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中国人YouTuber・李子柒の人気にみる価値観の変化

先日ゴールデンウィークで、山奥の渓谷沿いの山小屋で過ごした。学生時代に山登りをしていたこともあり、山が大好きで、自然しかないところに身をおいていてもあまり苦にならない。河原の石を拾って、清流に向かってひたすら投げて過ごした。

そんな私なので、昔、中国人の友人に「田舎で暮らしたい」という話をした際、友人から「日本の田舎は不衛生でないのか?」「生活レベルは低くないのか?」と問われた。日本の農村は、過疎化が問題になっていても、整備が一応に進んでいて、農村=汚いというイメージはないが、中国では、農村=汚いのイメージがあるらしい。友人からは「中国だったら、農村に暮らしたいなど思わない」と言われた。

しかし、以前の「農村なんかで、不便な生活をしたくない、都会に出たい」というような志向が、近年の経済発展に伴い、社会環境や人々の気持ちにも変化が現れ、そうでもない価値観も共有されているようだ。

それは四川省の田舎を舞台に伝統的中国文化様式で暮らす様子を動画で紹介するYouTuber・李子柒(リー・ズーチー)」が数年前から人気を集めていることからもみて取れる。

李子柒、本名は李佳佳。 1990年、四川省綿陽市生まれで、現在30才チョイの女性だ。彼女は決して小さな頃から幸せな暮らしをしてわけではなさそうだ。幼少期、両親は離婚。その後、父と死別し、継母とうまくいかず、祖父母に引き取られた。祖父からは田舎での生活の術を学び、日々を暮らしていたが、小学5年の時に、祖父が他界。祖母だけでは生活を支えられず、結局は生活のために、14才で学校を中退。町で働き始めたものの、飲まず食わずの時期があったりしてかなり苦労したという。2012年、祖母の看病のために実家に戻り、田舎暮らしを始め、生活のためにネットショップを開設。それをきっかけに、弟に勧められて、動画の配信を始め、試行錯誤の末、今の成功を手にしている。現在彼女のYouTubeのフォロワー数は、1520万人。YouTubeの中国語のチャネルで最も閲覧数が多いという記録を立て、ギネス記録にも認定されている。

彼女の動画を一目見ればわかるが、四川省綿陽市の山中を舞台とした何気ない日常の情景が美しく撮影されている。しかも自然の中の生活が体感できる音もリアルに収録されている。こんなきれいな服をきて、農作業か?という感じも正直しなくもないが、彼女が作り上げる理想的な田園生活の世界を差し引いたにせよ、大地とともに暮らし、自然の恵みを大切に生かして、自らの力で色々なものを作り出し、生活していく姿に思わず、引き込まれてしまう。最近は、彼女だけではなく、こういう風に農村での生活を発信する中国人のビデオブロガーも多いという。

実際、数年前、中国の雲南省で棚田で有名な地を訪れた時に、都会で暮らすのが嫌になって、山間の民宿で働いている20代の女性に出会った。「ここは時間の流れがゆっくりで、自分にあっている」と彼女は語っていた。

社会の成熟度に伴い、中国人の価値観が変化している。将来中国でも、農村で生活するということがトレンドとなる時代が来たりするかもしれない。




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