非流通絵本_『ある日、ある島で。』(1991/東京電力)

僕は絶版絵本や雑誌のバックナンバーの蒐集が趣味で、新刊書店では入手できないそれらをネットや古書市やBOOKOFFで漁っている内に、気づけば「企業・団体等によるノベルティ、PR用の絵本(ISBN、本体価格表記無し)」も買うようになっていました。絶版絵本同様にこれらも「会った時に買っておかないと次は無い」類のものなので、琴線に触れたのだと思います。

で、何年か前に土屋鞄製造所のノベルティ絵本『かばんねこ』について触れた時、これら非流通絵本はお客様に財布を開いていただく必要が無い自由さがあり、一方、一般の流通絵本にくらべてメーカー(企業・団体側)のメッセージをきちんと伝えなければいけない不自由さがあって、並べてみたらその具体的な特徴と、反面、一般の流通絵本の制限みたいなものが浮かび上がってくるのでは?と思いました。
そこで少しづつですがこれまでに入手した非流通絵本をnoteでかんたんに紹介していこうと思います。お付き合いいただければ幸いです。

一冊目は東京電力株式会社のPR絵本です。

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『ある日、ある島で。』(1991/東京電力)。

東京電力広報部による発電所のPR絵本。テーマが発電所だけにメカメカしたシルバーの装丁がいい感じです。
文章は児童書のそれではありません。構成は5場面、配置はすべて片面絵・片面文で、文字級数は13ポイント、一頁最大行数20と、絵本ではありますが潔いくらい児童を対象としたつくりでは無く、ただ、絵本の体裁にすると伝えたいメッセージにやわらかさがまとうことに気づかせてくれます。

で、東京電力の絵本となるとたぶん、多くの人が気になるのは「原子力発電にどう触れているのか?」だと思います。イデオロギーにほとんど関心がない私ですらそうです。

この絵本はチェルノブイリ原発事故の5年後に刊行されました。
内容面ではソーラーと風力と火力と水力については文字をたくさん割いていて、特に火力と水力はその環境破壊面にも言及しています。しかし原子力については言葉はチラっと出るも、その効果や影響についてはまったく説明がなされていません。つまり肯定も否定もしないことがアピールになります。

購入した絵本の見返しには「寄贈」と押印されていました。非流通絵本を手に取った時はいつも「どこから流れてきたんだろうか?」と思います。

[内容]
島の電気をひとりでつくってきたトムじいさんは、島の発展に伴う電力消費量の増加にいつも頭を悩ませていた。そこに電気の精のエナが飛んできて、太陽光と風力発電があるよとトムじいさんにアドバイスする。

[備考]
10p/B5変/左開/印刷・製本不明




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