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自由気ままに思ったことを書くブックレビュー

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自分が読んだ本のレビューをまとめています。 ネタバレありなのでお気をつけください。
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文芸ムックあたらよ創刊号を読んでいます(※随時更新予定)

タイトル通り、まだ読んでいる途中です。 あたらよ文学賞に興味があり、備忘録も兼ねて感想をまとめていきたいと思います。 読んだ順は気まぐれです。敬称略です。 第一回あたらよ文学賞受賞作うきうきキノコ帝国/マルクス・ホセ・アウレリャノ・シノケス 前半の世界観の説明の長さは、田中芳樹先生の「銀河英雄伝説」を彷彿とさせる。SFは読んだ数が少なくて、「SFってこういうものなのかな……?」という気持ちになる。(たぶん違う。) ただこの世界観が徹底的に説明されてるからこそ、後半の人間ド

「陰陽師 女蛇の巻」 夢枕獏先生

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 昭和・平成・令和と愛され続けて16巻目! と、文春文庫版の裏表紙に記載されていました。それを見て「え!? もう16巻目!?」と驚く私。陰陽師シリーズは(おそらく)もれなく読んでいる私ですが、そんな時の長さを感じない、新鮮な内容となっておりました。  陰陽師シリーズを知らない読者の方にご説明すると、このシリーズは平安時代に生きた陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)が、貴族で晴明の親友の源博雅(み

「破局」遠野遥先生

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 ・第163回芥川賞受賞作 ・約188枚 完璧な大学生が迎える、『破局』とは。 「破局」って、厳密には「男女が別れる」という意味ではないの、ご存知でした?  デジタル大辞泉で調べると、 事態が行き詰まって、関係・まとまりなどがこわれてしまうこと。 また、その局面。悲劇的な終局。 と、書かれています。  私も最初は、単純に「男と女が別れる話」なんだろうな、と思って読み始めました。まあ、結果的

「連句日和」笹公人先生・矢吹申彦先生・俵万智先生・和田誠先生

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 俳句に親しむシリーズ・第2弾 以前私が漫画から俳句にハマって呼んだ入門書のレビューを書きました。  今回は私の中での俳句に親しむシリーズ第2弾と題しまして、連句(れんく)に触れてみようと思い、読んだ本作をレビューしたいと思います。  ここが大事なのは、「私は! 俳句に関して! まったくの素人!」と、いうことです。なので、私が書く話は「俳句素人が連句について見るとこういう感じなのね、ハハ」とひ

「コンジュジ」木崎みつ子先生

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 ・第44回すばる文学賞受賞作 ・第164回芥川賞候補作 ・約256枚 一人の少女が今は亡きアーティストと出会い、救われる物語 えげつない小説に出会ってしまった。読み終えてそう思った。  本作は、主人公・せれながイギリスのバンドマンであるリアンに恋をした物語である。リアンはせれなが生まれる前、32歳という若さで亡くなったリアンは伝説のアーティストだ。  偶然リアンを見かけたせれなは一瞬で恋に

「わからないままで」小池水音先生

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 ・第52回新潮新人賞受賞作 ・約130枚 息子、父、母の交流を描いた家族の物語 離婚した夫婦とその息子の数十年にわたる交流を、多彩なエピソードを交えて描かれた作品。六つの場面から構成されています。  一、息子が幼かった頃の、父親との交流  二、離婚後の父親の生活と、女との交流  三、父親が幼かった頃の、姉との交流  四、母親が死んだ後の、息子と他人との交流  五、半世紀前に亡くなった姉の話

「五七五で毎日が変わる! 俳句入門」堀本裕樹先生監修

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 俳句に興味をもったきっかけは、漫画 「ほしとんで」という漫画をご存知でしょうか?  芸大で俳句ゼミに配属された主人公とそのゼミのメンバー、現役俳人である先生との交流を描いた作品です。作者は「ガイコツ書店員本田さん」などの作品でも知られる本田先生。  本作は俳句初心者である主人公たちが、徐々に俳句の面白さに触れていく様子が楽しく描かれています。とくに鎌倉吟行編、連句編は私が大好きな部分です。俳句

「悪い音楽」 九段理江先生

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 ・第126回文學界新人賞受賞作 ・約133枚 音楽の才能をもち、人の心がわからない主人公 音楽家の父をもつ音楽教師の物語。音楽的な才能は持つものの、人の気持ちを考えることができない主人公を描いた作品です。  第一印象としては、キャラクターの作り方が王道だと思いました。  主人公の「人の心がわからない」という性質を際立たせるために、作品冒頭の「あーあ」というセリフだったり、同居人に必要のない

「穀雨のころ」 青野暦先生

※ネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。 ※あくまで個人の感想・書評です。 ・第126回文學界新人賞受賞作 ・約96枚 4人の高校生をめぐる青春ジュブナイル小説 男子高校生2人、女子高校生2人が絵画や詩、サッカーなどを通して葛藤しながらも日々を過ごしていく様子を描写したジュブナイル小説です。  タイトルにもある「穀雨(こくう)」とは、二十四節気でいう4月20日~5月4日頃のこと。地上にあるたくさんの穀物にたっぷりと水分と栄養がため込まれ、元気に育つよう、天からの贈り