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毒親から逃げること


このnoteは、毒親育ちの明日に希望を届けるためのnoteです。




今回は、毒親から逃げることについて書きたいと思います。



先日、弁護士ドットコム様から取材を受けた際に、
毒親への対処法を説明させていただきました。
そこで私は、「毒親からは逃げてもいい」というメッセージを伝えました。



このテーマについて、掘り下げたいと思います。



1 毒親から「逃げる」ということ



毒親と距離をおくこと、という表現に置き換えてもよいのですが、
あえて「逃げる」と表現することには2つ理由があります。



一つは、法制度として、直接距離をおくことができる方法がないため、
事実上は、逃げるという形を取らざるを得ないこと。
もう一つは、子側がいくら距離をおこうとしても、毒親は子に一方的に近づいてくることが多いため、実態により近いのは距離をおくというよりも、逃げるという表現であること。



残念ですが、いかなる事情があろうとも、実家族と法律上縁を切ることはできません。そのため、親子であることは、法律上は一生続きます。



そして、毒親はそのことを都合良く利用します。
親子は縁を切れない、親子間には扶養義務がある、といったことを子に告げては、子に罪悪感を植え付け、自分から離れていこうとする子を支配したり、つなぎとめたりしようとします。



そもそも、機能不全家族においては、子は幼少時から罪悪感を植え付けられ続けています。
以下のような言葉はほんの一例です。
・あなたのためにママは仕事を諦めた
・あなたのためにママはモラハラをするパパと離婚ができない
・お前の学費のために、父である自分はストレスだらけの仕事をしている
・子どものために家を買い、住宅ローンの負担が重いから、そのストレスでアルコール依存症になった
・お前はどれだけ恵まれていると思ってるんだ
・勉強だけしていればいいなんて、いい身分だな
などなど・・・



これはやがて見えない鎖となり、自分の人生を縛りつけます。
子どもの頭の中は、
・楽しいことや幸せなことをしてはいけない、そもそも楽しいとか幸せと感じてはいけない
・Aを選べば、パパとママが喜んでくれるかな、自分は本当はBがいいけど、喜ばせるためにAにしよう
・ママの愚痴は自分が全部聞いてあげよう
・パパがアルコール依存なのは自分のせいだから、少しでも良い子になろう
等という思考でいっぱいになり、
自分の感情や自分の意思がわからなくなり、
親の感情や意向を常にうかがいながら行動するようになります。



その状態で大人になった人が、親から、親子は縁を切れない、親子には扶養義務がある等と言われれば、見えない鎖はより強化されてしまいます。




だから、毒親サバイバーにとって、親と距離をおくことは、
この見えない鎖から、いかに自由になるか、
見えない鎖をいかに断ち切るか、ということと言えます。
鎖は簡単にはちぎれません。
全力で力を出して、ようやく振り切れるといったところかと思います。



逃げるというと、マイナスの意味に感じてしまう方もいるかもしれません。
でも、逃げることは、自分を守るために必要不可欠な行動です。
逃げなければ、鎖はより強化されるばかりです。



熊に襲われた時、逃げずに戦えと言ってくる人はいないでしょう。
熊と戦えば死ぬことはわかり切っているからです。
生きるためには、熊を刺激しないように注意しつつ、全力で逃げること、
そしてそもそも遭遇しないよう、注意して行動する他ありません。



毒親サバイバーにとっての親と戦うことも、同じだと思っています。
毒親サバイバーがいつまでも親の近くに居続けることは、
自らの心身が害され続ける状況に身を置き続けるということです。
自分が生きるため、方法を工夫して、全力で逃げること、
そしてそもそも今後接触も最低限で済むようにすること、
これは、自らが健康的に生活していくために不可欠の選択です。



2 毒親から逃げる時に重要なこと


私は、毒親から逃げる時に一番重要なことは、
自分が置かれている状況において、
できる限り安全な方法をとることだと思っています。



ここでいう「安全」とは、
親からさらなる嫌がらせ等を受けずに済む方法という意味です。



具体的には以下のような点に注意するとよいかと思います。


①何も伝えずに逃げることが可能なのであれば、
まずは全力で逃げて安全な状況を構築する。

自分の気持ちを伝えてからと思っていると、状況によっては逃げるチャンスを逸してしまいます。
気持ちは後で伝えてもよいし、もし親がすぐに追いかけてこないなら伝えずにやり過ごすという方法もあります。
逃げることを優先させましょう。



②親に今後かかわりたくないという意向を自分で伝える場合は、
親と対面しない。極力かかわらない。

会って口頭で話すのではなく、手紙やメール等で気持ちを伝えましょう。
親と対面すると、見えない鎖でつながれて思うように話すことができない可能性が高いです。
親から引っ越し先のこと等を執拗に尋ねられて、回答せざるを得ないといった事態にもなりかねません。
また、親にタイプによっては感情的になり、自殺未遂をしようとしたり、
逆に、こちらに対し、腕をつかんだりするなどの暴行をしてくる恐れもあります。

