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第8話 韓国との軍事境界線へ向かう

令和元年5月3日、「北朝鮮」観光3日目。

昨日と同じように、早朝に目が覚めるとホテルの窓の外に、靄によってうっすらと輪郭が浮き出た朝焼けの太陽が映っていた。

私は頭がぼーっとしつつもそれがとても神秘的に見えたのでしばらくそのままその太陽を見ていた。


この日は7時半にはホテルを出発し、韓国と「北朝鮮」の境の38度線と言われる板門店(パンムンジャン)へ向かう予定だった。 


私は7時前くらいにケイスケとホテルの食堂に行き、昨日いた「宮廷婦人」が出迎えてくれた。私は彼女の吐息のような「カムサハムニダ」という声にうっとりしそうになった。


食堂の中では他のメンバーも来ていたので一緒に朝食を食べた。 


私は「朝はパン派」なので、キムチや惣菜やご飯などはつがず、トーストとマーガリンと目玉焼きだけをついでテーブルに戻った。

マサキ氏が私の朝食の乗ったプレートを見るや否や


「何すか、そのOLみたいな朝食は」


などと言ってきた。

「うるさいよ(笑)」などと思いつつ、確かに私の食事の嗜好は少し女性っぽいっことに気が付いた。

私が朝オートミールを食べるとか、キッシュが好きだということがバレると、男には苦笑され、女には「どこのモデルか!」と馬鹿にされ笑われる。



朝はブラックコーヒーを飲まないと調子が悪いので、前日と同じくドリップコーヒーを注ぎにいった。


昨日と同じの垢抜けないホテルマンがいたので、私は「スゴハシムニダ(ご苦労さんです)」といって挨拶した。


もちろん今日もコーヒーを無料にしてもらおうと思って彼のご機嫌をとったわけだが、この日は10元しっかりとられた。 昨日無料にしてくれたのは一体何だったのか。


私たちは7時半頃、ホテルのロビーで朴さんと李さんと会った。 


すぐに「専用車」に乗り込み、私の中では一番見たかった場所、板門店(パンムンジャン)へと向かった。 


板門店は平壌から約200キロ離れており、車で約3時間くらいかかる。 


私たちは平壌郊外へ出た。 板門店までの道は車の通りがほとんどない。


この国では一般人が車を持つことができないため、ツアー車や公用車両ぐらいしか通ることがない。 


道の両側には、緑が極端に少ない田んぼや畑が延々と続き、その向こうにはなだらかな丘陵が重なり合い遠くまで広がっていたが、その低い山々には木があまり生い茂っておらず、荒涼とした景色が続いた。 


まだ、田植えの時期には少し早いためか、稲もあまり植えられていない。 


田んぼには手作業で働く農民達がぽつぽつとみられ、昨日朴さんが言ったように、トラクターの類のものはほとんど見られない。 



私は、「貧しいなあ」と率直に思った。 


いくら平壌だけが発展しようとも、この郊外の貧しさは、隠しようがない。 


私は色々なアジアの国を回ったことがあるが、どの国よりも貧しいかもしれないと思った。 


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