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『子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!』を読んだ

今日は林成之さんの『子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!』を読んだ。2011年の本だ。これくらいの時期の本は中古だと安く手に入るからとても助かる。林さんは日本大学医学部教授、マイアミ大学脳神経外科生涯臨床教授、日本大学総合科学研究科の教授を歴任している、医学系の脳科学者だ。2011年の時点でも様々な著書がある。

全体を読んでの感想

脳科学者が書いてくれた、脳科学のエッセンスを踏まえた上での育児本だ。僕にとってはとてもおもしろかった。なるほどなと思うことも多くあった。なんとなくこうした方がいいんだろうなと聞いていたことや、思っていたことが、やっぱり脳科学者の視点で見てもそうなんだなぁとわかる本。脳科学的な部分はわかりやすく書かれていて、小難しい部分はあまりない。なんならもうちょっと専門的なことも入れてくれてもいいのになと思うくらいだったけど、子育てにあたって理解しておいてほしいことに焦点を絞って書いてくれているんだと思う。以前、子育て支援センターで受けた子育て講座で、先生が話してくれたこととリンクする部分がかなり多かったのも嬉しかった。きっとあの先生は、脳科学についてはほとんど触れていなかった気がするけど、この本に書かれていることも踏まえて話してくれていたんだろう。

子育ての際に抑えておくべき脳神経

脳が物事を理解・判断し、思考し、記憶する時、情報は大脳皮質神経細胞で認識され、A10神経群で「好きだ」「嫌いだ」「面白い」などの感情のレッテルが貼られ、前頭前野による理解・判断を経由し、自己報酬系神経群を通り、線条体ー基底核ー視床、海馬回・リンビックへと流れていくとのこと。この中で、子育ての際に抑えておくべきなのはA10神経群と自己報酬系神経群のようだ。

A10神経群による情報に対する感情のレッテル貼りは、脳の機能に大きな影響を与えるらしい。早い話が「好き」というレッテルが貼られた情報に対して脳は活性化し、「嫌い」というレッテルが貼られた情報に対してはうまく働かないということのようだ。嫌いな教科は勉強しても頭に入らないというのはこの辺のことが効いているらしい。

もう一つの自己報酬系神経群、これは自分への報酬、つまりご褒美によって機能する神経細胞群だ。脳の神経回路網は情報が伝わる順に広がっていくのが一般的なのに、自己報酬神経群の部分は回路の数が減り収束していくところが特徴的だそうだ。これは、この神経群が様々な情報を一つの気持ちや考えにまとめる仕組みを持っていることを示しているらしい。

本能と心の重要性

脳の機能を十分に引き出すのに重要なのが、「本能」と「心」だという。脳神経細胞一つ一つが持つ本能は「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」の3つ。脳が組織として働くことにより、生まれる本能が「自己保存」「統一・一貫性」「自我」の3つ。そして、最後に脳の組織が連合して働き、考えを生み出す仕組みの基盤となるのが「違いを認めて共に生きる」という本能らしい。これらの本能は、人の感情を大いに左右する。例えば「統一・一貫性」の本能は、整ったものやバランスの良いものを選んだり作ったりする能力のベースとなり、きれいな人やかっこいい人に好感を寄せるパワーを持っているそうだ。自分と異なる意見を持っている人を嫌いになるのもこの本能が影響しているとのこと。本能が前向きに働けば脳機能にいい影響をもたらす、後ろ向きに働けばその逆となる。

そして、心はこれらの本能を基盤として思考することによって生まれてくるものだという。例えば「自己保存」や「自我」という本能からは自尊心や欲望、向上心などが生まれ「違いを認めて共に生きる」という本能からは、貢献心や他者を愛する心、といった具合だ。

「本能」と「心」は脳の機能に密接に関わっている。「生きたい」「知りたい」という本能からは探究心や好奇心が生まれ、それらの心が強いとA10神経群で情報に対してプラスのレッテルを貼りやすくする。「自我」「自己保存」の本能からは向上心や自尊心がうまれ、自分からやろうという意欲を生み出し自己報酬系神経群を機能させやすくする。つまり、脳の機能を高めるには「本能」を磨き、制御し、よい「心」を育てることが重要になるのだ。

脳の機能を高めるためには「本能」と「心」が重要というのは面白い発見だった。

社会で活躍できる子どもを育てるために

社会で活躍できる子どもを育てるためには、人の気持ちを理解し心を通わせられる脳を育むことが重要だと林さんは言う。その時に重要なのが脳の「同期発火」という現象の理解だ。同期発火は脳が考えを一つにまとめる際に情報を伝え合う脳神経細胞が連鎖的に活動することで、その活動は先に進むだけでなく発信元の神経細胞へのフィードバックも起こす。脳が受け取る情報はA10神経群で感情が付与され、それはその先の思考に進むと同時に大脳皮質にもフィードバックされることになる。

人間の脳神経細胞が持つ「仲間になりたい」という本能は相手の表情は話の内容、涙などの情報を受け取ると、同じような同期発火させようとする力があるそうだ。この本能に基づく同期発火を強く引き起こすために、相手の自己報酬系神経群も活性化させることも重要となる。

つまり、まずは相手のA10神経群を発火させるために「心を込めて伝える力」「相手の立場に立って物事を考える力」が重要で、その後、相手の事故報酬神経群を活性化させるために「相手を認め、尊敬してほめること」が必要となる。このように相手を同期発火させるコミュニケーションができるようになれば、様々なシーンで活躍できることができるだろう。

もう一つ子どもが才能を発揮できるようにするために、意識して鍛えるべきは「空間認知能」らしい。空間認知能とは、空間の中で位置や形、時間の長さを認識する知能で、脳の機能全体に関わる重要なものだという。どうしてこれがそんなに重要なのかということにはそこまで触れられていなかったが、子供の脳を育てるのに重要なファクターであることは確かのようだ。

3歳、7歳、10歳のポイント

この本のタイトルにもなっている3歳、7歳、10歳という区切りは脳の成長段階に由来しているようだ。0〜3歳までの子どもの脳は脳神経細胞が増え続けている状態で、その後7歳くらいまでは逆に脳神経細胞が少し減少する間引き現象が起こるらしい。そして、7〜10歳くらいの段階で神経細胞間の情報伝達回路を発達させていく過程に入る。こういった脳の状況を考えると、0〜3歳では神経伝達回路は発達する段階に無いので無理な学習は子どもにとって辛いものとなってしまうらしい。むしろこの段階では脳の基盤となる本能を磨いてあげるのがいいとのこと。3〜7歳の頃は、7歳以降に神経回路をしっかり発達させるためのベースを整えることに注力するのがよく、具体的には悪い習慣を削り、良い習慣を身に着けられるようにしてあげるのがいいようだ。そして、7〜10歳の頃には自分からどんどん勉強できるように、自己報酬系の機能を高めて上げることを念頭に置きつつ、自主的に学ぶことが環境を整えることが重要になるようだ。本の中には具体的な取り組み方が脳の機能と関連付けた上で、多く書かれていてとても参考になった。

この本を読んで

日頃なんとなく耳にすることがあった、育児はこうしたらいい、ああしたらいいと言うのが、脳科学を絡めて説明されているのがとても面白く、一気に読んでしまった。まずは1歳半のつむぎの「本能」を削ぐのでは無く、磨いてあげたい。一緒に考えるベースの一つにしたいので、幸枝さんにもぜひ読んでもらおうと思った。

それにしても、今日はめちゃくちゃ長くなってしまったなぁ・・・。まあ、初めて目次機能を使えたし、いいかな。

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