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雑談の小径003

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オルゴール

そういえば、最近オルゴールの音を聴いてない。
子供の頃はどの家庭にも当たり前のようにいくつか置かれ、オルゴールの繊細な音が身近にあったと思う。うちにも当然いくつかあった。

1つは直径12センチくらいの手毬の飾りで、子供部屋の柱にぶらさげてあった。紐を引くとゼンマイが巻かれる仕組みで、その曲は「恵子の夢は夜ひらく」。およそ子供向けではないその風貌と曲は、気づいた時にはそこにあったので、どうやって入手したのかは分からない。
親子の犬のぬいぐるみのオルゴールもあった。親子の間にゼンマイの紐が付いていて、親子を引き離すと曲が始まり、最終的に抱き合っておわる。曲は「シューベルトのこもりうた」、眠れ眠れ母の胸に、ってやつ。紐を引いた直後は曲が速くておよそ眠れる気がしないが、だんだんゆっくりになってこと切れる感じが好きだった。
グランドピアノの形のもあった。屋根も鍵盤蓋もちゃんと開き、内部に敷かれた赤いフェルトにオルゴールが鎮座していた。曲はなんだったんだろう、全然覚えていない。
それから、裸のオルゴール。あれの曲も覚えていないが、その仕組みをじっと眺めているのが好きだった。くるくる回る羽根が付いていて、それを止めるとゼンマイも止まったところから、蓋を閉めたら音が止まるとか、何か外側にギミックがあったオルゴールのおもちゃから中身だけ取り出したのかもしれない。
あれ、それともそれがグランドピアノの中身だったのかな、記憶が曖昧だ。
蓋を開いて、踊り子をセットすると、磁石の動きにつられてくるくる踊るものが頭の中の記憶層にあるんだが、うちにあったものなのか、人んちで触ったものなのか、はたまた映像で見たものなのか、どうにも思い出せない。
中学に上がる前くらいに、西洋風で目覚ましの曲に合わせて造花が開く置き時計を買ってもらった。曲はラヴィアンローズ。後に吉川晃司の同じタイトルの曲に頭の中で置き換わってしまったのは、一生懸命目をこすりながら深夜ラジオを聴いていた時期と重なるからかもしれない。
大学時代に、どこの国かわからないが、民族衣装っぽい格好のヒゲのおっさんたちが同じ高さくらいのデカい円盤型オルゴールをゴリゴリ鳴らし続けるCDを買った。繰り返しの単調さはあったが、好きで聴き続けていた時期はあったと思う。

だが、そこからオルゴールを手にした記憶がない。どこかのオルゴール屋には入ったかな、あとなんだろう、音に合わせて仕掛け人形が動く展示?も見に行ったかもしれん。
もちろん嫌いじゃないが、すっかり離れてしまって、しかもあまり聴きたい感じもしない。なんだか勿体無いな、卒業しちゃったんだろうか?

ともあれ、恵子の夢は夜ひらくとシューベルトのこもりうたは、ふとした時に頭の中で完全再現される。今はそれで良いかとも思う。

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