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ICL(眼内コンタクトレンズ)手術を調べて・受けてわかったこと

ICL手術を受けました。「眼内コンタクトレンズ」とも呼ばれる、目の中にコンタクトレンズのようなものを入れて視力を回復しようと試みる手術です。

施術を受けて1ヶ月以上が経ち、経過は良好です。個人的には受けてよかったと思っていますが、万人に薦められるものでもなく、かつちょっと調べただけではわかりづらかったことや実際に受けてみて初めてわかったこともいくらかあったので、そのあたりの絶妙なニュアンスや学びをまとめてインターネットに放流しておこうと思いました。逆に他の人が多く書いていそうな点はそこまで網羅的に書かないつもりなので、悪しからず

💡 本記事は医療関係者ではない素人による理解や体験談をベースにしています。内容の正確性は必ずしも保証できるものではありませんので、注意の上でお読みください


ICL手術の基本

基本的なことは下記ページ等がわかりやすいと思います。

そもそも近視は、近くのものを見るためのピント調節で負荷が過度にかかり、その緊張から逃れるために(遺伝的要因であることもあります)、目玉の長さ、正確には眼軸が伸びることが始まりです。その結果、眼の中での光の屈折の仕方が変わり、遠方の像を網膜上で結べなくなることによって近視が生じています。これについては、下記の記事がわかりやすいです。

ICL手術は、簡単に言えば眼の中に専用のレンズを挿れることで、この屈折を矯正して視力回復を図ります。「視力回復手術」と呼ぶこともありますが、最終的な「結果としての視力」は光の屈折の仕方だけでなく、そのときの疲労や体調などによっても変化することから「屈折矯正手術」と呼ぶこともあるそう。個人的には「屈折矯正手術」と理解するほうがより実態に近い認識で、期待値の調整を適切にしやすいのではないかと感じます。

ICLはImplantable Contact Lens(埋め込み型コンタクトレンズ)もしくはImplantable Collamer Lens(埋め込み型コラマーレンズ)の略称だそう。ページや人によってもどちらの略称の想定かはあいまいらしく、どちらの説明も見かけます。一応、後者が正式? なお、レンズのことを指している場合とそれを用いた手術を指している場合の両方を見かけます。

「コラマー」とは、ソフトコンタクトレンズに用いられているHEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)とコラーゲンを組み合わせた素材。人体と相性がいい素材の組み合わせなので、組み合わせ後の素材も生体適合性が高くなるよね、という考え方っぽい。

(コラマーとは)ICLのレンズに使われている新素材。従来からコンタクトレンズ素材として使用されてきたHEMA(ハイドロキシエチルメタクリレート)とコラーゲンを合わせた親水性の柔らかい素材。生体適合性が高く、眼内で異物と認識されにくい。既に20年以上の挿入実績があり、素材の長期安定性が確立されている。

アイクリニック東京 用語集「Collamer(コラマー)」より

ソフトコンタクトレンズは、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)が多く使われています。

コンタクトレンズのアイシティ「コンタクトレンズの素材について」より

同じく眼の中にレンズを挿れる白内障の手術では、アクリル製のレンズが用いられます。アクリルと比べるとコラマーは「癒着しない(あとから抜去が可能)」というのが特長のようです。逆に白内障のレンズが癒着を良しとしているのは、単にICL手術と比べて先に開発されたからなのか、あるいは手術のタイミング(年齢)や目的からして抜去が通常は想定されていないからなんでしょうかね。そのあたりは私はよくわかっていません。

ICL手術は白内障手術と似ている?

先ほど白内障の手術を比較対象として出したように、ICL手術は白内障に対応するための手術と似ていると言われています。私の理解では、下記のように整理できる認識です。

ICL手術と白内障手術の手順を比較した表。白内障手術には「水晶体の破砕」という手順が存在することや、レンズの挿入位置がICL手術の場合は水晶体の前、白内障手術の場合は水晶体が元々あった位置である点が、主な違いとして見られる

たしかに大まかな手順は白内障の手術と非常によく似ているように思えます。さらに好意的に見るならば「破砕する」という類の手順が少ない分、白内障の手術よりもさらに無難そうに見えます。

