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『日本を救う未来の農業』を読んだ

妻の実家に帰省して、大人の目が増えたのでちょっと時間ができました。ということで、本を読んでます。

今日読んだのは竹下正哲さんの「日本を救う未来の農業」。とにかく日本の農業はこのままいくとあと数年で壊滅的状況に追い込まれる、というセンセーショナルな内容。ちなみにこの本が出たのは2019年の9月だ。

竹下さんが警鐘を鳴らすのは、日本の農業の生産効率が1970年代以降ほとんど向上していない事実だ。その一方で、海外では、成長を続け、当時先端を行っていた日本の生産効率は今では他国に置いて行かれた状態にあるという。その結果として現れているのが、日本の農産物の価格だ。今や決して物価が高くはない日本において、農産物の価格だけはとても高いらしい。その原因は、生産効率の低さだと言う。そんな中TPPやEPAの締結により、海外から特にヨーロッパから安くて質の良い農産物が入ってくるようになった時、このままだと日本の農業は壊滅してしまう、と竹下さんの危惧する。

なんで日本の農業の生産効率は置いてかれてしまったのか?他国はどうして、そんなに効率がいいのか?そのヒントがイスラエルの農業にあると言う。砂漠地帯が多く、雨も少ないイスラエルの農業は、ドリップ灌漑という方法で成功を収め、今やヨーロッパに大量の農産物を輸出するようになっているらしい。

ドリップ灌漑とは、植物の根元にポタポタと水を落とす方法だ。点滴チューブよりも高性能のチューブを使っていて、圧力コントロールやフィルター技術により、水量の偏りや目詰まりはしないらしい。このドリップ灌漑によって、水だけで無く液体肥料も常に適切量、作物に与えることができるようになった。それにより、今まで乾燥や塩害に悩んでいたイスラエルでも露地での農業が可能になり、生産性もどんどん向上したらしい。

ドリップ灌漑で作物生産に必要なものを提供しているイスラエルでは、土づくりと言う考え方さえ無いらしい。農業はまず土づくりと言われることが多い日本とは大きな違いだ。確かに乾燥地で土も良くないのであれば雑草の心配も無いだろうし、ドリップ灌漑で作物が育つのであれば、むしろそのデメリットがプラスになるかもしれないなと思う。

このドリップ灌漑は、今やヨーロッパでも広がっているらしい。一方で日本では全く知られていない。その要因は日本が農業的に恵まれ過ぎているからだと言う。一年を通して、安定的に雨が降る日本では、灌漑技術の進歩は、水田向けの用水路で止まってしまった。雨が降るんだからそれでもいいんじゃないかと思いがちだが、実はそうじゃない。日本でもドリップ灌漑を取り入れる必要があるらしい。

その理由が、各種センサーや人工知能を取り入れた、ハイテクノロジーの農業のベースにこのドリップ灌漑が必要になるからだ。農地にあらゆるセンサーを設置し、それを解析した上で、行動に移す際、最も効果的なのがドリップ灌漑による水やりと施肥の調節だ。だからこの灌漑法が普及していないのは、日々進歩する世界の農業から致命的な遅れをとってしまう可能性がある。だから今すぐ日本でも取り入れて行こう、と竹下さんは自身で行った国内での実験結果も踏まえて主張する。

以上が、僕がこの本から読み取った内容だ。なかなか、刺激的なものだった。本の途中で、イスラエルでは農家と研究者、企業の距離が近いのが特徴だとされていた。その点では、僕は力を発揮できそうだなと感じた。この本を読んで、世界と日本の現状に触れ、少し視野を広げることができたなと思う。


で、ここからが疑問点。ドリップ灌漑用のチューブってどのくらいのコストがかかるのだろう?それを何ヘクタールも露地に這わすのはどうやるんだろう?作物収穫後はチューブは撤去するのだろうか?もししないのであればトラクターによる耕運もしないのかな?そしたら残渣はどうなっちゃうんだ?
農法としてすごく興味はあるけど具体的な方法は他のもので学ばないと分からないなぁと言うのが感想。この本は、そもそもそこまでをカバーするものではないのだろう。いずれにせよ、海外の情報ももっと知りたくなる本だった。


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