見出し画像

服に全くお金をかけない僕がpatagoniaのコートを買った日

 「服は見た目が普通で安ければOK。機能性があればなおよし!」僕のファッションはもう十数年こんな感じ。積極的に服を選んでみたのは男子校を卒業して大学に入学し、久しぶりの共学が始まったときくらい。そのときでさえ長続きはせず、一年もしないうちに服に興味は持たなくなった。そんな僕は雪降る街でファストファッションブランドではなく、patagoniaのコートを買ったのでした。

 ある秋の日、車の中での幸枝さんとの会話、
「やっぱり、何をやるにしても、やる人のこだわりがあるから魅力が出てくるんだなって最近思うんだよね」
「うん、こだわりとかセンスが大事だよ」
「僕には、あんまりこだわりないんだよねぇ・・・」
「私は、いいものを大切に使いたいと思ってるよ。あなたも少しは身につけるものとかこだわってみたら?」
「服ねぇ・・・」
少し考える僕。
「そしたら、エシカルかな」
「を、いいねぇ。たくちゃんからそんな言葉が出てくるとは!」

 実は、農業を始めてからエシカル消費に関心がでてきた。農業をやってみてよく思うのは、生産者である農家の立場の弱さだ。農家にはいろんなものの決定権が無いように見える。直売でもやらない限り野菜や穀物の販売価格を自分で決められない。にもかかわらず、野菜を作るための肥料や農薬、種子、それにビニールハウスの鉄パイプや燃料などの価格変動にはもろにさらされる。農業に関連する他の立場の内情を知らないので、絶対にそうだとは言い切れないけれど。しわ寄せは基本的には農家によっているように見える。

 なんとなく分かってきたのは、「安くて質の良いもの」を求めすぎるのは、どこかの誰かにしわ寄せが起きてるのかもしれないということだ。僕はファストファッションの服を全身にまといながらも、「適正な価格のものを買ったほうがいいのかもな」と思うようになっていた。

 そんな中で、幸枝さんとの会話の通り「エシカルな服」をいつか着てみようと思うに至る。

 そして、ついにその時が来た。愛用していた安価なダウンジャケットは猫のスピカに引っかかれてボロボロの状態。新しいコートが必要だ。これはいい機会、とコートを検索する。いろいろなメーカーのサイトを見た後にたどり着いたのがpatagoniaのウェブサイトだった。

 patagoniaのウェブサイトを開くとまず出てくるのは、「They / Them」の文字。トランスジェンダーのクライマーの挑戦のフィルムが観られるようになっている。「え、何のサイト?コートはどこにあるの?」と思いつつ、サイト上部にある「ショップ」の文字をクリックする。次に出てくるのは、服のカテゴリを羅列されただけのテキスト。商品を売る気はあるの?というサイト構成だ。それでもめげずに「ジャケット&ベスト」の項目を選択。ようやく出てきたのは3万円弱から10万円弱の僕にとってはかなり高額なラインナップ。

 「むむむ、まぁ、でもこのくらいはするのかもな」と一人つぶやき、さらにサイトを見ていく。エシカルに目覚めた僕の興味があるのは商品だけでなく、その裏にあるストーリーだ。サイト上部の「アクティビズム」をクリック。そこにはっきりと宣言されていた。

「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」

 そうそう、こういうの。僕はこういうこと言ってるところの服を着たいんだよ。この文を見た時点でpatagoniaのコートを買うことを決めた。宣言の下には、溢れ出るほどのストーリーが書かれている。とうてい全部は見きれないけれど、中でも「フットプリント」と「Worn Wear」の項目を見て決意を固くした。素材にも生産者への対応にもこだわりがあり、自分で修理してでも長く使い続けてほしいと綴られている。

「もう、patagoniaのコートを着ることは決めた。あとは何を買うかだ」

 サイト内でいろいろと物色し、あらかた目星をつけ、サイズを確認する意味でもショップに向かうことにした。ショップに着き、いくつかを試着、着心地と見た目がよく、値段的にも買える範囲のものを購入することに決める。ショップの雰囲気も、店員さんの対応もすごく気持ちがいい。

 支払いを終えると。商品をきれいにたたんでくれた後に、少し申し訳無さそうな店員さんの声。

「patagoniaでは環境への配慮から袋の提供をしていないんです」

 そんなことはもちろんOK。むしろ、それでこそpatagoniaだな。と思い、大満足で商品を受け取る。外を見ると、雪が降っている。僕はちょっと誇らしい気持ちでワクワクしながら袖を通し店を出る。すごく温かい。コートってこんなに温かいのねとニヤニヤしながらつむぎを抱っこし家路に着くのでした。

 結構高い買い物だったし、10年以上は着続けないと!

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

サポートとは「投げ銭」の意味です。 サポートにて100円でも200円でも頂けるとやる気に繋がります!皆様のサポートありがとうございます!!