時折見かける「ICL手術は白内障の手術実績が豊富な医者にしてもらうべき」という意見も、こうした背景から論じられているわけですね。

ICL手術以外の視力矯正の手段も俯瞰しておく

ICL手術は視力矯正の手段の1つです。あくまで手段の1つですから、検討を進める際には他の手段との比較も実施しておくと、納得感や満足度をより高く得られる選択ができると思います。

眼鏡

言わずもがなですが、眼鏡も立派な視力矯正の1つです。目の外側で矯正する手段ですから、極めて安全かつ手軽であることが最大の特長でしょう。

コンタクトレンズ

こちらも説明するまでもない視力矯正の手段の1つでしょう。目の中にレンズを挿れるものではあるものの、その中では最も外側に近い箇所に挿れる方法ですので、眼鏡ほどではないにせよある程度は安全・手軽な手段と言えると思います。

ただし、多用しすぎると角膜内皮細胞の減少につながる可能性がある点には注意が必要そうです。

レーシック

ICL手術と同様に術後は基本的には眼鏡やコンタクトレンズが不要となることから、ICL手術と最も比べられる対象といえばレーシックになるかと思います。ICL手術は「レンズを挿れることで屈折を矯正」しますが、レーシックは「角膜を削ることで屈折を矯正」します。ICL手術より早く一般に認知された屈折矯正手術です。

ICL手術と比べると「やや安価」である点もありますが、「角膜=目の表面上で完結する外眼手術なので、感染症が起きた際のリスクはやや低い可能性がある(↔︎ICLは眼球内で行われる内眼手術)」「眼球自動追尾装置を用いるなどコンピューター制御で手術過程の多くが実施されるため、術者の技量への依存度が低い」といった強みも実はあります。

一方で、レンズを「増やす」ICL手術と比べると、レーシックは角膜を「削る」ため、万が一何かあった場合に元に戻すことが物理的に難しいデメリットがあります。また、削られた角膜を人体が回復しようとする動きから、近視が徐々に戻るケースもあるそうです。

それから、当然ながら削れる角膜の量には限りがありますから、強すぎる近視の場合には適合しない(実施できない)こともあります。

SMILE(リレックス スマイル)

私は詳しくは調べなかったのですが、レーシックと同じく角膜へのアプローチで屈折矯正を行うSMILEという方法もあるそう。

レーシックは角膜を「削る」方向ですが、SMILEは「形を変える」方向の様子。その関係で切開創をより小さく抑えられ、レーシックのデメリットをいくつか軽減した形で屈折矯正が実現できるようです。

歴史が比較的浅く、症例がまだ多くはなさそうであることを理由に、個人的には早めに見送ることにしました。

オルソケラトロジー

オルソケラトロジーは、内側に特殊なデザインが施されたハードコンタクトレンズを夜間の就寝時に着用することで、寝ている間に角膜の形状、すなわち屈折を矯正することで、翌日の日中はレンズなしで快適に過ごせるようにするという手法。

恒久的な矯正ではなく、睡眠中に矯正することで日中もその状態が一時的に保たれるようにするという、他の矯正方法とはやや異色のアプローチです。「日中の眼鏡などが嫌なだけで、寝る前にコンタクトレンズをつける習慣はいとわない」という人には向いているのかも?

ただし、これも強い近視だと矯正しきれない可能性が高いようです。

ICL手術

そしてICL。こうして他の手段と比較しながら捉えることで、下記のようなメリット・デメリットが際立って見えていきます。

■メリット
・強度近視にも対応しやすい
・(そもそもの視力が低下する可能性を除くと)矯正の効果は経年劣化しない
・抜去が可能

■デメリット
・価格が高い
・内眼手術である
・手術は術者によって手動で行われる部分が多い
・白内障の手術が必要になったときは抜去が必要になる

これらのメリットやデメリットをそれぞれどう評価するかは人それぞれです。しかし、こうした評価をできるだけ広い視野を持って行いたいなら、このように他の手段とも比較検討することが大切であると思います。ICLは万能ではないことはお忘れなく。

ICL手術の歴史と普及を解釈する

ICL手術について調べていると「実は歴史が長い」というメリットのような指摘が時折見られます。素人の肌感覚だと、その名前を聞くようになったのはごく最近に思えたので、これはどういうことだろうと当初は思いました。「歴史が長いのであれば、なぜ最近になってようやく聞くようになったのだろう?」と。

