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「数に慣れ親しむこと」が数学の根幹をなす

先ほど、中学3年生に平方根を教えた。

実践的な計算を教えるだけなら簡単だが、√ (ルート)の根本的な性質や、有理数・無理数の分類などを教えるとなると、なかなか骨が折れる。

授業では、1時間かけて、数の根本的な面白さを伝えるべく、生徒と共に数遊びをした。その内容をご紹介する。


[1]√2, √3, √5 の語呂合わせ

私たちの世代においては、この語呂合わせは常識であったが、今の子どもたちには定着していない。

学校では少し説明があっただけで、深くは触れられなかったという。

私の塾の高校生は、√2 がいったいどれくらいの数なのか、全く理解していなかった。

「√2 ≒ 1.4」であることを知らずに問題を解いている。

それでも解けてしまうのが恐ろしいところであるが、そうやって、何の実感もなく、ただ漠然と解いているだけの生徒がどれほど多いことか。

これは子どもだけに限った話ではなく、大人にも当てはまる。

自分の専門分野の内容をよく分からずに事務的に処理しているだけの人は多い。


いずれにせよ、「√2 ≒ 1.4」を徹底させない中学教育は「問題あり」と言わざるを得ない。

そこにこそ「数学の楽しさ」があるし、「数の面白さ」があるし、それらを伝えることこそが「教師の役割・使命」ではないか。

中学の数学教師といえば、数学が好きだからその職に就いているわけで、一生数学を教えていく仕事であるわけで、その楽しさ・面白さを伝える以外に何があるのだろうと思うが、一般的な教師は、指導要領通りの教え方で、数学に大して興味・関心もなく、淡々と授業を進めているのだろう。

これでは数学嫌い・勉強嫌いが増えるのも当然だ。

「心」がない。

せめて自分の専門分野くらいは、心をもって指導していただきたいものである。

[2]無限小数の不思議さ

先ほどの授業で私は、生徒に電卓を用意させ、実際に計算させた。スマホに電卓アプリが内蔵されている。

まず「2」を押させ、その次に「√」を押させる。

すると「1.414213562373095」と出る。

この作業を生徒に実際にさせることで、「√2 が無限に続くこと」を体感できる。この感覚こそが大切なのである。


「√2 は無限小数です」と口で説明するのは簡単であるが、この「無限」の感覚を教室の生徒全員に感じさせるのが、教師本来の役割ではないのか。


(塾の授業の続き➡︎) 1.41421356 をノートに書かせ、電卓でもう一度 「× 1.41421356」を打たせる。

そうすると、「1.999999993287874」と表示される。

「√2 × √2」が限りなく「2」 に近づくことが実感できる。

「√2 × √2 = 2 である」と知識として教えることは簡単であるが、こうして電卓を使わせることで、生徒に「実感として」教える。これが本来の教育であると私は考える。

こういう授業こそ、学校で行なってもらいたいものなのだ。

塾は本来、「√2 × √2 = 2 であること」を前提として問題演習する場であるのに、塾で根本的な基本事項から指導せざるを得ない状況になってしまっている。


[3]数遊びの面白さ

そのあと、テキストには「有理数・無理数の分類」が出てくるが、ここでも、電卓を使って非常に面白い授業ができた。


無限小数として「1/3 = 0.333333….. 」を知っている生徒は多いが、例えば「1/7」の性質を知らない生徒も多い。

「1 ÷ 7」を電卓で計算させてみる。

iPhone の場合、画面を横にすると、より桁数の多い複雑な計算ができる。

「1÷ 7 = 0.142857142857143」と表示される。

この規則性はお分かりだろうか。

これは生徒もすぐ見つけられていた。

「142857」が繰り返されている。この「142857」が無限に循環される (=循環小数)。

こうして電卓を使わせることで、「循環」の意味も実感させやすい。

① 1/7= 0.142857142857143….
② √2= 1.414213562373095…

①,② は共に無限小数であるが、①は「循環する無限小数」であり、②は「循環しない無限小数」となる。①は「有理数」、②は「無理数」に分類される。


以上はどの教科書にもある基本的知識であるが、実際に電卓を打たせるなり、ノートに書かせるなどして、生徒に体で実感させる。

それが真の教育であるし、その「経験」をさせておくことで、以後の問題演習において雲泥の差が生じる。

体で実感しておくことで、問題演習すればするほど「数の感覚」が養われ、研ぎ澄まされる。

初めの「体感」なしに計算練習をどれだけ積んでも、単に計算した事実が積み重なるだけであり、体にはなじまない。楽しくない。面白くない。


「√6 = √2 × √3」であることは言うまでもないが、実際にこれを一度でも計算させておくことで、以後の理解度が変わる。

√6 = 2.44948974…

√2 × √3 = 1.41421356 × 1.7320508
              = 2.44948973

この重要性がお分かりいただけるだろうか。

先ほど √2 の近似値を知らない高校生の話をしたが、例えば三角関数でよく出る「√2 /2」がどのような数なのかよく分からないまま、その生徒は勉強を進めていることになる。

「√2 ≒ 1.4」だから「√2 /2 ≒ 0.7」になるのは当たり前のことなのであるが、これを知らない高校生が本当に多く、私の塾ではこのレベルからいつも指導する。

このことを知らない高校生は本当に多い。それでもテストは何とかなるし、卒業もできる。

ただし、数学のことを何も理解しないまま終わるし、何よりも楽しくない。面白くない。

この傾向が教育全般においてみられるのであるから、「勉強嫌い」が増えて当然だ。

こういう「数遊び」「数の面白さ」については本来、小学校で教えるべきだし、幼児教育とか家庭教育とか、世間一般で底上げすべき教養である。

実際に勉強する子どもだけでなく、大人も興味を持って学ぶことで、世の中全体のレベルが上がる。そういうことだ。


「√2 × √2 = 2」は数学の常識であるが、単に暗記するだけではなく、

「1,41421356 × 1.41421356 = 1.999999993287874」
となることの「感動」を子どもたちに味わわせてあげたい。

限りなく「2」に近い「1.99999999」が表示される感動。

それを味わわせてあげたい。

この計算で「99999」が続かずに「3287874」となっているのは、「√2 = 1,41421356」の桁数が足りていないからである。

このことからも、√2 が無限小数であることが実感されるし、
1.99999999999999999….という限りなく「2」に近づく近似値の予測もできる。「無限大」「極限」といった高校数学の土台にもなる。

[4]みんなで「数遊び」をしよう

以上のように、数はとにかく面白いし、楽しいし、不思議な性質を持っているので、大人も子どももぜひ楽しんで学んでほしい。

こういうベースを鍛えておくことで、学校教育における「算数・数学」の理解度も大きく変わってくる。

すなわち、家庭教育・社会一般教育の充実こそが、学力向上の土台であるということがご理解いただけるはずだ。

小学校に上がるまでの幼児教育がいかに重要か。

算数・数学を教えたことのある人にとっては容易に理解できるはずだ。

小さい時のままごと遊び。買い物の手伝い。トランプ遊び。積み木遊び。おはじき遊び…。

そういったアナログな「子ども遊び」の中にこそ、学力向上の要素が隠されている。

今こそ原点に立ち返り、世の中全体で子どもたちの教育に目を向ける必要がある。

[5]心と感動を大切に

勉強に大切なことは、何よりも「心」「感動」である。

「面白い」「楽しい」「へえ〜」という「心の感動」が学びの源泉になる。

私の塾では、その「感動」を最重要視して指導を行なっている。

共感していただける皆様とのつながりを切に望んでいます。

ぜひ皆さんで「感動」を広めていきましょう。

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