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メタバースとアート、ユニバースにしかない感覚

前回のYoutubeLiveで最後のほうに、メタバースの特徴や限界、アート作品との共通点の話をしましたが、その続き。

メタバースの特徴

メタバースとは、物理的な世界ではできないことも実現が可能になる、相互に接続されたデジタル空間です。メタバースの特長として重要なのは「ソーシャルプレゼンス」、つまり、実際に世界のどこにいようとも他の人と一緒にいるような感覚、を得ることができることです。
https://about.fb.com/ja/news/2021/10/connect-2021-our-vision-for-the-metaverse/

メタ社は、メタバースの特徴として、presence をあげています。似たような言葉として、existence がありますが、辞書をひくと existence は「生きていることや実在している状態」に対し、presence は「existenceがある状態」となっています。

existence :the fact or state of living or having objective reality
presence :the state or fact of existing

アート作品で伝えたいこと

意識して使い分けたわけではないですが、ぼくは「存在と応答」という作品のタイトルを Existence and Response と英訳しました。 スズメバチが死んでいて、ぼくの人生にはまったく関係がないのだけど、そこにいるだけで気になる、という経験を絵にしたもの。これは完全に existence です。これが最も伝えたかったことです。

presence のニュアンスとしては、日本語だと「ぜんぜん仕事ができないおじさんが会議でプレゼンス発揮してきたね」みたいに使いますが、まさにこれで、自らの存在感を技術的に外部に知らしめる、的な意味があり。

メタバースに話を戻すと、メタバースはやはり presence になるのかなと。逆にVR空間では、existence 的な、そのものが醸し出してくる固有の存在感 は伝わりにくい。感覚的な話ですが、作り手としてやはりこの違いは、意識すべきではないでしょうか。

ステートメントがpresenceに?

アート作品の解説(作り手の思い)をどこまで鑑賞者に伝えるか…わかるひとにわかればよい、というスタンスもありなのですが、ある程度の補助線を引いておかないと、こちらの趣旨が伝わらず、届いてほしい人に思いが届かないことも想定されます。

皆川さんの作品 は、ご本人と話をしたり、そこに込められている思いを聞かなければ「動物のデッサンだね」で終わってしまうこともあります。一方で、あまりにも思いが強すぎるとそれが presence になってしまい…

作品を鑑賞するときは、どうしても「絵をみる」というモードで見られるので、絵をみたひとの知識や感覚に依存します。線がうまいね、動物にそっくりだね、という感想もありがたいのですが、ぼくからしたら、(何を思うかは、鑑賞者の自由なのですが)そこじゃないんだなぁ…と歯がゆい思いがしたりします。

ぼくたちの作品の市場はどこ?

この問題は、どうやって絵を売っていくか、誰に届いてほしいか、という話ともつながっていて、マーケティング的には市場を選ぶ、ということなのかもしれません。市場を言い換えると、場所の固有性でもあり、例えば同じ絵でもカフェ、銀座のギャラリー、動物園、メタバース、インスタなど、置く場所によって鑑賞者の体験は違ったものになっています。

SNSをみているときは、iphoneの画面をみているのであって、作品を見ていません。しかし、ぼくたちは慣れ過ぎていて「作品を見ている」と錯覚しがちです(LEDのライトと月明かりの区別ができるように、人のセンサーはとても繊細なのに)。作品がメタバースに置かれれば、ぼくたちがユニバースで経験していた material はありません(逆もしかりで、これがインターネットネイティブというやつなのかもしれませんが)。仮にメタバースで existence を伝えたいのなら、(キャンバス作品をデジタル化してアップロードするのではなく)その世界での違った作りこみが求められると思います。

今週のLobsterr LetterMoney in the Metaverse の記事が引用されていました。メタバースを使いこなしたうえで「すべて欲しいものは手に入れたが、何も手に入れられなかった」は、たしかに示唆的でした。ユニバースにあってメタバースにはない感覚、existence のほかにも探したいと思います。

I could have everything I wanted, and nothing at all.
Money in the Metaverse 


※ぼくたちは、雰囲気で語っているところもありますので、ご批判やご意見、ぜひお待ちしています。

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