この違和感については、個人的には「術式の歴史」と「レンズの歴史」に分けて理解することでおおよそ納得できました。どういうことか。

ICL手術の歴史は、例えば下記のように一覧されます。

1978 ロシアグループでPhakic IOL 開発スタート
1986 Fyodorow らがsilicone IOL ( collar button ) ( G1 ) を前房と後房に跨る形で埋植
1990 Fyodorowらがplate haptic silicone IOL(G2)を有水晶体患者の後房に埋没
1993 ・ロシアグループの結果を元に STAAR Surgical 社が Collamer ICL(IC2020-M)を開発、埋植・STAAR Surgical 社 ICL埋植 (Pesando, Italy)
1997 欧州CEマーク取得
1998 現在の基本デザイン V4登場
2002 韓国 承認
2005 米国FDA 承認
2006 中国SFDA 承認
2010 日本 ICL 承認 (近視用モデル V4 ICM)
2011 日本 ToricICL 承認 Hole ICL (V4c) 欧州CEマーク
2014 日本 Hole ICL KS-Aqua PORT 承認
2016 日本・欧州 EVO+(光学部拡大モデル) 承認

新宿近視クリニック「ICL手術とは?特徴やおすすめな方、費用などについて解説」より

たしかに術式の歴史は1978年からと決して浅くはないように感じます。しかし、よく見るとそこから今までの間に実はレンズが何度かアップデートされているのですよね。

レンズの歴史だけを切り出した、下記の表も併せて見るとわかりやすいかもしれません。

アイクリニック東京「ICLとは?手術の流れや費用を紹介」より

この中で特に注目したいのが「V4c:EVO」というバージョンです。このバージョン以降のICLはそれより前のレンズとは異なり「ホールICL」と呼ばれるようになります。ホールとは穴のことで、レンズの中央に極小の穴が追加されています。

実はそれまでのレンズはこのホールがなかったために、眼内の房水の循環をせき止めてしまい、眼圧の上昇や緑内障や白内障といった合併症のリスクがわずかとはいえない程度で発生してしまったり、代わりに虹彩を切開する必要があったために角膜内皮細胞が減ってしまうリスクが生じていました。ホールを1つつくることで、こうしたリスクを大幅に低下させたのがこの「V4c:EVO」というバージョンでした。

このあたり以降にICLの一般的な普及が日本でも本格化し始めたと考えると、なるほど、時間の感覚的にもたしかに納得できるし、芸能人にしても一般人にしても一定の安全性を見込んでチャレンジする人が増えて、その結果として(プロモーションも一部には含まれつつ含めつつ)そうした発信が増えてきたのも理解ができるなと思いました。

ICL手術を受けるのに踏み切った理由

さて、こうした情報収集も経て、私の場合はなぜICL手術に最終的に踏み切ることになったのか。

強度近視だったから

ICL手術という手段の選定に最も影響する点になりますが、私はいわゆる強度近視の状態でした。視力にして0.03、度数は-8.5や-10.5という、裸眼では到底まともに生活できない厳しい視力でした。

レーシックでは厳しい視力だったので、ICL手術を選定しました。

眼鏡での顔の輪郭の歪みに対するコンプレックスや、災害などで眼鏡を紛失した場合の危険性に懸念を感じていたから

かなりの面倒くさがりなのと、不器用な自身の手で毎日コンタクトレンズを入れることに怖さを覚えるタイプだったのとで、元々は長年の眼鏡ユーザーでした。

しかし、これほどまでに視力が悪いと、眼鏡のレンズも非常に分厚いものとなってしまい、顔の輪郭が大きく歪むことは避けられませんでした。眼鏡をかけた自身の顔を見るたびにウーンと残念な気持ちになってしまう日々でした。

また、いつかは大きな災害に見舞われるかもしれないことを考えて、どうにかできないかなあと考えていたこともありました。

ここ数年で視力が安定したから

会社の健康診断で視力を毎年チェックしていますが、ここ数年で受けた視力検査の結果がまったく変化なしでした。

視力は30代に近づくにつれて固定化されることが多いと言われていますが、まさにそのタイミングに入ったと感じられ、屈折矯正の恩恵を最も長く安定して得られるのは今だと考えました。

