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駐在員のミッション、Roleはどう定義されるべきか?海外駐在に「取り敢えず行って来い」にどのように対応するか?

こんにちは。よしです。今年の4月に海外赴任が決まっていたにも関わらず、コロナの影響で日本で足止めを食らっていた私の知人・友人・後輩がボチボチ海外赴任し始めているのを知りました。連絡をくれた皆さん、ありがとうございます。そして頑張って下さい。

さて、今回は最近海外赴任した人からある質問を受けたので、それについて考えてみたいと思います。3つ質問を受けたのですが、今回は1つ目の「駐在員のミッション、Roleはどう定義されるべき?」について考えてみたいと思います。

よくある駐在員のミッション、Roleとは?

業界や職種によっても異なりますが、グッと抽象度を上げて、私がこれまで見て来た駐在員のミッション、Roleを一旦一般化してみます。凡そ以下のいずれかに分類されるのではないでしょうか?

1. 日本と赴任地を繋ぐブリッジ社員型
2. 技術伝承型
3. プロジェクト遂行型
4. 現地法人ビジネス運営型
5. 取り敢えず行って来い型

では、それぞれ簡単に見て行きたいと思います。

1.日本と赴任地を繋ぐブリッジ社員型
日系企業にはまだまだ暗黙知が多く、外国人から見ると理解しがたい事が非常に多いと思います。有名なグローバル企業にはマニュアルとジョブディスクリプション(JD)が存在するので、各人「やり方」も「やる事」も決まっています。日系企業はOJTを中心に人材を教育して来ただけでなく、レポートの仕方も報・連・相(ホウレンソウ)など外国人には理解しがたい事が多いのです。

そんな言語化しにくい仕事が職種に関わらず、日系企業にはゴロゴロ転がっているのです。そんな暗黙知を外国人に1から10まで教える事は現実的に難しく、日本人が日本と赴任地を繋ぐ「ブリッジ社員」となり、時に日本の複雑な仕組みを噛み砕いて現地法人に伝え、現地法人の状況を日本側に分かり易く説明するのが「ブリッジ社員」の役割です。

2.技術伝承型
上記とも少し重なりますが、日系企業には暗黙知が多いので、まさにその暗黙知をOJTという形で現地法人に伝える事がミッションになります。製造業が分かり易い例だと思いますが、日本の「ものづくり」を現地でOJTを通じて伝承するのです。技術以外でも、アカウンティングやファイナンスも日本本社独自の考え方が存在するケースがあるので、そのような間接部門にも駐在員を配置し、「日本のやり方」を伝承する場合もあります。

3.プロジェクト遂行型
海外のM&Aや新会社、新工場の設立、そして新しい製品開発やその製品の市場ローンチなど、明確なプロジェクトが存在し、それを遂行する役割を担います。駐在期間はプロジェクト期間に左右されるケースが多いです。

4.現地法人ビジネス運営型
現地法人の社長や部門ヘッドなどの要職に就き、赴任地でビジネスをゴリゴリ回すケースです。利益責任なども負い、現地法人のやり方でビジネスを回すのか、日本のやり方でビジネスを回すのかはビジネスモデルによって異なる為、そこはケースバイケースである事が多いです。

5.取り敢えず行って来い型
会社側の立場として「海外赴任で揉まれて成長して欲しい」という想いもあるのでしょうが、余り明確なミッション、役割を伝えられないまま「取り敢えず行って来い」的な駐在も存在します。というか意外とこのようなケースは多いかもしれません。

もちろん上記の1~5に単独に分類される訳ではなく、1と2、2と3、もしくは上記全てやっています、という駐在員もいると思います。

現地側と合意が得やすい駐在員のミッション、Roleとは?

さて、駐在員の立場として最も避けたいケースは「現地側とのミスマッチ」が発生する事です。要するに、日本側としては“何らかの期待”を持って赴任させたにも関わらず、現地側としては「特に必要ない」と思われてしまうパターンです。ミッション、Roleの分かり易さという意味で先ほどの1~5を整理すると

3(プロジェクト遂行型)>2(技術伝承型)>4(現地法人ビジネス運営型)>1(日本と赴任地を繋ぐブリッジ社員型)>5(取り敢えず行って来い型)

となると思います。ミッションや役割が明確になっているからこそ、プロジェクト遂行型、技術伝承型、現地法人ビジネス運営型に関しては、実力ある駐在員が選定されないと現地は悲惨な事になってしまいます。逆に現地で不足しているピースに適任の日本人駐在員がピタッと当てはまれば、Win-Winの関係になり易いです。

この中で一番厄介なのは「取り敢えず行って来い型」です。数千万かかる駐在員コストを負担する訳ですから、本来日本側にも間違いなく狙いはあるのです。それは「人材育成」であるかもしれませんし、日本人が加わる事による「シナジー創出」かもしれません。問題なのは、その期待が赴任者に正しく伝わっていない、もしくは現地側にうまく伝わっていないケースです。結果何が起こるかというと、駐在員は赴任しても現地でやるべきミッションが見つからず、現地側も駐在員に適切なRoleが与えられずお互い「お見合い」の状況になってしまうのです。


Can(できること)をコツコツ行い、Roleとミッションへ繋げる

こんな状況をどのように打開するかを少し考えてみます。自己分析のフレームワークで、Will(やりたいこと)、Can(できること)、Must(するべきこと)を整理した経験はないでしょうか?

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出所「飛企画」

「取り敢えず行って来い型」はつまり会社から特にMust(するべきこと)が与えられていない訳です。そして駐在員は赴任する前はWill(やりたいこと)で満ち溢れていたかもしれませんが、現地にそれができる環境は用意されていないというのが「取り敢えず行って来い型」にありがちな状況だと思います。

残るのはCan(できること)しかないのです。そして現地メンバーは特にひょこっと日本から来た駐在員のWill(やりたいこと)には1ミリも興味がなく、彼らが知りたいのは駐在員のCan(できること)なのです。そして駐在員が唯一自分でコントロールできるのもこのCan(できること)なのです。

ミッション、役割がなければまずは自分のCan(できること)を整理して、それを現地メンバーに伝える事が第一歩です。ここが整理できていない人が結構多い気がします。そしてそのできることを行動に移し、小さな結果を少しづつ積み上げて行きます。小さな結果は小さな信頼を生み、徐々に周りがあなたの“できること”に気づき始め、何かRoleを与えてくれると思います。そしてRoleが大きくなると、やがてそれは現地会社の大きなミッションに繋がると思うのです。西川きよしさんのように、

「小さなことからコツコツと!」

が結果的に赴任地で自分の居場所を獲得する近道となり、そこから逆にRole、ミッションが積みあがって行くのだと思います。

「コツコツしている間に駐在期間が終わってしまう」と心配する人もいると思いますが、一度自分に”できることのタグ付け”が完了すると、次の赴任地には既にそのタグが伝わっています。その間にどんどん自分のCan(できること)も大きくしておけば、次の赴任地では最初から大きなミッションとRoleが与えられるはずです。

最終的には「駐在員」「日本人」という枠ではなく、「個」として現地に認められ、価値を発揮し、変化を起こす。そして日本と赴任国双方向のレベルアップだけでなく、自分の関わる業界発展に寄与することが究極的なミッション、Roleになると思います。

さて、長々と書いて来ましたが、今の私は逆で、「取り敢えず日本に戻って来い」と言われた時の対策を考えておきます(笑)。
次回は「なぜ日本人駐在員?結局、駐在員っているのか?」について書いてみたいと思います。



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