこの半年ずっと私か弟が帰省したときに行ってるから1人で行ってないよね? と説得。
その上で検査のハガキをその場で破棄し、一緒に任意保険の更新取りやめの手続きに行く。

あとは車をどうするか。
正直なところ、運転免許の更新をしなくたってそこに車があれば運転してしまう可能性が高い。廃車にしたらしたでそれを忘れて「車がない!」と探し歩く未来が手に取るように見える。
印象が強い出来事は覚えているので、どうすれば「車はもうない」ことを本人に印象づけることができるのか。

弟夫婦と相談して、私か弟が立ち会って車を引き取ってもらい、「もう車はないんだよ」と言うのがいいのでは、という結論になった。
1月末に作戦実行の予定がまたたく間に感染状況が悪くなったため、どちらか先に休暇が取れるほうがなるはやで行こうということにして、弟が行くことになった。そして「結論」に戻るわけなんだけど。

自動車修理工場の幼なじみには、お礼の電話がてら廃車の念押しをして、「もしおばちゃん(母)が『車がない』と言ってきたら…」と切り出したところで、「大丈夫、まだ修理できてないよ、って言うから。」と快く引き受けてくれた。ありがとう。

運転の心配はなくなった。
さて、これからヘルパーさんに何をどうやってお願いするか、買い物の頻度はどれくらいでどこに連れて行ってもらうか、その前に「絶対他人を家に入れたくない」と言っていた母がヘルパーさんとうまく付き合えるのか、という心配が山ほどあったんだけど、それらは予想外の形で検討不要になってしまうのだった。


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