知人数人がICL手術を受けていたから

いわゆる口コミ効果と言いますか、「インターネットの人」ではなく「リアルな知人」がすでに数人受けて高い満足度を謳っていたので、受けてみてよさそうと考えました。

術式や歴史・状況、リスクに納得ができたから

ここまでで記したような情報収集を経て、その術式の内容や歴史・状況、リスクに納得ができたため、踏み切ることにしました。

眼科・クリニックの選定基準

ICL手術を実施している眼科やクリニックは数多くあります。その選定基準は人によって様々かと思いますが、私の場合は下記のような基準を主として選定しました。

場合によっては複数の眼科・クリニックに訪れて、セカンドオピニオンを得つつ、これらの基準で比較してみるのもいいかもしれません。

価格

レンズ代を含む手術の価格には、最大で数十万円の違いが見受けられます。

もちろん、必要以上に高価である必要はないものの、あまりに安い場合は「なぜそれだけ安いのか」を明らかにして選定できるとよいのではないかと感じました。眼という非常に大切な部分を扱ってもらうからこそ、単に安いだけで飛びつくのは避けたほうが無難ではないかと感じます。

逆に高くても「なぜ高いのか」が明確であれば、むしろ前向きに選定する理由になり得るとも思います。

執刀医による執刀数や認定資格の度合い

眼科・クリニックによってはICL手術の執刀数が公開されています。執刀数が多いほうがクオリティの安定性が高い可能性が考えられますから、1つの基準にはできそうだと感じました(そもそも「公開している」こと自体が信頼に当たる部分もあるかもしれません)。前述の通り、ICL手術は白内障の手術とも近似していますから、白内障手術の実績も基準の1つにできそうです。

また、ICL手術を行うには専用の資格が必要とされています。そもそもの資格があるかどうかも重要な基準ですが(というか資格がないのに手術をしていたらアウトなはず)その資格の中でもさらに「エキスパートインストラクター」「インストラクター(指導医)」「認定医」の3ランクに分けられています。これについては、下記の記事がわかりやすいです。

このランクのどこに位置する執刀医がいる眼科・クリニックなのかも、有効な選定基準になると思いました。単純に執刀数だけで競うとなると「価格を下げて、たくさん顧客が集まるようにして捌き倒す」みたいなのもできてしまいそうなので、質を見積もる参考情報の1つとして使えるのではないかと思います。

ICL手術以外も行っているか

ICL手術は、前述の通り視力回復の1つの手段にすぎません。人によって適応する/しないもあります。ICL手術をあくまで1つの手段と捉えて、最適な提案をしてくれる医者であればベターだと思いました。

また、ICL手術後にもし何かあった際に、ICL手術以外も含めた一般的な眼科として開かれている病院であれば、かかりつけ医として継続的に対応してもらいやすい可能性が考えられます。

ただし、ICL専門医であるがゆえの手術の安定度も逆にあるものかもしれません。このあたりはどちらが必ずしも正しいとは言いづらいですが、いずれにしても見るべきポイントの1つにはなるかなと感じるところです。

自宅からの距離

ICL手術を受けるにあたっては、手術日だけでなく術前や術後にも複数回通う必要が生じます。あまりに遠いと大変でしょうから、自宅からの距離もある程度は考慮しておくとよいだろうと思いました。

度数と乱視対応有無の決定

手術までの過程のほとんどはWeb上で多く紹介されているため、すべては書きません。一部に絞って記します。度数と乱視対応有無の決定について書いておこうと思います。

度数の決定で迷った話

ICL手術までには、そもそもの適応の可否をまず調べます。レンズを挿入する箇所となる目の前房深度が浅いなどで不適と診断されることも十分にあるようです。

それから、視力検査などを経て挿入するレンズを決定します。ここが悩んだポイントの1つでした。クリニックの視能訓練士さんがいくつか度数の候補を出してくれました。最も強いものだと2.0相当のもので、詳しい度数はそのときは聞き忘れたのですが、そこから1段階落としたもの、2段階落としたものを提案してくださりました。

ICL手術は、いざというときはレンズの抜去が可能であることが特長の1つです。しかし、そうはいっても内眼手術ですから、やればやるほど(目薬などのケアを正しく行えば)リスクは極小とはいえ、重篤な感染症を発症する可能性は上がっていきます。できるだけ一度で納得いく結果を得たいものです。

そう考えたとき、果たして1〜2段階落とした決定をして後悔しないだろうかと迷いが生まれました。訓練士さんが「2.0にされる方も十分いらっしゃいます」とおっしゃったこともありました。とはいえ、あまりに遠くに視力を合わせにいくと、近くを見るときに焦点を合わせづらくなる可能性もあります。

