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ひきこもり対策は時代遅れか!? ~「ひきこもり」の定義と対策をアップデートする試み(GRゼミ10期 第11回 2022年7月19日)

サーモンです。
GR人材育成ゼミ第10期も今日で11日目。全日程が20日間ですので早くも折り返し点となりました。
ブログ当番も2周目に突入。いや~早い。楽しいゼミは時間が経つのが早いです!

早くも折返し点 ~GR人材育成ゼミ第10期 ここまでの流れ 

ちょうど中間点ですので、内容に入る前に、ゼミの流れを振り返っておきましょう。

(サーモン作)

この第10期では初日の自己紹介のあと、序盤にブレインストーミングのワークと、藻谷浩介さんによる人口動態の講義がありました。ここまでで全日程を通して重要となる、アイデア出しの姿勢と人口減少社会への向き合い方をしっかり叩き込まれた気がします。
その後大きく分けて、若者の自殺対策を考えるクールと、若者が働きたくなる地方都市づくりのクールがあり、それぞれチーム別ワークと発表に取り組んできました。

講義やワークの合間にゼミ長・ユーティーさんによる社会課題解決の講義があったり、あべあさんによるプレエンテーション・パターンランゲージトランスフォーメーション・パターンランゲージの演習があり、習った考え方や技法を、自分たちの発表に取り入れてきました。

これらの知識、考え方、技法、経験、そして毎ゼミ後の懇親会などで育んできたゼミ生同士の関係性、の全てを手に携えて、私たちは後半戦へと向かっていきます。

「"Vもぎ"を受けたい」を叶える寄り添い ~認定NPO法人育て上げネットの活動

きょう11日目は、「ひきこもり」対策クールの初日。
認定NPO法人育て上げネット理事長の工藤啓さんの講義を聴く日となりました。
 
講義の序盤は団体の活動の話。
工藤さんは、ご両親が経営する塾で不登校児や障害のある子たちを受け入れていたため、幼少期から多様な子どもたちと生活を共にして育ったそうです。海外留学を経て「若者と社会をつなぐ」をミッションとするNPO法人育て上げネットを立ち上げました。
 
団体の活動目標は若者が社会とつながり働けるように支援をすること。特徴は、求職中などの「若年無業者」だけでなく、不登校、進路未定、生活保護受給家庭、少年院入院中、などの子どもを「潜在的若年無業者」として支援の対象にしているところです。幼~小~中~高~成人するまで手を離さず、切れ目のない支援を大事にしているそうです。

(講義資料より)

私の印象に残ったのは、支援している中学生に「お金があったら何がしたい?」と聞くと、「"Vもぎ"*1を受けたい!」と答えたという話。
自分だけ模試が受けられず、翌日の教室での会話にも1人だけ加われず、かといってお金がなくて受験できないという理由も友達に話せないという、孤独な気持ちが想像されました。また本人が孤独なだけではなく、模試経験がないと本番で能力を発揮できず進学機会が妨げられるという問題も実際に発生しているそうです。
そこで育て上げネットが助成金を活用し、模試の受験を支援するサービスを実現しました。就学年齢から本人に寄り添い、就労するまで支え続けるのが育て上げネットの役割だそうです。
 
ゼミ生が「逆に手放れは大丈夫ですか?」と質問すると、工藤さんは「職員には両手で掴むな、ただし片手は放すな、と伝えている」と回答。支援を受けている子どもにとって、適度な距離感をキープしながら、戻りたいときにはいつでも迎えてくれる場所、それが育て上げネットなのだろうと想像しました。
 
*1…東京都内で普及している中学生向けの高校受験用模擬試験の1つ

高年齢化とリモートワークへの適応 ~変わりゆくひきこもりの「いま」

講義の中盤は、社会課題とされている「ひきこもり」の実像について。
 
ひきこもりの定義は「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」だそうです。
この定義に照らして日本国内の「ひきこもり」の人数を推計すると、約100万人超。39歳以下が54万人、40歳以上が61万人と推計されているそうです。
 
かつては「子ども・若者育成推進法」という法律を根拠に39歳以下を対象に行われたひきこもりの支援も、2019年に就職氷河期世代支援の枠組みで、2021年に孤独・孤立対策の枠組みで支援対象が広がり、若年層に限らない支援策が講じられています。
しかし話だけを聞いていると、政策としては後手を踏んでいる印象が否めませんでした。

(講義資料より)

では予防策はどうか。
これもまた難しく、ひきこもりになる原因は多種多様でパターン化しにくいそうです。ただ入り口で予防を講じていかなければこの課題は解決していきません。自殺対策の時に学んだ、ライフリンクさんが行った大規模聞き取り調査のようなことがもし行われたら、原因の分析はもう少しは進んだりするだろうか?、と考えました。
 
一方で、社会がリモートワークへシフトする中で、自宅にいながらIT関連の就業に成功している人たちも生まれています。
工藤さんからは「ある経営者は、一度も職場に来たがらない完全リモートの就業者はコストがかからず有難い人材だと評価していた」とのエピソードが紹介されました。自宅から出られないことが必ずしも社会参加を妨げない、社会の側の変化にも改めて気づきました。

誰に?何を?どうやって? ~政策・制度上の課題

講義の最後は、GRゼミらしく、政策・制度上の課題について。
 
・ひきこもり状態にあって困っている人は誰か?引きこもり当事者と家族の意思が相反した場合は何を優先すればよいか?
・相談や就職支援以外に、お金や資産を給付して背中を押すことはできないか?
・そもそも支援のゴールは「就職」だけか?雇用以外の働き方、稼ぎ方を育んではいけないか?
・オンライン相談や夜間相談など、時間や場所も柔軟にした方が相談しやすいのではないか?
など。
 
「誰に」「何を」「どうやって」サービスすべきか、その全てが論点になる、捉えどころが難しい問題だと思いました。

次週への宿題! ~ひきこもりの定義と対策をアップデートする試み

ゼミでは次回と次々回で、チーム別のワークと発表を行っていきます。
今クールのテーマは「『ひきこもり』を社会課題として『再定義』してください。解決策も考えてください。」
自由度が高い宿題です。しかし工藤さんの講義を受けたことで補助線も手にすることができました。
 
少し議論を先取りすると、ひきこもり状態という形だけでなく孤立・孤独な状態にある人へ対象を広げて定義するのか?・もしくはひきこもり状態の中でも真に本人が困っている人へ対象を狭めて定義するのか?
チームによって正反対の結論が出てくる可能性もありそうです。
各チームの個性がそれぞれどっちへ現れくるのか、それだけでも発表が楽しみです!
 
また自由度が高いテーマだからこそ、ユーティーゼミ長から伝授されてきた「価値軸」による課題と解決策設定が生かせそう。各チームがどう説得力を出してくるかも見所です。
解決策のアイデアにはメタバースやサツマイモを上回る、斬新なソリューションも登場することでしょう。
 
各チームの発表は次々回の第13回。是非ご期待ください!!






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