実験・調査実習は遠隔授業で可能なのか #4 分析編
さて,実験実習でデータ収集を遠隔化しても,分析とかレポートの執筆が登校しないとできないのでは意味ありませんよね。まあ,執筆の部分については,遠隔化はそれほど難しくなさそうです(教材をきちんと用意して,適切な指導をする,ということは大前提ですが)。
では,実験実習につきもののデータの分析はどうしましょう?まあ,これについては大学の実習室に入り浸ることを避けるために,オンライン・オフライン問わず自宅でできる方法をとるしか無いですよね。もちろん,学習のための教材はきちんと用意しつつ。
となると,市販の統計ソフトの利用は端から眼中にありません。無料で自由に使えるソフト,しかも基礎実習だけじゃなく,その後も使い続けられるソフト(だって,一度教えたソフトが,卒論じゃ使えないとかなったら,教える方も面倒ですよね)という選択肢だけが残ります。ここでは,とりあえず思いついたソフトを挙げるだけにしておきます。
R / RStudio
説明の必要ありませんね。今じゃ,世界で一番使われてるんじゃないか,という位に情報の豊富な統計解析用のソフトです。
こちらは本家。一緒に使う統合開発環境 RStudio は,こっち。
解説はググると山のようにヒットしますので,適当に良さそうなもの見てください(投げ遣り)。学生向けに教科書買わせたい,とかなら,
とかがいいかもしれません。
まあ,個人的には R/RStudio 一択なのですが,学生が付いてこれないかも,とか「いちいちコマンド打ち込むなんて,なまらめんどくさい」とかいう GUI 教信者の方には,他の選択肢もあります。
JASP | A Fresh Way to Do Statistics
赤い本・コワい本の著者として有名な,E. J. ワーゲンメイカーズが中心となって作ったソフトです。マウスでポチポチで分析できます。大体の分析手法は網羅してます。
こんだけ豊富な機能を持っているのに GPL ライセンス,つまり無料です。日本語版のガイドというか教材もあります。
Windows, Mac, Linux に対応してます。あ,なんか今見たら,ブラウザでオンライン経由でも分析できるっぽい。
jamovi | Stats. Open. Now.
JASP とよく似た,こちらもフリーの統計分析ソフトです。JASP もそうですが,割と S■SS を意識した操作性になってますかね。本学みたいな,S■SS が標準ソフトになっている大学だと,移行しやすいと思います。
構成としては,JASP からベイズ統計による分析手法を抜いた感じでしょうか。ただ,jamovi の方が,パッケージを追加して機能拡張していくタイプになっているので,今後色々と増えるかもしれません(実際,JASP にあるベイズ統計分析メニューを実現するライブラリもあります)。あと,そのパッケージの中に Rj Editor という R コマンドを直接実行できるものがありますので,jamovi で基本的な分析を習得してから,Rj でコマンド操作を学び,最終的に R/RStudio へと繋げる,なんていう使い方もできるかもしれません。
jamovi にもガイドブックがあります。元々は D. Navarro が書いた Learning Statistics with R を,jamovi 版に書き換えたものを,さらに日本語訳したものです。
もう,これだけでいいんじゃないか,という気もするのですが,勤務校の学生にこれ読んで jamovi やれ,となるとさすがに頓挫する学生が続発しそうなので,もう少し簡単なガイドブックも作りました。というか,実はまだできてはいません(例えば,対応のある t 検定とか,反復測定デザインのANOVAとかは近日中に公開予定ではいますが,まだありません)。本当は公開に耐えられるフェーズではないのですが,こんな状況下ですので少しでもお役に立てば,ということで,未完成状態ですが表に出してしまいます。ただし,未完成なので,内容はどんどん書き換わると思います。その点だけご了承ください。
HAD
最後にご紹介するのは,こちらもご存じ HAD です。
もう紹介の必要ないほど有名なソフトだと思います。Excel 上で動作します。
で,どうすれば?
実験環境構築の場合と同じで,どれが最適かは,学校ごと,あるいは授業を担当する教員に事情によって大きく異なると思いますので,これまた絶対的な正解はありません。学習用のマテリアルが充実していて,十分に教育できそうならば,R/RStudio を使うのが良いでしょうし,これまで S■SS 等の市販ソフトで培ったリソースがあるなら jamovi とか JASP あたりが選択肢になるかと思います。もちろん,HAD も良いソフトだと思いますので,今までそれを使って教育されているなら無理して新しいものに変える必要はないと思います。
こちらも,いろいろと試して,ベストな方法を選んでいただければと思います。
スマホしか持ってない学生は,どうすれば... どうしましょうねえ。これは悩みます(というか解決策が思いつきません)。
追加情報があれば,随時,追記します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?