最終的には思い切って2段階落とした度数を選定しました。仕事がデスクワークですし、今(裸眼)よりは間違いなく良くなるだろうから後悔しないと考えました。その直後、手術を行う先生にも再度相談したところ、「今の眼鏡の視力よりは良くなるはずの数字だから、それでいいんじゃないでしょうか」と背中を押されることとなり、術後は実際「それでも1.5見えてる」こととなりました。1.0くらいになるのかなと思っていたので、それはもう十分なことです。

なんとなくで度数を決定するタイミングまで進んでしまったのが反省点だったなと振り返って思います。「(今の眼鏡で十分見えているのであれば)眼鏡と同じくらいか、高くてもプラスアルファ程度に抑える」と方向性を明確にしておけば、迷うことはなかっただろうなと感じました。

視能訓練士さんには「本当にその決定でいいですか?」と度数の選定時に問われましたが、訓練士さんは立場上「弱すぎる度数であとからクレームを喰らうのもヤダ」とか、そういう懸念もあるのかなと想像します。

乱視対応の有無でも迷う

私は近視だけでなく、乱視も弱くない人間でした。

ICL手術では「トーリックレンズ」という乱視用レンズを用いることで、乱視の矯正も可能です。ただし、レンズが回転した(角度が変わった)場合に視力が落ちる可能性を抱えることになります。乱視をレンズで矯正する場合は(眼鏡は通常回転しないので意識することがないですが)実は角度が重要で、このズレが視力に影響することになるのです。

ICLのレンズにはいくつかのサイズがあり、その人に合った適切なサイズであれば眼の中でレンズが回転せず安定するのだそう。しかし、小さすぎる場合はレンズの角度が途中で変わってしまうこともあるというわけです。その対応には再度の手術が必要となる(より大きなレンズに入れ替える)わけですが、前述の通り、基本的には手術は1回で終わらせたいものなので、これまた迷うポイントの1つとなりました。

ちなみに、今の技術だとレンズのサイズを正しく選定するために眼の中の大きさを外から事前に測るのは困難とのこと。簡単そうで意外と難しい部分なんですね。

私の場合は、最終的には乱視対応ありとしました。結果としては、術後1ヶ月が経過してもレンズの回転は見られず、良好な結果となっています。

意思決定の背景としては、まず発生の可能性の評価です。Webでの情報収集や執刀医との相談を経て、そこまで大きな可能性ではないと判断しました。Webでの情報としては、下記のあたりが特にわかりやすかったです。

それから、私の乱視の度合いだと、近視だけ直すとおそらく明確にその存在を自覚する形になりそうと言われたことも大きかったです。

また、話が先ほどと矛盾するようですが、いざというときは手術し直しができなくはないこともこの意思決定に影響しました。逆にまったくやり直しが効かないとなれば、それは間違いなく安全(?)に倒して近視のみの矯正にしそうだなと。

なお、乱視はその程度が小さいのであれば、レンズ挿入時の切開の仕方によって起きうる乱視(惹起乱視)を利用して、元の乱視を矯正する方法もあるそうです(強主経線切開)。私はそんな程度の乱視ではなかったので提案されませんでしたが、場合によってはこちらを相談してみてもいいかもしれません。

手術後の見え方と思うこと

手術を経た結果は、今のところ良好です。術後当初は右目と左目で遠近感がずれている感じがあり、違和感が小さくなかったのですが、10日〜14日ほどで慣れました。ICL手術は一応、術後数日で通常通り生活できることが謳われていますが、念のため術後2週間くらいは様子見の期間のつもりでいたほうがいいのではないかと思いました。

眼鏡がなくとも十分遠くまで見えています。単に遠くが見えるだけでなく、眼鏡だと実は視界がここまでクリアではなかったとも感じています。同じ距離を見るにしても解像度が上がったように見えるのです(眼鏡のケアを怠っていたからかもしれませんが……)。

アクセサリー・ファッションアイテムとしての眼鏡は嫌いではなくむしろ好きで、今も調光レンズを入れた伊達メガネはよく着用しています(余談ですが、調光レンズというかサングラスがあると目の疲れが思った以上に軽減されるのでオススメです)。しかし、同じく眼鏡をかけるにしても、「仕方なくかける」のと「かけたいからかける」のとではストレスがまったく違いますし、フレームがうざったくなって取り外したりもできて、もちろん朝起きた瞬間からよく見えて、非常にストレスフリーな生活となりました。

