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駄菓子屋の万引き ~子どもの頃の思い出~

by 吉田 柴犬

 柴犬が生まれたのは1964年である。この年は日本で初めてのオリンピック、東京オリンピックが開催、東海道新幹線の開通など、高度成長期の日本にとっては、華々しい年だった。

 私の生まれ故郷は東北地方の福島県。田舎の小さな町で6歳まで育った。だから、福島の思い出は数えるほどだ。自分の思い出だと信じているけれども、実は親から聞いた話が記憶に転化してしまったものもあるのではないか、と思う。

 その記憶の中でも強烈に覚えていることの一つに、近所の駄菓子屋で万引きをして捕まったことがある。

 駄菓子屋といっても、たぶんお店ではなく、家の玄関、土間からあがりかまちにお菓子を並べて売っていたような駄菓子屋だと思う。私はたぶん4歳か5歳だった。そして、ひとりでその駄菓子屋の店先の「串かすてら」(懐かしい、、)を、誰にも見られていないと思って、一本持ち出した。今思えば、自分は腰をかがめて見えてないと思っただけで、お店のおばちゃんからは丸見えだったのだと思う。

 そして、ほんの少し離れたところで、それを食べているところを、その店のおばちゃんに捕まったのだ。つまり現行犯での犯人確保だ。

 記憶では、泣きながら食べかけの串カステラを返そうとして、おばちゃんに受け取ってもらえず、おかあさんに言う、という趣旨のことを言われたんだと思う。

 次の記憶は、川、それも大きな川の河原を、夕方にひとりでとぼとぼと歩く風景である。「帰ったら、お母さんに怒られる、、、」と思って、家に帰ることができなくなっていたのだろう。

 その後の記憶はなくて、子どもの頃はさすがに自分から母親に聞くこともできず、ようやく大人になってから、母親に「小さいころ、駄菓子屋で万引きをして、親に言う、と言われたけど、そんなことあった?」と聞いた。母親は、「そんなことあったかな、、、」と、あまり記憶にない様子だった。もしかしたら、駄菓子屋のおばちゃんは母親に言いつけなかったのかもしれない。

 でも、その時の恐怖というか、罪悪感は大人になった今でも覚えている。誰でも小さいことはあることかもしれないけど、「泥棒はいけない」という話でした。(*^^*)

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