逃げることを決めたら、なるべく接触しないというのが鉄則です。


③第三者を積極的に頼る。

一人で逃げようとしても、行き詰る可能性も高いです。
それはあなたが弱いからではなく、見えない鎖につながれているからです。
積極的に第三者に頼ることをお勧めします。


住民票の閲覧制限や身の安全を図ることについては警察や役所、
引っ越しについてはDV被害者の対応等を専門にしている夜逃げやさん、
現実の身の危険については一般人でも利用できる警備会社、
親に意向を伝えたり連絡窓口になることについては弁護士、
いざ逃げた後のメンタルケアについては医師や心理士、
というように、複数の頼る先を見つけられるとベストです。


この例の中では弁護士が一番敷居が高いかもしれませんが、
弊所では、親に意向を伝えたり連絡窓口になる業務を専門的に扱っており、
他の第三者につないだり、アドバイスをしたりすることが可能です。

弁護士は、法を理解している分、法制度の限界や、
自分に何ができて何ができないかということもわかっているので、
できない点については、こういう機関が頼れるのでは?というアドバイスができることが多いです。

敷居は高いかもしれませんが、最初に弁護士に頼るということも、一案です。

もし相談先や情報を探しているようであれば、
弊所のサービスを参考にしていただければ幸いです。

【毒親記事まとめ】毒親に内容証明郵便を送るとはどういうこと?



なお、個別の事案や状況に応じて、逃げる前の準備や逃げるときに工夫すべきことは変わってきます。
具体的なアドバイスを希望される場合は、ぜひご相談いただければと思います。




3 逃げた後は鎖を断ち切る作業へ


毒親から逃げたとしても、人生が薔薇色になるわけではありません。
物理的に距離をおくことに成功したとしても、
これまで機能不全家族で生き抜くために身に着けた行動や思考の習慣は変わりません。
毒親の価値観を内面化し、それが見えない鎖として残っているため、
それを断ち切り、自分が望む自分になれるよう、
自分のことを育てなおしていく必要があります。



だから、親から逃げたとしても、そこはゴールでもなんでもなく、
むしろ、はじまりなのです。



これが一番、毒親育ちが直面する厳しい現実です。この自分を育てなおすという作業が、とてつもなく大変で、苦労を伴うものだからです。
しかし、いまだつながれている見えない鎖から自分を断ち切ることができるようになった時、過去の自分が予想だにしなかったような自分と出会うことができると思います。



なお、毒親育ちが親からつながれた鎖は、完全に断ち切ることはできないかもしれません。
そこは完璧主義にならず、あくまでも目的は、自分が自分らしく幸せに生きることなので、その目的が達成できる程度に、鎖から自由になれればOK
というくらいの気持ちでいた方がよいと思います。



私は、以前、いつ鎖から完全に解放されるのだろうと思って焦っていたのですが、今は鎖から完全に開放されることは残念ながらないかも・・・
でも今が自分らしく幸せならいっか、
と思えるようになり、
真の意味で、親につながれた鎖から解放されたように思います。


鎖を断ち切ることは大切なのですが、そこに執着してしまうと、
鎖を断ち切ることに人生をささげることになってしまうので、
注意が必要です。


あくまでも自分が自分らしく幸せに生きられるようになること、
それが、毒親育ちにとって、親から逃げた先に目指したいゴールではないでしょうか。




4 親から逃げること、それは希望への入り口に立つこと


ここまで毒親から逃げることについて書きました。
逃げるということは、言葉にするとたった三文字ですが、
まったく簡単なことではありません。
それに、逃げたところで、人生が劇的に改善するわけではありません。



そのため、私が親から逃げてもいいといった趣旨の話をすると、
私の話は理想論だという批判を受けることも多々あります。



でも、自分の人生を変えるほんのきっかけに過ぎないとしても、
その一歩を踏み出せるか踏み出せないかで、
その後の人生は大きく変わるものだと思います。


小さいころ、親から暴言や暴力を受けていた時、
逃げることなんて考えられなかったはずです。
逃げたら即生きていけなくなるからです。
だからこそ、その言葉や暴力をそのまま受けるしかなかった…


でも、今は大人になり、自分で行動ができるようになりました。
その機会を生かして、少しでも多くの方が、
自分の人生を取り戻す出発点に立ってほしい、
同じ毒親サバイバーとして、そう願ってやみません。


自分の人生は自分で変えていけるんだという実感を持てることは、
自分の人生に希望を持てるようになることだと思います。だから、親から逃げることは、人生の希望の入り口に立つことだと感じています。



これからも、一人でも多くの方が、人生の希望の入り口に立てるよう、
微力ながらお手伝いしていきたいと思っています。






今回もお読みいただき、ありがとうございました。

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