一方で、まったく完全に「近視になる前の頃」のように見えているわけではありません。その1つがICLの欠点としてよく指摘される光の輪やグレアと呼ばれる現象です。

光の輪やハロー・グレアは「やってみないとわからない部分もある」と思っておいたほうがいいかもしれない

光の輪は、ホールICLの特徴である穴(ホール)に光が通ることで見えるもので、主に夜間など暗い環境で極端に強い光が差し込まれた場合に生じます。

望月眼科「眼科スタッフのICLブログ-前編」より

上記のようなイメージ画像を手術前から把握してはいたのですが、実際のインパクトは想像以上でした。

というのも、当然ながらイメージ画像は「静止画」ですが、実際に自分の目で見るものはある種の「映像」です。例えば、車のライトだって実際は写真のように止まってはおらず、車が高速にこちらに向かってくる中で見ることがほとんどですから、光の輪もそれだけ実際には高速に移動・変動します。「止まった光の輪」と「動く光の輪」の存在感は何倍も違うと思っておいたほうがよいかもしれないと思いました。

また、グレアも思っていたより存在感がありました。グレアもまた「夜間に屋外で強い光を見たとき」に見えることがあるもの程度で理解していました。

しかし、私の場合は実際はそれだけでなく「夜の屋内で真っ白のものを見たとき」にもグレアが少しばかり生じることがあります。たしかに白色とは明るいものですから理屈としては納得なのですが、こんなところでも見えるとは予想はしていなかったので最初は驚きました。

そういった感じで、見え方は実際やってみないと予想できないものもあるなと感じました。2週間も経てば私の場合はほぼ慣れましたが。目と脳が単に慣れる(ノイズとして強く自覚しなくなる)のと、心理的な諦め(というと後ろ向きな表現ですが……”納得”みたいな?)が合わさって、気にならなくなった感じです。

ネガティブな人は慎重になったほうがいいかもしれない

前述の通り私は結果に非常に満足していますが、ネガティブな人、すなわち「得たもの」ではなく「失ったもの」を大きく評価してしまいがちな人はICL手術は慎重になったほうがいいかもしれないとも思いました。

レンズを術後に抜去する人の中には、向精神薬を服用されている方が少なくないという指摘も医師から実際になされているようです。

「よく見えるようになった」という得たものより、「もともと短期的に致命的だったわけではない眼に、自身の意思で手を加えてしまった」「ハロー・グレアや光の輪など、手術したことによって余計に見えるようになってしまったものがある」という側面にばかり着目してしまい、多かれ少なかれ一定の慣れの期間を要することなどにも耐えられず、気持ちが塞がってしまうルートは人によってはたしかにあり得そうです。

情報の8割は視覚からという説も時折聞くくらいですし(本当かは知りませんが)、そんな視覚に変化が生じたら気持ちが不安定になってしまうのも人によっては無理はない話だろうとも感じます。

得たものに(も)目を向けられる人、結果を総合的に評価できる自信がある人だと満足しやすそうです。

終わりに

自分では調べて理解するのに時間がかかった点や、実際に受けてみてわかった点を中心に記してみました。冒頭で述べた通り、素人によるn=1の調査結果や体験談ですので、あくまで情報収集の1つのきっかけや参考材料程度にとどめて、何かに役立てていただけると嬉しいです。

なお、ICL手術で私は視力はよくなりましたが、あくまでこれは「屈折矯正」であって、伸びてしまった眼軸は今も伸びてしまったままです。つまり、ICL手術をしたから生じたり逆に軽減したりしたわけではない、近視になってしまったが故に発生してしまった緑内障や白内障、網膜はく離などのリスクは今もそのままです。どれだけ視力がよくなったとしても、引き続き目は大事にしていかないとなと感じています。

とはいえ、ひとまず屈折を矯正して視力を回復できる手段がここまで進化してきたこと自体は大変ありがたいことですね。ICL手術だけを万人に勧めはしないですが、様々な手法が少しずつ開発されてきていることは時折確認してみて、自分が納得いく道を各々が選べるといいのではと思いました(眼鏡で大きな不満がなければ、そのままでいるのも良い選択だとも思います)

また数ヶ月、数年で変化があれば、追記なども考えたいと思います。

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