自立支援 × アドラー心理学 -介護保険制度版-
・原因論と目的論
強い劣等感で意味付けされた経験から生まれた目的では、未来を変えることはできない。利用者から「転倒するから歩きたくない」と言われることがある。しかし、本当は「怖いから歩きたくない」「家族に迷惑をかけるから歩きたくない」のかもしれない。このような事例ほど転倒しやすい印象がある。
一方、自己受容で意味付けされた経験から生まれた目的は、未来を変えることができる。利用者から「家族に迷惑をかけたくないからリハビリしたい」と言われることがある。一人暮らしの事例に多い印象がある。
自立支援は、行動ではなく目的に働きかけることが大切なのかもしれない。
心が動けば体も動く
・課題の分離
馬を水辺に連れて行くことは出来るが、水を飲ませることは出来ない。つまり、どのように行動するかは本人次第ということ。専門職が自立支援を促そうと目的論で行動しても、利用者が目的論で行動しない限り自立支援を促すことは出来ない。
目的に働きかけるためには、自己受容に気づく支援が必要なのかもしれない。
・関係づくり
褒めるという行為は、褒められたい=期待に答えたいという心理状態となり、褒められないと劣等感が生まれる心理状態となる。劣等感が重なり強い劣等感になると自己受容を遠ざけてしまうため、褒めるという行為は望ましいとは言えない。
そういう意味で、専門職が利用者を褒める(上手に出来ている,速く歩けるようになったなど)ことは正しいのだろうか?もしかすると、利用者が依存的な行動や発言をするようになるのは専門職側にも原因があるのかもしれない。
また、リハビリ指導は気づきが少ないためか自己受容につながりにくい印象がある。むしろ、面談のような双方向のコミュニケーションは気づきが多く自己受容にもつながりやすい。
自己受容に気づく支援とは、横の関係(双方向のコミュニケーション)を構築することかもしれない。
専門職と利用者間だけでなく、利用者同士でも横のつながりや課題の分離は必要だと思う。通所介護の利用目的が他者との交流を通じた社会参加という利用者も多い。しかし、利用者同士の人間関係に悩まされることもある。もしかすると、利用者同士で縦のつながりの発生や課題が分離できていないことが原因の一つかもしれない。
・まとめ
今回、自立支援をアドラー心理学の視点で考えてみた。目的論へとつなげるためには、課題の分離と他者との関係がうまく機能することが大切なのかもしれない。
対話から始まる自立支援
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