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医療費が高い社員には辞めてもらいたい?!

2015年頃に、ある大会社の人事部長が私に面と向かって発した言葉です。「同じ働きしかしていないのに、病気の社員に数百万円も多く払わなければならないのは不公平だ。」と言うのです。高額療養費制度の下、企業健保が支払う医療費負担が高まっていることに対する不満を述べたものでした。いわゆる難病の中には、年間数百万円の医療費がかかる場合があり、現役社員の場合、企業健保が7割を負担することになるため、その負担額は小さくありません。

しかし、そもそも高額療養費制度は、「医療費の家計負担が重くならないよう」「全ての方が安心して医療を受けられる社会を維持するために、高齢者と若者の間での世代間公平が図られるよう、負担能力に応じたご負担をいただく」制度である旨が、厚生労働省のHPに記載されています。同制度は公共の福祉の観点から、形式的公平に伴う弊害を除去し、人々の『社会・経済水準の向上』を図るという観点での公平を実現するための制度であり、同一労働同一賃金とは別次元のものです。

また、当該人事部長は、消化器系の指定難病を例に挙げたのですが、指定難病における医療費助成(詳細は、難病の患者に対する医療費等に関する法律の説明資料をご参照下さい)は、国や地方自治体によるものであり、企業健保を財源とするものではないため、人事部長の不満は事実誤認に基づくところもありました。
もっとも、指定難病における医療費助成があるにも関わらず、それを活用せずに、高額療養費制度を利用している社員がいることも事実であり、各企業健保が制度の適切な利用を促していることも事実です。

2020年の世界希少・難治性疾患の日に「難病と就労を考える」対話集会を開催するのは、当事者発で、このような状況を少しでも改善したいという思いからです。

患者として、制度を適切に活用し、社会が受け容れやすい形で「合理的な配慮」を求め、可能な範囲で医療費削減にも貢献できるようになれれば、より良い未来を創れると思います。ご関心を持って頂いた方のご参加を、心よりお待ち申し上げます(申込はこちらのリンクより)。

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<謝辞>「難病と就労」の課題解決に向けた夜明けとなる対話を始めたいという願いを込めて、anaritaさんのお写真を拝借致しました。素敵な写真、有難うございます。

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